広島

KURE

戦前は東洋一の軍港として栄えた町。近年は人気アニメ映画の舞台として注目を集める

呉は広島市から南へJR呉線の快速で約35分。眼前に呉湾、すぐ背後に山が迫る天然の良港だ。明治時代、旧日本海軍が根拠地のひとつ「鎮守府」を置き、海軍工廠では戦艦大和も建造された。「大和ミュージアム」など「軍港」関連の歴史的スポットが多々あり、現在は海上自衛隊の基地として、艦船や潜水艦の姿を見ることができる。日本遺産「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴-日本近代化の躍動を体感できるまち-」に認定されている。大ヒットアニメ映画『この世界の片隅で』の舞台になり、ヒロインすずに関係した場所を訪ねる人も多い。平清盛の「日招き伝説」で有名な音戸(おんど)の瀬戸公園は、現役の潜水艦を近くで見られる「アレイからすこじま」から車で約10分のところにある。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    大和ミュージアム
    世界最大級の戦艦の数奇な歴史と造船技術を紹介
    「大和ミュージアム」は戦艦「大和」の沈没から60年経った2005年(平成17)に大和の建造地である呉に開館した。10分の1模型の展示を目玉に、呉との関わりや平和の貴さ、科学技術のすばらしさを伝える施設だ。
    吹き抜けの館内に展示された戦艦「大和」の復元模型。10分の1でこの迫力!
  • spot 02
    てつのくじら館(海上自衛隊呉史料館)
    実際に活動していた潜水艦がそのまま史料館に
    明治時代に鎮守府が置かれ軍港として栄えた歴史をもつ呉には、現在も海上自衛隊呉地方総監部が置かれている。「てつのくじら館」は呉と海上自衛隊との関わりの歴史や、潜水艦と掃海についての史料を展示する。
    退役潜水艦「あきしお」の内部が博物館になっているというユニークさ
  • spot 03
    呉湾艦船めぐり
    船から停泊している多彩な艦船を見ることができる
    東洋一の軍港といわれた呉。現在も海上自衛隊呉基地がある呉湾で、艦船や潜水艦を観光船から見られる「艦船巡り」が人気を博している。陸からの光景とは異なる、海からの呉の姿を楽しもう。
    元自衛官のガイドを聞きながら、間近から見る護衛艦の巨大さに圧倒される
  • spot 04
    アレイからすこじま
    世界でも珍しい、陸から潜水艦を間近に見ることができる公園
    かつての潜水艦専用桟橋を公園として整備したのが「アレイからすこじま」。護岸施設やレンガ造りの倉庫群、そしてなにより停泊する潜水艦や護衛艦を陸から間近に見られることが魅力だ。
    名前のもとになった小道(英語でアレイ)。道路の向こうには風情ある赤レンガの倉庫が続く
  • spot 05
    入船山記念館
    軍港として栄えた呉の歴史を学ぶのに最適のエリア
    旧呉鎮守府司令長官官舎(国の重要文化財)、歴史民俗資料館(近世文書館)などがあるエリアを総称して「入船山記念館」と呼ぶ。自然林が残り、歴史に触れながら散策を楽しめるエリアだ。
    旧呉鎮守府司令長官官舎の公的な利用をされた洋館部
  • spot 06
    田舎洋食 いせ屋
    大正時代から引き継がれる「海軍グルメ」を味わいたい
    旧海軍では、兵士の健康維持のため栄養バランスが良く調理も簡単な洋食を取り入れられ、日本人好みにアレンジされたチキンライスやカツレツなどが生まれた。旧海軍の当時のレシピを元に再現した料理「海軍グルメ」は、旧海軍ゆかりの港町・呉の飲食店で提供されている。「呉海自カレー」はそのひとつ。護衛艦「とね」や潜水艦「そうりゅう」など呉海上自衛隊呉基地の協力で艦ごとに違う味のカレーの作り方を調理員から直接教わり、艦長が味を認定している。食べ歩くファンも多く、土産としても人気。そんな呉のなかで、1921年(大正10)創業の「田舎食堂 いせ屋」は、旧海軍でコック長をしていた初代の味を受け継いでいる海軍グルメの老舗。オムライスやオリジナルカツ丼、水を加えずに煮込む海軍レシピの「海軍さんの肉じゃが」が人気で、呉に根付いた洋食文化の懐の深さを感じさせる。
    名物の「海軍さんの肉じゃが」(495円)。水を加えずに煮込む海軍レシピを引き継ぐ
  • spot 07
    旧澤原家住宅 三ツ蔵
    アニメ映画『この世界の片隅に』に登場した3つ並びの珍しい蔵
    戦前の広島市・呉市を舞台した2016年(平成28)公開のアニメ映画『この世界の片隅に』で注目された旧澤原家住宅の「三ツ蔵」は、呉のシンボル的な存在のひとつ。澤原家は屋号を澤田屋(さわだや)と称して酒造業を営み、代々庄屋や呉市長などの要職を務めた由緒ある家系だ。旧澤原家住宅は重厚で品格がある屋敷で、藩主の休憩所・宿所ともなった。主屋は1756年(宝暦6)、珍しい三ツ蔵は1809年(文化6)の建築で、幸い空襲で被災することもなく残り、国の重要文化財となっている。また澤原家には、幕末の思想家として名高い吉田松陰に多大な影響を与え、新しい日本を基礎づけたといわれる明治維新の勤王僧・宇都宮黙霖(うつのみやもくりん)が晩年に寄留し、1897年(明治30)この地で亡くなった。三ツ蔵の前には、その「宇都宮黙霖翁終焉の地」の碑が立つ。見学できるのは外観のみだが、『この世界の片隅に』ファンでなくとも一見の価値はある。JR呉駅や大和ミュージアムから約2km、歩いて30分足らず。呉の市街をのんびり散策がてら訪ねてみたい。
    蓑壁と漆喰壁を併用した独特の意匠をもつ土蔵が、石垣の上に3棟並び立つ姿が印象的
  • spot 08
    自由軒
    注目の「海軍グルメ」は「戦艦大和のオムライス」
    戦前は大日本帝国海軍の一大軍港、現在は海上自衛隊の基地として知られる呉で、食べたい名物グルメといえば「海軍グルメ」。市内の多くの飲食店で提供されているが、それぞれの店でレシピは異なる。そのうちの注目のひとつが、創業60有余年の老舗洋食屋「自由軒」が提供する「戦艦大和のオムライス」(サラダ・味噌汁・紅茶付きデミセット1250円)だ。洋食がおいしいと評判の店で、呉の繁華街「れんがどおり」(中通)のアーケードから少し入ったところに立つ。レトロモダンな外観で、店内も懐かしい昭和レトロな雰囲気が漂う。「戦艦大和のオムライス」には、元海軍のコックをしていた福山の自由軒の先代からレシピを受け継いだというソースがかかる。この店はご近所の常連、年輩客が多く、洋食だけでなく各種定食や丼もの、ラーメン・うどんなどの麺類も提供する。地元密着型の町角洋食だが、観光客もグルメガイド片手に来訪する知る人ぞ知る店だ。
    海軍デミグラスソースを味わいたい
  • spot 09
    音戸の瀬戸公園
    平清盛の「日招き伝説」が残る風光明媚な名勝地
    呉市の本土側南端部、倉橋島との間にある「音戸の瀬戸」は、平清盛が開削したと伝わる瀬戸内航路の要衝。音戸の瀬戸公園は海峡を見下ろす絶景地で、展望所が点在。桜やツツジの名所としても知られる。
    山上の「髙烏台展望台」からは、眼下に新旧2つの赤い橋が架かる音戸の瀬戸、倉橋(くらはし)島の向こうに広がる瀬戸内海を望む
  • spot 10
    野呂山
    山上に自然に包まれた高原が広がり、瀬戸内海の絶景を楽しめる
    瀬戸内海を眺望する絶景スポットで、ハイキング地、避暑地としても人気の野呂山。山上はなだらかな高原になっていて、レジャー施設や展望台が点在する。弘法大師・空海が修行したと伝わる霊山としても知られている。
    山上や中腹に複数の展望台があり、絶景を楽しめる。夕景・夜景スポットとしても人気だ
  • spot 11
    西条酒蔵通り
    赤レンガの煙突、白壁の酒蔵が立ち並び、酒の飲み比べを楽しめる
    東広島市の西条にある「西条酒蔵通り」は、赤レンガの煙突になまこ壁白壁の酒蔵という、昔ながらの酒造施設が立ち並ぶ。ここではノスタルジックな町歩きや、歴史を感じる蔵巡り、日本酒の飲み比べが満喫できる。
    なまこ壁、白壁の酒蔵の向こうに赤レンガの煙突が見える風景は、酒都・西条ならでは
  • spot 12
    賀茂鶴酒造
    酒蔵通りでひときわ目立つ全国的に名高い銘酒「賀茂鶴」の蔵元
    7つの酒造会社が一堂に会し、酒都と称される西条の「酒蔵通り」で、ひときわ威容を誇るのが「賀茂鶴酒造」。その名のとおり、全国清酒品評会や全国新酒品評会などで数々の賞を受賞し、全国的に名をとどろかせる銘酒「賀茂鶴」の蔵元だ。オバマ元米大統領が来日した折にも、寿司屋で「賀茂鶴」が振る舞われ話題となった。その「賀茂鶴」が誕生したのは1873年(明治6)。1898年(明治31)に日本初の動力精米機を導入して以来、先進的な精米技術を取り入れ、大吟醸造りの先駆けとなった。今も精米にこだわりをもち、すべて広島県産の米を使用し、自社で精米を行っている。明治初期に建てられた1号蔵(国の登録有形文化財)を改装した「見学室直売所」では、動画や展示などで酒造りを体感でき、その歴史について学べる。蔵元限定酒などの販売コーナーや、プレミアムな酒が試飲できるバーカウンターもある。また杜氏による酒蔵案内も不定期で実施し、ふだんは公開していない醸造蔵の中を見学できる(約1時間1000円、要予約)。
    「酒蔵通り」の蔵元でも目立った存在で、見学コーナーも充実している
  • spot 13
    御手洗町並み保存地区
    瀬戸内の島の風情もゆかしい「風待ち、潮待ち」の港町
    瀬戸内海の芸予(げいよ)諸島の大崎下島(おおさきしもじま)にある御手洗は、江戸時代に北前船(きたまえぶね)の寄港地として栄えた港町。「安芸灘とびしま海道」の開通でアクセスが便利になり、風情豊かな「風待ち、潮待ち」の港町として注目を集めている。
    町並み保存地区の中心「常磐町通り」。狭い小路に古い家並みがぎっしり立ち並び、見知らぬ町を探検する気分で散策を楽しめる
  • spot 14
    松濤園
    外交使節団「朝鮮通信使」をもてなした「安芸蒲刈(かまがり)御馳走一番」
    下蒲刈島の東端、三之瀬にある松濤園は、「ガーデンアイランド」を象徴するスポット。「蒲刈島御番所」や「朝鮮通信使資料館」などがある館内は、展示にも建物にも庭にも見どころが満載。周辺を散策するのもおすすめだ。
    蒲刈(かまがり)大橋の架かる三之瀬(さんのせ)瀬戸の海辺にある
  • spot 15
    漁師料理 かつら亭 蒲刈本店
    大きな生け簀に泳ぐ魚をその場でさばく絶品・活魚料理
    瀬戸内海に浮かぶ島々を訪れたなら、食べたいのはやはり海の幸。そんなときにおすすめなのが、上蒲刈島の海岸沿いに立つ「漁師料理 かつら亭蒲刈本店」。この店を訪れて、しょっぱなに度肝を抜かれるのが、店の中央に据えられた大きな3段生け簀。地元の漁師から直接活きのいい魚を毎日仕入れ、次々と運ばれてくる魚をその大きな生け簀で泳がせ、提供する直前にさばいている。「魚をいちばんおいしく食べられる」新鮮な状態と、最適の調理法で提供するのが店のポリシーだ。店の自慢はもちろん、生け簀から直接あげた魚を使った刺身などの活け魚料理だが、とびしま海道の旅で食べてみたい一品が、素朴な漁師料理の「漁師丼」(1650円)。ハマチやタコなど3~4種類の刺身を刻んで、だし醤油に浸したものを白飯に載せたものだが、歯ごたえがあるこの丼の魚はひと味違う。窓外に広がる海景色を眺めながら、潮の香を感じて食べる瀬戸内ならではの味覚に、島旅気分が盛り上がること請け合いだ。
    出汁醤油に浸したハマチやタコなどの刺身とイクラを海苔や大葉を散らした飯に載せた漁師丼。新鮮な刺身も絶品だ(別注)
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旅のヒント

  1. その1

    呉の南部、国道487号を南へ行けば「音戸の瀬戸公園」がある。公園の展望台からは、島々が点在する安芸灘の風景が楽しめる。

  2. その2

    本土と倉橋島は狭いところで幅が約80mの海峡で、たくさんの船が航行する別名「瀬戸内銀座」。呉から足を延ばして、国内初の「2層半螺旋型高架橋」音戸大橋の赤い姿を見に行くのもおすすめ。

  3. その3

    JR呉駅を起点にして、呉の観光ポイントは歩いて巡ることができる。一日のんびり、時間をかけて海軍関連の施設を見学し、町歩きを楽しもう。

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