高知県安芸市は近年プロ野球チームの阪神タイガースのキャンプ地として知られていますが、実は岩崎弥太郎など、江戸や明治の偉人とのゆかりも深い歴史と文化あふれるまちです。
市中心部にある安芸城跡周辺には戦国武将の山内一豊に仕えた後藤家の武家屋敷や日本風景街道の一つに数えられる土居廓中の美しい町並みのほか、誰もが知る童謡ゆかりの場所や市のシンボルとなっている野良時計など散策スポットが集まっています。
歴史的町並みにユニークな建築 懐かしい童謡も
土居廓中（かちゅう）は戦国期に築かれた安芸城を中心に江戸時代に大規模な屋敷を構えた土佐藩家老五藤家により形成された武家町です。
伝統的建造物群保存地区に選定された東西約410メートル、南北約360メートルのエリアは近世の町割の骨格を今に留めており、狭い通りに石溝や生垣、塀などが美しい町並みを形成しています。
近くには1887年頃、この土地の地主だった畠中氏が西欧より取り寄せた時計の仕組みを覚え、独学で作ったという野良時計もあります。個人の住居のため、内部公開はしていませんが、安芸市のシンボル的な存在となっています。
その近くには童謡の「叱られて」の曲碑もあります。実は安芸市は日本を代表する童謡の作曲家、弘田龍太郎が生まれたところで、市内にはこうした曲碑が10カ所も建てられています。
土居廓中周辺には「鯉のぼり」の碑も見ることができます。安芸市観光協会の曲碑の位置を記した観光マップはまち歩きにも便利です。
歴史と文化香る安芸城跡を訪ねてみよう
1308年、安芸親氏によって築かれたといわれる安芸城は戦国時代まで安芸氏の居城でした。
安芸城跡の入り口、掘を渡った先が追手門、その先が桝形です。桝形の先には五藤家安芸屋敷、その先に歴史民俗資料館、書道美術館、最奥には藤崎神社があります。
江戸時代の絵図には、城山の三方に土塁をめぐらし、その外側に堀が描かれているといいますが、現在は追手門の東西に堀が残るのみです。
安芸城は標高約41メートル、東西100メートル、南北190メートルの楕円形をした平山城。城山に上がれば、土塁や石積、城の中核となる詰などを見ることができます。
土居廓中の最大の魅力 美しい塀を巡る
土居廓中の魅力といえば、何をおいてもこの美しい塀がかもす独特の景観です。こちらの道もそうですが、玉石でできた塀、板塀、生垣など、角を曲がれば趣の異なる塀が織りなす美しい景色が見られます。
瓦を積み重ねた「練塀」、生垣もよく見ると土用竹を使ったもの、うばめ樫を使ったものなど、様々です。
こちらの道では安芸市のシンボル野良時計や絶滅危惧種のトビハゼなどのデザインマンホールもいろいろ見ることができます。
安芸城跡・土居廓中の建築を訪ねる
安芸城跡の中、桝形を曲がった左側にあるのが五藤家安芸屋敷です。
山内一豊から安芸を預かった五藤氏は代官から家老になり、幕末まで藩政の中枢で活躍しました。五藤家に残された絵図によれば、当時安芸城の麓一帯には多くの屋敷や蔵などが並び、広い土居屋敷を構えていたようです。
野村家は土居廓中の中で唯一、一般に公開している武家屋敷です。江戸時代末期の建築で、主屋は30坪、正門の奥にさらに門がある二重構造となった武家屋敷づくりとなっています。
＜土居廓中・武家屋敷の基本情報＞
住所：高知県安芸市土居
電話番号：0887-34-8344（安芸観光情報センター）
アクセス：土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線安芸駅より車で約5分、安芸駅よりレンタサイクル利用で約10分
史跡・歴史資料で巡る安芸の文化
安芸城跡の中にある歴史民俗資料館や書道美術館では安芸の歴史、文化に触れることができます。
歴史民俗資料館では安芸市ゆかりの岩崎弥太郎や五藤家を知る資料を展示しています。その隣にある書道美術館は全国で始めての書道専門の公立美術館。安芸市は藩政時代より書道が盛んで日本書壇を代表する作品も展示されています。
書道美術館の先にある藤崎神社は五藤氏の氏社です。白木の鳥居が印象的な社で、前に立つと清々しい気持ちになります。
こちらは書道美術館前にある安芸城跡に上がっていく道。高さや距離はありませんが、上がる場合は滑りにくい靴やパンツスタイルの方が安心です。
＜安芸城跡の基本情報＞
住所：高知県安芸市土居953
電話番号：0887-34-8344（安芸観光情報センター）
アクセス：土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線安芸駅より車で約5分、安芸駅よりレンタサイクル利用で約10分
