牛久大仏

正式名を牛久阿弥陀大佛といい、本尊でもある牛久大仏

親鸞聖人ゆかりの地に立つ阿弥陀如来像

人口の約2割を占める、日本最大の仏教の宗派が浄土真宗だ。宗祖の親鸞聖人はその生涯のうち、20年ほどを常陸国(現在の茨城県)で布教して過ごした。聖人ゆかりの茨城の地に、東本願寺が建立したのが牛久大仏だ。寺院としての正式名称は「浄土真宗東本願寺派本山東本願寺本廟」。高層ビルと同じ工法で造られた堅牢な像で、10年の歳月をかけて1993年(平成5)に完成した。

牛久大仏の胎内2階には建造工程に関する展示がある

大仏は南南西を向いて立っている。地上からの高さは、阿弥陀如来の12の光明にちなむ120m。なんと奈良の大仏が手のひらに乗るほどの大きさで、世界最大の青銅製大仏としてギネス世界記録にも登録されている。

極楽浄土を表した庭園

牛久大仏のチケットは2種類ある。庭園のみのものと、庭園と大仏胎内がセットになったものだ。初めて訪れるならぜひ胎内も拝観しよう。土産もの屋が並ぶ仲見世と、それに続くチケット売り場を抜けて進むと、沿道には牛久大仏頭部の体積1000分の1の模型や、実物大の螺髪(らほつ)が並ぶ。その先に、ガラス張りのモダンな發遣門(はっけんもん)が建っている。

發遣門をくぐってから振り返ると、2階に安置された釈迦三尊像を拝むことができる

發遣門をくぐると、正面の大仏に向かってまっすぐ参道が延びている。左手は生命の源を表す「群生海(ぐんじょうかい)」。春には芝桜と桜の花が池の周囲をピンクに染める。右手に広がるのは「定聚苑(じょうじゅのその)」。サルビアやコスモスなど季節の花が咲き、芝生でピクニックを楽しむ人も多い。定聚苑の北側には「本願荘厳(ほんがんしょうごん)の庭」がある。

「本願荘厳の庭」は、鎌倉時代の文献に基づいて造られた極楽浄土を表す庭園

目くるめく仏教世界の広がる胎内へ

胎内は5つのフロアに分かれており、1→2→5→4→3→2→1階の順に巡る。ハスの甘い香りが漂う1階は「光の世界」。最初に通される真っ暗な部屋は煩悩の闇を表し、やがて扉が開くと光が差し込み小さな阿弥陀如来像を照らす。阿弥陀如来の慈悲の光による衆生救済を表しており、無明から光明にいたる神秘的な体験ができる。続いて壁にお経が映し出される「観想の間」があり、こちらも幻想的だ。

1階「光の世界」。阿弥陀如来の12の光明を表す12体の像が壁面に浮かぶ

2階の「知恩報徳の世界」は、展示室と写経スペース、「念仏の間」からなる。展示室では大仏の足の親指の実物大模型で大きさを実感し、パネルで大仏建造の技術や維持の労力について知ることができる。また、2階からは外の台座に出て蓮華座に金箔を貼ることも可能。

2階には約70の写経専用席があり、気軽に写経体験が可能。所要20分～1時間程度

胎内メインの本堂と展望台へ

3階の「蓮華蔵世界」は寺院の本堂に相当し、中央に「南無阿弥陀仏」の掛け軸が下がっている。壁に約3400体もの金色の胎内仏が納められたまばゆい部屋だ。

「蓮華蔵世界」では朝と夕方に僧侶による読経が行われる

4、5階は「霊鷲山(りょうじゅせん)の間」。4階には売店と、木札にメッセージを書く願生文(がんしょうもん)コーナーがある。5階は地上85mの展望台で、大仏の胸の高さにある細い窓から外の景色を眺められる。周囲に高い建物はないので関東平野が一望でき、天気次第では西方面に、富士山やスカイツリーも見えるという。このほか、5階には仏舎利(釈迦の遺骨)やタイから贈られた釈迦如来像を安置。仏教の開祖に思いを馳せ、手を合わせよう。