自由学園明日館

文化財

創立100周年、ライトが遺した豊かな自由教育の学び舎

池袋の住宅街に静かにたたずむ明日館(みょうにちかん)。大正末期に女学校として建築された建物は、世界的建築家フランク・ロイド・ライトの名作。古き学び舎は今、一般の人にも広く扉を開いている。

池袋駅から徒歩約5分。出迎えるのは翼を広げたような屋根が印象的なホール} 池袋駅から徒歩約5分。出迎えるのは翼を広げたような屋根が印象的なホール

ライト設計の重要文化財の建物を一般公開

池袋駅周辺の繁華街から住宅街に入って少し歩くと、緑の芝生の庭と瀟洒な古い建物が立っている一角に出る。この建物は大正末期に雑誌『婦人之友』創設者である羽仁もと子と吉一夫妻が創立した女学校・自由学園の最初の校舎で、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトと弟子の遠藤新により設計された。1934年(昭和9)に自由学園が東久留米市に移転したのち、「明日館」と名付けられ、卒業生の活動の拠点や生活学校の校舎として使用。過去には建物の老朽化から取り壊しの危機もあったが、1997年(平成9)には国の重要文化財に指定され、大規模な保存修理工事を経て当時の姿に蘇った。館内は一般公開されており、見学が可能だ(見学のみ500円、喫茶付き見学800円)。

毎日の礼拝が行われていたホール。窓には高価なステンドグラスを用いず、窓枠や桟を幾何学的に配して構成された} 毎日の礼拝が行われていたホール。窓には高価なステンドグラスを用いず、窓枠や桟を幾何学的に配して構成された

ライトが仕掛けた空間の魔術と遊び心

校舎の配置は、庭の正面にホール、右手と左手には教室棟があるコの字型。建物の特徴は、高さを低く抑えて水平に延びる屋根や、床の高さを少しずつ変えた部屋を連続させる空間構成、幾何学的な建具の装飾など、ライト初期の住宅群に見られる「プレーリースタイル(草原様式)」の作風。「簡素な外形のなかにすぐれた思いを充たしめたい」という羽仁夫妻の願いを基に設計された。ホール脇の入り口から中へ入ると、外で見た印象よりも内部の空間が広く感じられ、開放的なことに驚かされる。入り口や廊下の天井をあえて低くすることで、空間の広がりがより強調されているという。吹き抜けのホールの南側には明日館のシンボルである大きな窓が設けられ、ライトはこの窓を最初にデザインしたといわれる。この窓の頂点の斜めの角度が、部屋の梁や照明器具、椅子の背もたれのデザインなど建物のあちこちに使われ、全体的な調和を見せている。

ホールの窓と同じの角度のラインが建物のいたるところで見られる。ミニミュージアムからの眺め} ホールの窓と同じの角度のラインが建物のいたるところで見られる。ミニミュージアムからの眺め

生徒にとって家のような場所を目指す

自由学園では、生徒自らに昼食を調理させるなど生活に結びついた教育を実践していた。校舎の中心に食堂があり、生徒全員が集まって手作りの温かい昼食を食べていたという。その食堂に入ると、外からやわらかな光が差し込み、天井から吊るされている照明器具はライト自身がデザインしたもので当時の姿のまま。椅子に腰をかけて改めて食堂を見渡せば、開放感とともに温かみ、親密感があり、ほっと落ち着ける空間になっている。自由学園が目指した学校は、競争の場ではなく、家族のような、家のような場所。本を読んだり、おしゃべりをしたり、外を眺めたり、この学び舎の中には落ち着いた居心地のいい居場所があちこちに隠され、豊かな時間を過ごしていた生徒たちの姿が今も目に浮かぶようだ。

建築現場を見て食堂の天井が高過ぎると気づいたライトは、ひと晩で照明の吊り具を設計したという} 建築現場を見て食堂の天井が高過ぎると気づいたライトは、ひと晩で照明の吊り具を設計したという

喫茶付き見学の場合、食堂でコーヒーか紅茶と焼菓子をいただける} 喫茶付き見学の場合、食堂でコーヒーか紅茶と焼菓子をいただける

さまざまなイベントやショップでの販売も

ホールと教室のある敷地から道路を隔てて講堂がある。この講堂を含めて明日館の建物は結婚式やイベント、セミナーなどの会場として一般に貸し出され、重要文化財の建物を使いながら保存する「動態保存」の成功例として注目されている。講堂でのコンサートや桜見学会、ビールを飲めるイベントなど明日館が主催する企画も好評だ。敷地内の一角にある「JMショップ」では、卒業生を中心とした作り手による工芸品やオリジナルデザインの文具、小物などが販売されているので、こちらにもぜひ立ち寄りたい。

遠藤新の設計で1927年(昭和2)に完成した講堂。幾何学模様の窓から木漏れ日が差し込む} 遠藤新の設計で1927年(昭和2)に完成した講堂。幾何学模様の窓から木漏れ日が差し込む

スポット詳細

住所
東京都豊島区西池袋2-31-3 map map 地図
電話番号
0339717535
時間
10:00-16:00
[第3金]10:00-16:00/18:00-21:00
休業日
月、年末年始、他不定休有(要事前確認)
料金
[見学料]500円
[喫茶付見学]800円
駐車場
なし
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
あり
コンセント口
なし
喫煙
不可
平均予算
【昼】1-1,000円
【夜】1,001-3,000円
滞在目安時間
30-60分

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • フランク・ロイド・ライトの設計により建設されました。
    4.0 投稿日 : 2022.05.31
    住宅街の中にちょっと変わった建物が目につきます。自由学園明日館は1921年(大正10)、羽仁もと子、吉一夫妻が創立した自由学園の校舎としてアメリカが生んだ巨匠フランク・ロイド・ライトの設計により建設されました。 各建物の外観は軒高を抑え、水平線を強調する。こうしたスタイルはライトの設計した住宅建築に共通するもので、プレーリー・ハウス(草原住宅)と呼ばれている。京都の平等院鳳凰堂に影響を受けたデザイ...
  • モダンです
    4.0 投稿日 : 2021.12.11
    こちらは、池袋駅西口より徒歩10分くらいの住宅地にあります。入場は無料ですが、この日は結婚式のために内部の見学は出来ませんでした。現物は写真より、こじんまりとした佇まいですが、これが100年前に建てられたとは思えないくらいモダンです。また、敷地内にはショップもあり、すっかりクリスマスの雰囲気でした。
  • 昼休みの散歩コース途中で立ち寄り
    3.0 投稿日 : 2021.10.04
    もう少し広い場所を想定していましたが,かなりこじんまりとしていました.しかしながら,池袋の中心街から10分ほどの徒歩圏内,閑静な住宅街にたたずむその雰囲気はまずますかと思います.建物が新しい事もあり,良き伝統的な印象はありませんが,綺麗に整備されているので,ゆったりと過ごすには良いかもしれません.

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アクセス

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最寄り

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