今西清兵衛商店 春鹿

左から代表銘柄「純米 超辛口」1661円、冬限定の「純米吟醸 しぼりたて生酒 しぼりばな」1485円、「発泡清酒 ときめき」605円、「あられ酒」858円

日本酒にゆかり深いまち

いにしえより長い歴史をもつまち、奈良。酒の神様を祀る「大神神社」や、日本酒の原点とも言われる「菩提酛(ぼだいもと)造り」を生み出した「正暦寺(しょうりゃくじ)」など、日本酒と深いつながりをもつ社寺が点在する。こうした長い歴史のなかで、奈良では酒の文化がはぐくまれてきた。酒蔵が多く存在する奈良の地で、国内のみならず海外の日本酒ファンも生み出し続けているのが、今西清兵衛商店だ。店名に聞きなじみがないという人も「春鹿(はるしか)」といえば、一度は聞いたことがあるだろう。「春鹿」とは、今西清兵衛商店が生み出す日本酒の銘柄で、春日大社とその神獣である鹿から「春鹿」と名付けられたという。「春鹿」の日本酒は、国内のみならず、10か国以上に輸出され、日本酒ファンを増やし続けている。

どっしりとしたたたずまい。入り口の杉玉が酒蔵の証

「超辛口」で知られる「春鹿」

「今西清兵衛商店」は、代々続く老舗と、店主のこだわりが詰まった新しいショップやカフェがうまく融合する「ならまち」にある。創業は1884年(明治17)。140年ほどの歴史を持つ酒蔵だ。その歴史は、初代主人・今西清一氏が清酒やみりん、あられ酒の製造を開始したことに始まる。

明治天皇も味わったという「あられ酒」。上品な甘さなので、ブルーベリーなどを漬けてリキュールにする常連客もいるのだそう

「春鹿」の代表銘柄は「純米 超辛口」。まろやかな口あたりでありながら、凜としたキレ味が感じられるこちらの酒は、食事とともにいただきたくなる味わいだ。誕生したのは、今からおよそ35年前。当時は甘口が主流であったが、4代目主人にあたる今西清梧の「これからは食事とあうキリっとした酒の時代だ」との想いから生み出されたもの。販売当初は業績が振わなかったものの、数年経つと一躍人気の味わいに。時代とともに、「春鹿」の代表銘柄となった。

現在では酒の種類も豊富。瓶のサイズも大小さまざま

豊富な日本酒を「きき酒」で楽しむ

「春鹿」では現在、辛口だけでなく、甘口やフルーティーなもの、発泡酒まで幅広い味わいの酒造りを行っている。これは5代目の「辛口はもちろん、すべての日本酒ファンに愛されるお酒を造りたい」との想いから。現在では、なんと60種類もの酒がそろう。「たくさんあってどれにしたらよいかわからない」という人にもおすすめなのが、「きき酒体験」だ。

「きき酒」の体験スペース

ワンコイン500円でその日おすすめの5種類の日本酒を味わえる。季節によっては限定酒も味わえるとあって、この「きき酒」を目当てに訪れる人も多い。「きき酒」に使われるグラスには底に愛らしい鹿が隠れており、気に入った場合は購入することも可能(330円)。ゆっくりとテイスティングしながら、おすすめの飲み方などを教えてもらうのも楽しいひとときだ。ちょっとずつ味わって、日本酒のおいしさや楽しみ方を再発見してみよう。

この日の5種類。搾りたての新酒から、にごり酒まで充実のラインナップ

よーくみると底にかわいらしい鹿が！　こうした遊び心も楽しみのひとつ

奈良の酒蔵らしく「奈良漬」も手がける。珍しい燻製の奈良漬も評判