旧白洲邸 武相荘
昭和の時代を生きた、白州次郎と正子が選んだ終の棲家
昭和初期の農村へタイムトリップ
閑静な住宅街を抜けて旧白洲邸にたどり着くと、雑木林や竹林に囲まれて茅葺きの家屋がひっそりとたたずみ、そこだけ時間が止まったような懐かしい感覚に包まれる。白洲次郎と正子夫妻が、東京郊外の鶴川村(現在の町田市能ヶ谷)に土地付きの農家を購入して移り住んだのは1943年(昭和18)のこと。当時、次郎は41歳、正子は33歳。日本の敗戦と食糧難を見越しての転居だった。武蔵国と相模国の境にある家を、次郎は自らの無愛想さとかけて「武相荘(ぶあいそう)」と名付けた。周辺には同じような農家がたくさんあったというが、今ではすっかり様変わりし、旧白洲邸だけが往時の姿をとどめている。
入り口で迎えてくれるのは、ガレージに置かれた1916年(大正5)型のアメリカ車ペイジSix-38。次郎が17歳のときに父から買い与えられた車とほぼ同型のもので、当時神戸一中に在学していた次郎は級友を乗せて走り回っていたそうだ。1902年(明治35)に貿易商を営む白洲家の次男として現在の芦屋市で生まれた次郎は、一中卒業後はイギリスのケンブリッジ大学に留学し、英国流の教養やマナーを身につけるとともに、親友から貴族のライフスタイルを学んだ。日本に帰国した翌年の1929年(昭和4)、伯爵樺山愛輔の次女・正子と結婚。ふたりは出会った瞬間に恋に落ちたという。
白洲夫妻のライフスタイルを垣間見られる母屋
ガレージから正門をくぐって奥へ進むと、茅葺きの母屋がひっそりと立っている。購入した当時は荒れ果てていた家を次郎と正子は長い年月をかけて改築し、戦争が終わったあとも生涯この家で暮らした。木の引き戸を開けて中に入ると、土間を洋間に改築した居間兼応接室があり、夫妻愛用の品々や貴重な史料が展示されている。また床の間のある座敷を寝室、2階の蚕室を子ども部屋として使っていたという。隠居部屋だったいちばん奥の六畳間は正子の書斎。随筆家として多くの作品を残した正子は、能にも造詣が深く、また評論家の小林秀雄や青山二郎などとの交流を通して骨董の世界にのめり込んでいった。母屋は季節にあわせて年に4回展示が替わり、「稀代の目利き」といわれた正子が集めた陶磁器や着物などが陳列されている。夏はガラスの食器、秋になるとぬくもりを感じられる木地の品といったように、正子は四季折々の暮らしを楽しんでいたという。華美ではなく、自然に寄り添った心豊かな暮らしに、ふたりの美意識が感じられる。
白洲家の食卓を再現したレストラン
母屋と棟続きの部屋は、次郎が趣味の日曜大工にいそしんでいたところで、現在は「レストラン&カフェ武相荘」として営業している。ランチで人気のカレーは、正子の兄がシンガポールへ行った際に知人の家でごちそうになり、気に入ってレシピを教わったもの。白洲家では野菜嫌いの次郎のために、野菜を細かく切ってルーと一緒に煮込み、千切りキャベツが添えられていた。次郎はカレーをフォークで食べていたという。また「次郎の親子どん」に使われている器は、生前に愛用していた特注の丼を復元したものだ。
レストラン隣の納屋には、次郎が使っていた農機具が今も残されている。また納屋の2階に置かれている椅子は、次郎がGHQとの折衝を担当する終戦連絡中央事務局次長を辞す際に、自らデザインしてマッカーサーへ贈ったもの(レプリカ)だ。次郎は就任中、GHQの要求に対して主張すべきところは頑強に主張し、自らのプリンシプル(原則・信条)を大切にしていたという。自分が信じた道に妥協しなかった次郎と正子が、晩年は穏やかな日々を送った武相荘。ふたりが終の棲家として選んだ家には、今も当時の息づかいが聞こえるようだった。
スポット詳細
- 住所
- 東京都町田市能ヶ谷7-3-2 地図
- エリア
- 多摩南部エリア
- 電話番号
- 0427355732
- 時間
- 10:00-17:00(最終入場16:30)
- 休業日
-
月(祝・振替休日を除く)
※その他不定休あり(夏季・冬季) - 料金
- [入館料]1,100円
- 駐車場
- あり(16台)
- クレジットカード
-
[レストラン/ショップ]可(VISA、MasterCard、JCB、AMEX、DISCOVER、Diners Club)
[ミュージアムエリア]不可 - 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- Wi-Fi
- なし
- コンセント口
- なし
- 喫煙
- 不可
- 滞在目安時間
- 30-60分
- 乳幼児の入店
-
[レストラン]ランチ可(ディナー不可)
[ミュージアムエリア]中学生から入場可(乳児は可)
情報提供: ナビタイムジャパン
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クチコミ
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- ここが東京か?
- のんびりと時間を!一人で来ても、カップルで来ても。のんびりと時間を過ごしたい人お薦めです。茅葺の家・田舎でも、もう中々体験できない空間を独り占め
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- 満足なディナーでした
- ミュージアムエリアの営業は通常17時までですが、レストランを利用したので、予約で17時半まで見学が可能でした。レストラン営業迄の間はBar &gallery で、DVD を見ながらひと息つくことができました。白洲家のカレーライスを始め、すべて美味しかったですが、ボリュームがあります。家庭的な雰囲気の中で、食事を楽しむことができました。
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- ”日本一カッコイイ男”とも呼ばれている彼の旧宅
- 旧白洲邸武相荘”の中に入りましょう。 すると休憩所のようなところがありました。 ここは、カフェのようですね。その一番奥に、何やら立派なクラシックカーが展示してありますよ。これは、白洲次郎が自称”カントリー・ジェントルマン”を名乗っていた際に、乗っていた車らしいですよ。ここの住人の白洲次郎について、少し説明しておきます。彼は、若くしてケンブリッジに留学、太平洋戦争では、当初より敗戦を見抜き田舎...
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