さらさ西陣

壁一面にマジョリカタイルが貼られている。よく見るとデザインは複数ある

昭和初期に建てられた銭湯

銭湯が多いといわれるまち、京都。全国から銭湯好きが集まり、「銭湯めぐり」をする人も多い。昔ながらの銭湯がこだわりをもって営業を続けていくなか、時代とともに廃業するところも。京都西陣にある「さらさ西陣」は、そんな元銭湯だった建物のよさはそのままに、カフェとしてリノベーション。どこか懐かしいノスタルジックな雰囲気で人気を集めている。

映画やドラマの撮影で使われることもある

「さらさ西陣」の外観は、一見するとまるで料亭であったかのような重厚感のある建物。「唐破風(からはふ)」といわれる丸みを帯びたラインの屋根が印象的で、もともとは「藤ノ森温泉」という名の銭湯だったという。「藤ノ森温泉」が廃業したのち、2000年(平成12)に「さらさ西陣」として生まれ変わった。

色とりどりのマジョリカタイル

店内に入るとまず印象的なのはやはり、壁一面に貼られたマジョリカタイルだろう。マジョリカタイルとは、大正時代から昭和初期にかけて流行した1枚1枚装飾が施され、表面の凹凸やカラフルな色使いが特徴的なタイルのこと。この建物は昭和初期に建てられた銭湯であることから、マジョリカタイルが存分に用いられている。カフェとなった現在でもマジョリカタイルの美しさは健在。華やかな空間でゆったりとカフェ時間を楽しむことができる。カフェの真ん中にある半分ほど崩れた壁は、もともと男湯と女湯を仕切っていたもの。床の下には現在でも浴槽が残っているというからおもしろい。高い天井も元銭湯ならでは。音響のよさを生かして音楽イベントなどが行われることもある。

店内奥の浴室であった空間。壁には蛇口の跡も残っている

ロッカーとして使われていた扉もインテリアに

「ゆ」と書かれた小さな暖簾もおしゃれ

ボリュームいっぱいのランチメニュー

「さらさ西陣」のランチはどれもボリューム満点だが、近年新たに登場し人気を集めているのが「トルコライス」だ。こちらは2年ほど前に誕生したメニューで、「夜だけでなく、お昼からぜいたく感のあるメニューを食べてもらいたい」との想いから生まれたのだとか。ふわっふわのオムレツが載ったご飯の上にトッピングされるロース豚かつ。その上にはデミグラスソースがたっぷりとかけられている。その隣には昔懐かしいトマトパスタとエビフライ、さらにはサラダとスープが付く大満足のひと皿だ。まさに「大人のお子様ランチ」ともいえるビジュアルで、何から食べようかと悩むのも楽しい。ランチメニューはほかに「鶏の唐揚げランチ」「週替わりのおかずランチ」「牛すじカレー」の計4種類があり、食後のドリンクを通常よりもお得に付けることができる。

「トルコライス」1300円。ビッグサイズのプレートにびっくり

ケーキとドリンクを選べるケーキセットも人気

カフェづかいならば、「ケーキセット」がおすすめだ。定番の「りんごとくるみのケーキ」「キャラメルチーズケーキ」「キャロットケーキ」と季節のケーキ2種類の計5種類のケーキと、コーヒーや紅茶、カフェオレなどのドリンクをそれぞれ1つずつ選んでセットにできる。人気が高いのは「キャロットケーキ」で、ニンジンのたっぷりと入った生地の中に、食感のアクセントとしてクルミを入れ、さらにシナモンやグローブなどのスパイスを加えて、深みのある味わいに。上に載っているクリームチーズと一緒に味わえば、また異なるおいしさを楽しむことができる。ニンジンがたっぷりと使われているので、スイーツでありながら、罪悪感が少ないのもうれしいポイント。レトロな元銭湯で、空間の魅力を感じながら、ゆっくりと過ごしてみてはいかが。

「ケーキセット」1000円。この日はキャロットケーキとコーヒーをセレクト