広島

安芸灘とびしま海道・竹原

AKINADA TOBISHIMA KAIDO / TAKEHARA

「裏しまなみ海道」とも呼ばれる7つの橋で結ばれた島々

本州と四国を結ぶ「しまなみ海道」の西側に安芸灘諸島の島々が並び、これらの島々が7つの橋で結ばれ「安芸灘とびしま海道」と呼ばれている。広島県呉市から飛び石伝いに岡村島(愛媛県今治市)まで橋で渡れるが、四国まで抜けられるわけではなく、しまなみ海道のように四国へのアクセス路とはなっていない。開発もあまり進んでおらず、穴場的な雰囲気を残しているが、それだけに落ち着いた島巡りの旅を楽しめる。「風待ち、潮待ち」の港町風情を残す大崎下島の「御手洗町並み保存地区」、朝鮮通信使や参勤交代の寄港地として栄えた下蒲刈島の「松濤園」などが、このエリアでの大きな見どころだ。また、橋でつながっていないが、大崎上島の「神峰山」は、山上から115の島々が望めるとされる瀬戸内海屈指の絶景地で、伝説の地・山岳信仰の地でもある。大崎上島の本州側には、風情あふれる「町並み保存地区」が注目の竹原があるので、あわせて訪れたい。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    御手洗町並み保存地区
    瀬戸内の島の風情もゆかしい「風待ち、潮待ち」の港町
    瀬戸内海の芸予(げいよ)諸島の大崎下島(おおさきしもじま)にある御手洗は、江戸時代に北前船(きたまえぶね)の寄港地として栄えた港町。「安芸灘とびしま海道」の開通でアクセスが便利になり、風情豊かな「風待ち、潮待ち」の港町として注目を集めている。
    町並み保存地区の中心「常磐町通り」。狭い小路に古い家並みがぎっしり立ち並び、見知らぬ町を探検する気分で散策を楽しめる
  • spot 02
    松濤園
    外交使節団「朝鮮通信使」をもてなした「安芸蒲刈(かまがり)御馳走一番」
    下蒲刈島の東端、三之瀬にある松濤園は、「ガーデンアイランド」を象徴するスポット。「蒲刈島御番所」や「朝鮮通信使資料館」などがある館内は、展示にも建物にも庭にも見どころが満載。周辺を散策するのもおすすめだ。
    蒲刈(かまがり)大橋の架かる三之瀬(さんのせ)瀬戸の海辺にある
  • spot 03
    神峰山
    「日本のエーゲ海」と讃えられる瀬戸内海の多島美を望む絶景地
    瀬戸内海に浮かぶ芸予諸島の大崎上島の最高峰・神峰山は、山上から115の島々を望めるとされ、「日本のエーゲ海」瀬戸内海の多島美が満喫できる絶景地。その美しい景色に女神が見とれたという伝説の舞台でもある。
    瀬戸内海に浮かぶ「とびしま海道」と「しまなみ海道」の島々が一望のもと
  • spot 04
    漁師料理 かつら亭 蒲刈本店
    大きな生け簀に泳ぐ魚をその場でさばく絶品・活魚料理
    瀬戸内海に浮かぶ島々を訪れたなら、食べたいのはやはり海の幸。そんなときにおすすめなのが、上蒲刈島の海岸沿いに立つ「漁師料理 かつら亭蒲刈本店」。この店を訪れて、しょっぱなに度肝を抜かれるのが、店の中央に据えられた大きな3段生け簀。地元の漁師から直接活きのいい魚を毎日仕入れ、次々と運ばれてくる魚をその大きな生け簀で泳がせ、提供する直前にさばいている。「魚をいちばんおいしく食べられる」新鮮な状態と、最適の調理法で提供するのが店のポリシーだ。店の自慢はもちろん、生け簀から直接あげた魚を使った刺身などの活け魚料理だが、とびしま海道の旅で食べてみたい一品が、素朴な漁師料理の「漁師丼」(1650円)。ハマチやタコなど3~4種類の刺身を刻んで、だし醤油に浸したものを白飯に載せたものだが、歯ごたえがあるこの丼の魚はひと味違う。窓外に広がる海景色を眺めながら、潮の香を感じて食べる瀬戸内ならではの味覚に、島旅気分が盛り上がること請け合いだ。
    出汁醤油に浸したハマチやタコなどの刺身とイクラを海苔や大葉を散らした飯に載せた漁師丼。新鮮な刺身も絶品だ(別注)
  • spot 05
    たけはら町並み保存地区
    製塩で栄えた江戸時代から昭和初期の町並みが残る
    広島県の瀬戸内海沿岸中央にある竹原は、江戸時代に製塩で栄えた。往時の繁栄のしのばれる町並みが残り、「国の重要伝統的建造物群保存地区」にも選定。テレビドラマ『マッサン』でも注目を集めた。
    町並み保存地区のメインストリート「本町通り」は、電柱のない石畳道。歴史的建造物が立ち並ぶたたずまいは美しくも壮観だ
  • spot 06
    竹鶴酒造
    「マッサン」の生家で注目を集めた江戸時代創業の老舗造り酒屋
    「竹原町並み保存地区」のメインストリート・本町通りに、堂々たる構えを見せる竹鶴酒造。1733年(享保18)の創業で、「小笹屋(おざさや)」の屋号で知られる老舗の造り酒屋だ。NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』のモデルとなったニッカウヰスキーの創業者で、「日本のウイスキーの父」と称される竹鶴政孝(たけつるまさたか)の生家でもあり、往時の建物をそのまま残す竹鶴酒造が『マッサン』のロケ地ともなった。その『マッサン』で注目を集めることとなったが、この竹鶴酒造では竹原の風土と歴史を反映した酒造りをモットーとする。竹原の海から得られる魚介に合わせたうま味、竹原の酒造りの歴史を背景とした酸味、そして食中酒として必要なきれ味、この3つの味が「食をおいしくする」。日本酒だけではなく、ぜひ料理と合わせて楽しみたい。ここは広島県下で唯一の「全量純米酒蔵」でもあり、また広島県下で初めて伝統的な製法である「生酛造り」や「木桶仕込み」を復活させたことでも注目されている。
    年季が入った店頭の暖簾にも、老舗の風格を感じる。母屋は安永年間(1772~1781年)頃の建物という
  • spot 07
    旧 松阪家住宅
    「たけはら町並み保存地区」を代表する商家の意匠を尽くした建物
    本町通りに面して立つ旧松阪家住宅は、「たけはら町並み保存地区」を代表する商家の建物。松阪家は、江戸時代には塩田の必需品である薪炭問屋を業とし、塩田経営や廻船業、醸造業を多角的に経営するとともに、下市庄屋、割庄屋(地域をまとめる大庄屋)、竹原塩浜庄屋を務めていた。そして明治維新後には竹原町長を輩出し、文化活動を行っていた名家だ。その松阪邸の主屋は、江戸時代後期の1820年頃(文政年間)に建てられ、1879年(明治12)に改築されたもの。波打つような形をした唐破風(からはふ)の屋根が独特で、菱格子の出窓や彫をもった出格子など、華やかな建築意匠が随所に見られる。邸内の座敷も全体的に数寄屋風の意匠で統一され、庭も風雅なたたずまいで趣味がよく、京都の寺を思わせる。広い土間の炊事場や蔵も印象的で、往時の繁栄ぶりがしのばれる。また、邸内に展示される古い箪笥(たんす)などの調度品や屏風、着物、生活用品の数々から暮らしぶりがうかがわれ、たいへん興味深い。
    本町通りに面して立ち、カーブを描いた大屋根と、その下のうぐいす色の漆喰が印象的
  • spot 08
    西方寺普明閣
    たけはら町並み保存地区を見下ろす高台に朱色の舞台造が立つ
    竹原の町並み保存地区を散策していると、所どころで、高台に立つ朱色の建物が目をひく。それが西方寺の普明閣で、京都の清水寺の舞台を模して建てられたという。本町通りの中ほどの町角から西方寺へ参道が通じ、城郭を思わせる石垣の上に西方寺の堂宇が並び立つ。石段を登り、山門をくぐると西方寺の境内だ。その境内の奥のさらに高まった場所に、華やかな舞台造の普明閣が立ち、舞台からは竹原の市街が一望できる。西方寺は1560年(永禄3)、念佛道場として開山された浄土宗の寺。この西方寺が立つ場所にはもともと、竹原小早川家の第14代当主・小早川隆景(こばやかわたかかげ)によって建立された禅寺の妙法寺があったが、1602年(慶長7)に火災で焼失。町並みの一角に立つ地蔵堂の隣にあった西方寺が、翌1603年(慶長8)ここに移転した。その後1758年(宝暦8)に、妙法寺の本尊だった十一面観音像を祀る観音堂として建てられたのが、この普明閣という。現在、その観音像(広島県指定重要文化財)は西方寺境内にある守護堂に安置され、通常は見ることができないが、竹原に来たなら普明閣の舞台へはぜひ上ってみたい。
    宝形造りの二重屋根をもつ舞台造の普明閣は町並みからよく目立ち、竹原のランドマークとなっている
  • spot 09
    竹原市歴史民俗資料館
    たけはら町並み保存地区で唯一の洋風建築
    日本の伝統的な家屋が立ち並ぶ町並み保存地区の本町通りにあって、レトロモダンな洋風建築が目をひく。それが竹原市歴史民俗資料館で、1929年(昭和4)に町立「竹原書院図書館」として建てられた建物だ。もともと、この場所は江戸時代中期の儒学者・塩谷道碩(しおたにどうせき)の旧宅跡で、頼山陽(らいさんよう)の父・春水(しゅんすい)が発案して造られ、叔父の春風(しゅんぷう)が塾長を務めた学問所「竹原書院」があった。その竹原書院は1813年(文化10)に焼失したが、1910年(明治43)に社団法人竹原書院として再発足、その流れで「竹原書院図書館」が誕生し、長きにわたって竹原の教育・文化の拠点となっていた。1972年(昭和47)に図書館が移転し、その後、建物が歴史民俗資料館として活用されている。館内には、竹原に繁栄をもたらした製塩業を中心に、竹原の歴史と文化などに関する資料が展示される。近世の文化活動や塩業などの地域産業に力点をおく。隣接する「憧憬の広場」には、「マッサンとリタ(竹鶴夫妻)の像」がある。
    本町通りにある「憧憬の広場」の隣に立ち、竹原の歴史と文化をここで学べる
  • spot 10
    藤井酒造 -酒蔵交流館-
    竹原の町歩きで立ち寄りたい老舗酒造の「ユニークな交流館」
    竹原で酒屋といえば『マッサン』で竹鶴酒造が有名になったが、その竹鶴と並ぶ老舗酒蔵が、江戸時代末期の1863年(文久3)から伝統的な日本酒造りを連綿と続ける藤井酒造。その「藤井酒造」の看板商品が銘酒「龍勢」で、明治政府が清酒技術の研鑽・向上を目的として1907年(明治40)に開催した「第1回全国清酒品評会」で優等賞第一位を受賞した逸品だ。豊富な水と海産物に恵まれ、海の幸が並ぶ食卓に日本酒がつきものだった竹原で、食事とともに楽しむ「食中酒」にこだわり、伝統的な手法で日本酒造りを続けている。その藤井酒造が使わなくなった古い仕込蔵を改装し、地域の交流の場として設けたのが「酒蔵交流館」。江戸時代の末期に建てられた酒蔵は、高い天井と太い梁が独特な雰囲気をもつ空間で、夏でもひんやりしている。そして、そこには藤井酒造の酒や酒器類だけでなく、民芸品や雑貨などがずらりと並ぶ。酒は展示・販売するだけではなく、数種類の酒の試飲も無料でできる。奥には「酒蔵そば処たにざき」があり、蔵の中で手打ちそばも食べられる。町歩きの途中で、ちょっと休憩がてら立ち寄るのに格好のスポットだ。
    町並み保存地区のメインストリート「本町通り」のひと筋西の「中ノ小路」沿いに立つ
  • spot 11
    酒蔵そば処たにざき
    老舗酒造の酒蔵にある「酒をそばと楽しむ」そば処
    竹原の町並み保存地区にある老舗酒蔵・藤井酒造の「酒蔵交流館」の奥まった場所に、蔵の中でそばを食べられる異色のそば処がある。それが「酒蔵そば処たにざき」で、「酒蔵そば処」を店名に冠しているとおり、手打ちそばと藤井酒造の銘酒を堪能できる店だ。「そば屋」というよりも、「酒蔵」という風変わりな場所で「酒をそばと楽しむ店」というほうがお似合いかもしれない。そばと酒はおのおの単品でも提供しているが、そばと酒がセットになった「ほろ酔いセット」がおもしろい。「酒蔵の中で、酒をたしなみながら食べるそば」というのも風変わりだが、シチュエーションが珍しいだけではない。そば打ち技術の継承に尽力している「そば打ち名人」として高名な高橋邦弘氏から手ほどきを受けたという店主が打つそばは、北海道産のそば粉を使った二八そばで、ていねいに打たれておりレベルが高い。「焼きみそ」「だし巻き」「山芋わさび」など、酒のあてにぴったりの一品料理もそろう。
    蔵を使った「藤井酒造 -酒蔵交流館-」の奥まった場所にそば処の暖簾がかかる
  • spot 12
    大久野島
    「毒ガス」の悲史が秘められた「ウサギのパラダイス」
    竹原市沖の瀬戸内海に浮かぶ大久野島は、「ウサギの島」として人気の島。「瀬戸内海国立公園」となっている風光明媚な島だが、一方で「毒ガスの島」としても知られ、往時の要塞跡や毒ガス関連施設の遺構が残る。
    島の中核施設となっている「休暇村大久野島」の前の広場ではたくさんのウサギが跳ね回っている
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旅のヒント

  1. その1

    安芸灘とびしま海道の島々へ車で行く場合は、呉市から安芸灘大橋で下蒲刈島へ渡る。従来はフェリーを利用して大崎下島~大崎上島~竹原の周遊ルートが可能だったが、大崎下島から大崎上島へのフェリーが2023年(令和5)5月に廃止される予定のため、帰路も安芸灘大橋を渡って戻ることになる。

  2. その2

    安芸灘大橋の通行料金は片道730円。安芸灘とびしま海道エリア内の指定施設で合計1000円以上利用すると、安芸灘大橋の回数通行券と交換でき、実質帰路が無料になる。

  3. その3

    呉から大崎下島まで、島々を結ぶバス便があり、公共交通機関でのんびり島巡りを楽しむことも可能。大崎下島~大崎上島~竹原を旅客船が運航しているので、周遊プランも組める。

  4. その4

    大崎上島へは竹原・安芸津からフェリーが運航。また大崎上島からはしまなみ海道の大三島へもフェリーが運航しているので、大崎上島をしまなみ海道とあわせた旅プランを組みこともできる。

  5. その5

    竹原市の沖合に「ウサギの島」で人気の大久野島があり、こちらを竹原とあわせて旅するのもおすすめ。

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