京都

上賀茂周辺

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ぶらり洛北、世界遺産から枯山水庭園、戦国武将まで

大きく上賀茂、西賀茂、鷹峯、大徳寺の4エリアに分けられる洛北の地。まず、上賀茂エリアで楽しみたいのは散策。いわずと知れた世界遺産の上賀茂神社や門前の社家町、日本最古の公立植物園である京都府立植物園、いずれも風景を愛でながら散歩を楽しめる。それとは対照的に、西賀茂エリアの正伝寺は静の寺。比叡山を借景にした枯山水を前に、静かに座して眺めたい。さらに西へ行くと鷹峯、江戸時代に琳派の祖・本阿弥光悦が芸術家村を営んだ地だ。わずか歩いて3分ほどの小径に見ごたえある常照寺、源光庵、光悦寺の3寺院が並ぶ。そして、洛北の名刹といえば大徳寺。広大な境内には、枯山水と茶室が備えられている戦国武将ゆかりの塔頭寺院がいくつかある。また、今宮神社の門前名物「あぶり餅」は、ほっとひと息つくのにも最適だ。北大路通りを挟んだ南には、船岡山に鎮座する建勲神社に織田信長が神として祀られている。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    史跡御土居
    美しい紅葉に包まれる! 秀吉公が築いた京都を守る大きな土塁
    豊臣秀吉公が、京都の都市改造の一環として築いた土塁を「御土居」と呼ぶ。1591年(天正19)に設けられたもので、全長約23kmにも及ぶといわれる。土塁は3.6mから5.4mにもなる高さで、敵から京のまちを守る城塞(じょうさい)である一方、紙屋川や鴨川の氾濫からまちを守る防災の役割もあった。時代とともに取り壊され、現在では所どころにその姿を残すのみとなっている。北野天満宮の境内西側には御土居が残り、現在では約350本の紅葉を誇る「もみじ苑」となっている。通常は非公開だが、毎年青もみじの4月上旬~6月下旬と、紅葉の10月下旬~12月上旬に特別公開され、美しい風景を楽しむことができる。展望所からは国宝の御本殿を始めとした御社殿群を望むことができ、ふだんとは違う角度からの眺望を存分に堪能できる。
    紅葉のシーズンはライトアップされる
  • spot 02
    上賀茂神社
    時を超え、太古の昔から皇城を護るいにしえの神々
    数ある京都の神社のなかでも、最も古い社のひとつ上賀茂神社。世界遺産にも指定されており、その歴史は神代にまでさかのぼるとも。パワースポットとしても知られており、境内には凛とした神の気配が漂う。
    日の光を浴びて朱色に輝く一ノ鳥居
  • spot 03
    神馬堂
    「やきもち」一筋に150年、上賀茂神社の門前菓子
    創業から約150年を数える神馬堂。今は上賀茂神社の西に店を構えるが、もともと境内の神馬舎の辺りに茶店を営んでおり、それが店名の由来だという。商品は「やきもち」だけにもかかわらず、朝開店すると、散歩途中に立ち寄る地元の常連さん、自転車や車で乗り付けるお得意さんなど、餅を求める人びとが次々と来店する。「やきもち」は、甘さ控えめの餡を餅で包み、鉄板でこんがりと焦げ目がつくまで焼いたシンプルな和菓子だ。焼き立てはもちろん、冷めても餅の香ばしさはしっかりと残っている。そのためか、京都ではお茶会やイベントの差し入れ菓子としても重宝されているそう。午前中に売り切れてしまうことも多いので、上賀茂神社参拝前に立ち寄り、焼き立てを味わいたい。
    黄色い暖簾が目印の店舗
  • spot 04
    社家の町並み
    明神川と土塀と石橋が織りなす美景
    上賀茂神社のならの小川は、境内を出ると明神川へと名を変える。川に沿って連なる土塀は、かつて神社に仕える神職たちが住んだ社家。当時は、川の水をそれぞれの家に引き込み、邸宅内の庭園に清めとして流し、もとの明神川へ戻す工夫がされていた。さらに下流では、田畑を潤す農業用水としても大切に守られてきた。川がゆるやかにカーブする辺りには小さな祠がある。この藤木社(ふじのきのやしろ)は明神川の守護神として信仰され、樹齢500年を超えるクスノキとともに地域のシンボル的存在だ。通りには京漬物のすぐきを販売する「なり田」も店を構えており、良い上賀茂みやげになる。また、初夏に付近を訪れるのであれば、藤木社から徒歩5分の大田神社まで足を延ばしたい。沢一面に咲き乱れるカキツバタが迎えてくれる。
    町並みのなかでも、ひときわ存在感を放つ藤木社
  • spot 05
    京都府立植物園
    日本初の公立総合植物園! 京都北山の緑豊かな博物館
    24万平方メートルという広大な敷地に、日本最大級の温室をはじめ、四季の花壇、うっそうとした自然森、明るく開けた芝生など、日本と世界の植物が勢ぞろい。学びをサポートするとともに、市民の憩いの場として親しまれている。
    開園当初に植えられた樹齢100年を超えるくすのき並木
  • spot 06
    正伝寺
    引き算の美学・比叡山を望む西賀茂の枯山水庭園
    京都には数え切れないほどの庭園がある。なかでも、正伝寺の枯山水は、イギリスのロック歌手デヴィッド・ボウイが涙を浮かべたという隠れた名庭。国籍や宗教を超えて人をひきつける魅力を堪能したい。
    絵画のような風景の広がる方丈前庭
  • spot 07
    大徳寺
    洛北の名刹・戦国の世を変える原動力にもなった茶の湯の寺
    千利休ゆかりの茶の湯の寺として知られている京都紫野の大徳寺。どの塔頭寺院にも茶室や、個性あふれる枯山水庭園があり、参拝の目的のひとつとなっている。また、利休の命日である毎月28日は、多くの塔頭で茶会が催される。
    千利休切腹の一因になったともいわれる山門
  • spot 08
    大仙院
    深山幽谷の世界から大海までを描く枯山水庭園
    大徳寺塔頭の大仙院は、1509年(永正6)に古嶽宗亘(こがくそうこう)が創建。臨済宗では庭を修行の場ととらえ、方丈の周りをぐるりと枯山水が取り囲む。庭の中心となるのは、北東角のそそり立つ石組み。不老長寿の仙人が住むという蓬莱山から流れ落ちる滝は渓谷を下り、石橋を過ぎると川の流れも幅広くゆるやかに。さらに、渡り廊下を越えると、そこは人びとの暮らす京の都。鴨川を行き交う宝舟や比叡山をイメージした石が配されている。いずれも人の手が入らない自然石だ。その先には穏やかな大海が広がる。雄大な自然の風景がストーリーをもって展開されている点が興味深い。この庭を前に、利休が秀吉に茶を献じたとも伝わり、それにあやかって飲むと3回良いことが起こる「三福茶」のお点前もしてもらえる。
    国宝の方丈。大徳寺で最も古い方丈建築のひとつ
  • spot 09
    今宮神社
    無病息災・疫病退散を祈願し、疫神を祀る洛北の古社
    「健康」は、いつの時代にも共通する願い事。医療の発達していなかった昔は、神を祀り、社殿を建て、祭りを行うことで、疫病鎮静を祈願してきた。そうして、古くから地域の人びととともに歩んできた神社が洛北にある。
    1926年(大正15)に建立された南参道の楼門
  • spot 10
    かざりや
    今宮神社の門前名物・厄除け菓子のあぶり餅
    今宮神社の東参道に向かい合う2軒の茶店。時代劇に出てきそうな昔風のたたずまいの店には、次々に参拝客が訪れる。どちらも、無病息災と厄除けにご利益があるという「あぶり餅」が名物だ。江戸初期創業の「かざりや」は、甘めのまったりとした白味噌だれが特徴。一口大にちぎった餅にきな粉をまぶし、竹串に刺して店頭の炭火で手早く炙る。見る見るうちに、香ばしい焼き色がつく餅。お皿に盛り、とろりとした味噌だれをかける素朴なお菓子。注文を受けてから一人前ずつ仕上げてくれるので、いつでも炙りたてを味わえる。なかには2人前をペロリと平らげるツワモノや、お皿に付いたタレまでをなめる子どもさんもいるそう。もちろん、テイクアウトもできるので、お土産にも最適だ。
    白味噌だれがたっぷりかかった「あぶり餅」1人前600円(税込)
  • spot 11
    建勲神社
    船岡山の頂にたたずむ、織田信長・信忠親子を祀る社
    平安京の北の起点として気が満ちる船岡山。そこには、戦国の世で天下統一に挑んだ織田信長が神として祀られている。また最近では、重要文化財の刀剣・宗三左文字を所蔵することでも知られるようになった。
    木造の大鳥居。檜の素木が使われている
  • spot 12
    船岡山公園
    あの清少納言も絶賛! 平安京の北の守護神「玄武」の宿る山
    船岡山は高さ112mの小高い丘。平安時代には、都の北方を護る霊獣「玄武」の山として崇められ、内裏に近いことから平安貴族の遊宴の場としても親しまれていた。丘の美しさは数多くの歌に詠まれ、清少納言も『枕草子』で「丘は船岡-」と讃えている。そんな優美さも戦国時代には一転、応仁の乱で山名宗全率いる西軍が陣を敷き、辺りは戦場と化した。のちに、豊臣秀吉が山を織田信長の霊地と定めたことが幸いしたのか、人の手がむやみに入らず、今も豊かな自然が残されている。現在は、東側が建勲神社の境内、西側が広場や展望台、野外音楽場までを備える公園として整備されている。また、毎年8月16日の五山の送り火の日には、鳥居以外の山が見えることから多くの人で賑わう。
    梢から木漏れ日が差し込む公園の散策路
  • spot 13
    常照寺
    京の美の結晶、名妓吉野太夫が眠る鷹峯の檀林
    京都市北部に位置する鷹峯(たかがみね)。静かな住宅地に、江戸時代の伝説の芸妓・吉野太夫ゆかりの寺がある。春になると門前の参道では、太夫が寄進した赤い山門と薄紅の吉野桜とが、夢のような風景を織りなす。
    吉野太夫が寄進した山門。赤門とも呼ばれる
  • spot 14
    うめぞの茶房
    ナッツやドライフラワーでおめかしした、アートみたいな和スイーツ
    店主のこだわりが詰まったおしゃれなショップが点在し、京都好きの間で注目を集める鞍馬口(くらまぐち)通。数あるショップやカフェのなかでも、通りのシンボル的存在のひとつが「うめぞの茶房」だ。
    レトロなガラスケースに並ぶ「かざり羹(かん)」
  • spot 15
    さらさ西陣
    カラフルなマジョリカタイルがすてき!元銭湯のレトロカフェ
    どこかこだわりを感じさせるおしゃれなショップやカフェが点在する鞍馬口通(くらまぐちどおり)。昔ながらの建物をうまく活用した店が多く集まるが、なかでもこのエリアのシンボル的存在が「さらさ西陣(にしじん)」だ。
    壁一面にマジョリカタイルが貼られている。よく見るとデザインは複数ある
  • spot 16
    藤森寮
    元学生寮がものづくりの舞台に! 作家とともにアートなひとときを
    昔ながらのレトロな通りに、個性あふれるカフェやショップが点在する鞍馬口(くらまぐち)通。ゆるりと歩くだけでも楽しいこの通りで、このところ注目を集めているのが「藤森寮(ふじのもりりょう)」だ。
    鞍馬口通沿いに位置する藤森寮・北棟
  • spot 17
    源光庵
    季節の移ろいを映す円の「悟りの窓」と四角の「迷いの窓」
    京都洛北の鷹峯。静かな住宅地にたたずむ源光庵には人をひきつけてやまないという2つの窓がある。禅の心を表しているという窓は、忙しい現代人に何かを語りかけているようだ。
    座敷に座って静かに眺めていたい2つの窓
  • spot 18
    京都 おはりばこ
    人生のハレの日を彩る!小さな布をつまんで仕上げる「つまみ細工」
    芸舞妓さんのかんざしにも用いられる「つまみ細工」。文字どおり、布をつまんで花びらをかたちづくる細工は芸術作品のように美しい。そんな華やかなつまみ細工を使った小物を手がけるのが「京都 おはりばこ」だ。
    つまみ方によって、花びらのかたちはさまざま
  • spot 19
    つまみ細工体験(京都 おはりばこ)
    職人の技が目の前で!小さな布をつまんで仕上げる「つまみ細工」
    かんざしや和小物を彩る「つまみ細工」の専門店・「京都 おはりばこ」。洛北・大徳寺(だいとくじ)のすぐ隣に位置する工房兼ショップでは、つまみ細工づくりを体験できる。
    10色の布の中から、好きな色を選んで作る
  • spot 20
    瑞峯院
    仏教寺院の枯山水庭園に隠された石の十字架
    室町時代の1536年(天文5)、キリシタン大名の大友宗麟(おおともそうりん)が、大徳寺の徹岫宗九(てっしゅうそうきゅう)禅師を開祖に迎え一族の菩提寺として創建。寺名は宗麟の法名である「瑞峯院殿瑞峯宗麟居士」から名付けられた。その見どころは、1961年(昭和36)に庭師・重森三玲が開祖400年遠忌を記念して作庭した2つの枯山水。方丈前の「独坐庭(どくざてい)」は右奥にそびえる蓬莱山が半島へと連なり、絶え間なく荒波に打ち付けられながらも、雄々とその場に独坐する大自然の営みを表現。その荒々しい波も小さな石橋をくぐり、茶室前の静かな入り江を模した苔庭では穏やかな流れに姿を変える。このダイナミックな動きのある前庭に対し、方丈裏の「閑眠庭(かんみんてい)」は禅語の「閑眠高臥して青山に対す」にちなんだ静かな世界。横に3つ、縦に4つの計7つの石を十字架の形に配し、キリシタン大名であった宗麟をしのぶ庭だ。大波が押し寄せてきても何事にも動じない心と、寝転んでボーッと山でも眺めたいというやわらかな心、その両方の大切さを2つの庭は教えてくれる。
    創建当時の姿を保つ表門は国の重要文化財
  • spot 21
    しょうざんリゾート京都
    江戸時代の芸術村「鷹峯」の地に広がるリゾート施設
    北大路バスターミナルから市バス(北1号系統)に乗車すると、約20分で鷹峯エリアに到着する。江戸時代初期、徳川家康から土地を与えられた芸術家・本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)が、一族とともに移り住み、工芸集団「光悦村」が形成された地だ。市バス停「土天井町(どてんじょうちょう)」で下車すると、「しょうざんリゾート京都」はすぐそこ。光悦が愛したという鷹峯三山(鷹ヶ峰、鷲ヶ峰、天ヶ峰)のふもとにあたり、平安時代に紙漉きの行われた紙屋川が流れる自然に恵まれた地に、宿泊施設、食事処、結婚式場、ギフトショップなどが点在している。宿泊施設以外は一般利用が可能であり、日本庭園は特に人気が高い。園内では北山台杉が存在感を放ち、なかには樹齢450年という古木もあって圧倒されるばかりだ。さらにカエデや苔、梅林などの樹木が巧みに配され、季節の彩りを愛でながらそぞろ歩きを楽しむことができる。散策後には敷地内のレストランで食事も可能で、京料理、中華料理、鳥料理など、好みや予算に応じて各種そろう。夏限定で、紙屋川の上に張り出した舞台で食事をする「渓涼床(けいりょうゆか)」も人気が高い。江戸時代の芸術家が愛した静寂の地で、自然美を堪能するぜいたくな時間を過ごしてみよう。
    紀州石と北山台杉をダイナミックに配した日本庭園(入園料500円)。園内の食事処利用で割引あり
  • spot 22
    京都府立堂本印象美術館
    展示作品から建物の内装まで! 堂本印象のセンスが光る美術館
    大正から昭和にかけて京都で活躍した日本画家・堂本印象。印象の類い希なるセンスをいたるところに散りばめたのが、京都府立堂本印象美術館だ。マルチな才能が詰まった空間でゆったりとした時間を過ごそう。
    美術館のシンボルともなっているガラス装飾『蒐核(しゅうかく)』
  • spot 23
    等持院
    衣笠山の麓にたたずむ室町幕府歴代将軍の菩提寺
    室町幕府を開いた足利尊氏が、衣笠山の南のふもとに開いた等持院。平安貴族にも愛された衣笠の地で、現代につながる日本の文化をはぐくんだ将軍たちを弔うかのように、庭園は四季を通じて多様な花に彩られる。
    芙蓉池越しに方丈(本堂)を望む (写真提供:等持院)
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旅のヒント

  1. その1

    いずれの社寺、施設にも京都駅からバス1本で行ける。また、地下鉄で北大路駅まで行き、駅からバスに乗るとスピーディーに移動できる

  2. その2

    上賀茂、西賀茂、鷹峯、大徳寺、各エリア間の徒歩移動は距離があるので難しい。バスなどの交通機関を利用する。

  3. その3

    精進料理、日本茶カフェ、大徳寺納豆、漬物、和小物などのグルメ&ショップは、大徳寺周辺が充実している。

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