松濤園
外交使節団「朝鮮通信使」をもてなした「安芸蒲刈(かまがり)御馳走一番」
「ガーデンアイランド」の中核観光施設
瀬戸内の島々を7つの橋で結ぶ「安芸灘とびしま海道」へは、本土側の呉市から安芸灘大橋で渡る。その橋を渡った先にある最初の島・下蒲刈(しもかまがり)島は、古くから瀬戸内海の交通の要衝として栄え、江戸時代には広島藩を代表して外交使節団「朝鮮通信使」をもてなすなど、重要な役割を果たしてきた歴史ある島だ。ここでは島の豊かな自然と島古来の風習を生かし、1990年代より「島全体を庭園化するガーデンアイランド構想」というユニークな町づくりが行われた。その一環として整備されたのが、島の東端、上蒲刈(かみかまがり)島と結ぶ蒲刈大橋のたもとにある「松濤園」。上蒲刈島を対岸に望み、「三之瀬(さんのせ)瀬戸」を借景に作庭された庭がある館内には、庄屋や商家、町家などタイプが異なる伝統家屋が移築され、番所の建物を復元。下蒲刈島の歴史・文化を紹介し、さらに貴重な焼物や灯火具も展示するユニークな施設となっている。
朝鮮通信使を迎えた広島藩の「海駅」
関ヶ原の合戦後、広島藩の藩主となった福島正則は、福山の鞆(とも)の浦と下蒲刈島の三之瀬に海駅を設け、長雁木(なががんぎ)を築いた。その後、鞆の浦が福山藩に移ったため、広島藩ではここが唯一の海駅となった。瀬戸内海の要衝として、ここには行き交う船を監視する番所と本陣が設けられ、参勤交代の西国大名や朝鮮通信使も利用した。番所には繋船奉行(けいせんぶぎょう)のもと船頭、水主(かこ)が配備され、海上の警固にあたった。その番所のあった三之瀬地区の海沿いには番所跡の碑が立ち、建物が松濤園に復元されている。館内に立つ「蒲刈島御番所」は、現存していた毛利藩の番所(山口県上関町)を調査し復元したものだ。
究極のもてなし「安芸蒲刈御馳走一番」
「御馳走一番館」と名付けられた、松濤園でいちばん大きく重厚な建物が、朝鮮通信使の歴史を紹介する「朝鮮通信使資料館」。明治中期の建築で、富山県砺波地方の代表的な商家造りの「有川邸」を移築したものという。そこでは、往時の本陣と周辺の様子を復元し、通信使の行列人形を配したジオラマや、朝鮮王朝から派遣された通信使をもてなすために振る舞われた「七五三膳」と称される豪華な膳を忠実に再現したレプリカなどが展示されている。2017年(平成29)には、ここに保管・展示される「朝鮮人来朝覚備前御馳走船行烈図(ちょうせんじんらいちょうおぼえびぜんごちそうせんぎょうれつず)」が、「朝鮮通信使に関する記録 17~19世紀の日韓間の平和構築と文化交流の歴史」を証言する史料のひとつとして、ユネスコ「世界の記憶」に登録された。
館内とその周辺も一大文化ゾーン
そのほか館内には、宮島の門前町にあった江戸時代中期築の町屋「木上邸」を移築した「陶磁器館」や、江戸期の藩政時代に大庄屋だった土蔵造りの「吉田邸」を山口県上関町から移築した「あかりの館」が立つ。館内の展示はもちろん、各々趣向も建築様式も異なる古きよき伝統日本の建物で、それだけでも一見の価値がある。建物と展示も見ものだが、「松濤園」の名が表すように、ここでは重厚な建物の周囲をめぐる庭園も見逃せない。また松濤園の周辺は一大文化ゾーンとなっており、横山大観や福田平八郎をはじめとする日本近代絵画や郷土ゆかりの作家作品が展示される風格ある木造建築の「蘭島閣(らんとうかく)美術館」と、江戸時代の末に漢学研鑚の場だった建物を移築した「白雪楼(はくせつろう)」がすぐ近くにある。また、本陣の外観を復元した美術館「三之瀬御本陣芸術文化館」がある三之瀬の港へも、徒歩5分とかからない。港には往時の面影を伝える福島雁木なども残るので、風情ある海辺の石畳道を潮風に吹かれて散策するのもおすすめだ。
スポット詳細
- 住所
- 広島県呉市下蒲刈町下島2277-3 地図
- エリア
- 呉エリア 安芸灘とびしま海道・竹原エリア
- 電話番号
- 0823652900
- 時間
- 9:00-17:00(最終入館16:30)
- 休業日
- 火(祝の場合は翌日)、年末年始(12/29-1/1)
- 料金
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【入館料】
[大人]800円
[高校生]480円
[小・中学生]320円 - 駐車場
- あり(50台)
- クレジットカード
- 不可
- 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- Wi-Fi
- あり(Hiroshima Free Wi-Fi(一部))
- コンセント口
- なし
- 喫煙
- 不可
- 滞在目安時間
- 30-60分
- 車椅子での入店
- 可(一部)
- 乳幼児の入店
- 可
情報提供: ナビタイムジャパン
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クチコミ
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- 海上交通の要衝だった下蒲刈島の歴史や文化を再現した4つの施設が並ぶ展示館
- 「蒲刈島番所」は再現建築、朝鮮通信使への接待の記録をまとめた「御馳走一番館」、ランプを収集展示した「あかりの館」は上関町から移設した大庄屋の屋敷、そして、古伊万里を展示する「陶磁器館」は宮島から移設した町家家屋など4つの日本建築があり、目の前の三ノ瀬瀬戸を借景にした日本庭園とともに集約した展示館になっています。一つ一つの施設では、展示物を楽しむ、古い町家の内部を楽しむ、そして、庭園、蒲刈大橋や瀬...
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- 昔の人の食べ物は?
- 朝鮮通信使などについて学べる展示館です。館内(園内)は広く、いくつかの建物に分かれています。個人的にそのなかで好きなのが、朝鮮通信使に出していた食べ物のレプリカが展示されているところです。なかは撮影禁止なので写真はありませんが、贅をつくした料理のレプリカは見応えあります。
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- 朝鮮通信使について学べます
- 呉市下蒲刈島の三之瀬地区にあります。この地区は昔は多くの船が立ち寄った場所で、朝鮮通信使なども訪れたそうです。そのときの様子などがわかる資料館もあります。
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