藤野芸術の道
山全体が野外美術館。森林浴を満喫しながらアートウォッチングを
自然と人間との関わりを考えさせるアート
相模湖の西端に広がる藤野エリアは、江戸時代には甲州街道の宿場町として、近年は「アートの棲むまち」として知られる。新宿からJR中央線で約70分の藤野駅周辺と、相模湖の南に広がる名倉地区の山全体に散りばめられた野外環境彫刻は28点。JR中央線に乗っているとき、あるいは、中央自動車道の藤野PA付近を走っているときに、山肌にある巨大な『緑のラブレター』に気付いた人も多いのではないだろうか。あの山だ。おもな作品を見学しながら車でまわると約1時間。歩くならJR藤野駅から一周3時間ほどかかるだろう。「藤野芸術の道」と一部が重なる「藤野園芸ランド遊歩道」もおすすめ。「森林浴の森日本100選」にも選ばれている豊かな森を通るハイキングコースで、山の緑が実に気持ちがいいので、ぜひ天気のよい日に歩いてみたい。
藤野の山からのラブレター
旅の始まりは『緑のラブレター』の見えるJR藤野駅。「藤野へようこそ」のメッセージが込められた作品だ。出発前に、隣にある「藤野観光案内所 ふじのね」で地図を手に入れよう。野外彫刻を楽しむアプリ「fujinoART」のQRコードも印刷されている。入り口に設置された額縁のようなアートもお見逃しなく。館内には藤野在住アーティストの作品や地元の特産品も販売されている。駅から歩いて10分足らずで相模湖の西端に架かる弁天橋が現れる。道路橋としては全国でも珍しいニールセンタイプのアーチ橋で、橋桁がダイナミック。「かながわの橋100選」にも選ばれている。橋を渡って坂を上がると県道520号線に出る。これを左折して時計回りにアートを見て行こう。
ルート上には銅像、石、鉄、ステンレスなど素材もさまざまな作品が点在する。途中、葛原神社では境内の3か所に設置されているので、地図を参考に探してみよう。隣の正念寺には「神奈川の名木100選」に選ばれている樹齢270年以上の枝垂れ桜があり、見頃は4月上旬。その先にあるシュタイナー学園は、授業自体を芸術ととらえ、小中高一貫の独特な教育で知られる。この付近からは『山の目』がよく見える。なお『緑のラブレター』と『山の目』は遠くから眺めるだけで、目の前まで行くわけではない。また、日連大橋(ひづれおおはし)経由のルートもあり、それぞれ見られるアート作品は異なるので、出発前に地図で確認を。トイレはバス停「園芸ランド事務所前」の隣と葛原神社にある。
始まりは戦時中の疎開画家
レオナール・フジタこと藤田嗣治は太平洋戦争中、当時の藤野町に疎開して自然のなかで芸術活動をしていた。ほかにも猪熊弦一郎など疎開画家が5人ほどいたという。戦後、藤田はフランスへ移住し二度と日本へ戻ることはなかったが、疎開画家が地元に残した作品がひとつのきっかけとなり、1988年(昭和63)、神奈川県の主導で『山の目』などの野外アートが設置された。続いて昭和の終わりから平成の初めにかけて、町づくりの一環として「藤野ふるさと芸術村構想」がスタート。名倉地区を中心に数多くの作品が登場した。それから30年以上のときを経て、作品のなかには汚れやシミが付いたり色あせたりしているものもあるが、そんな変化もまたアーティストと自然からのメッセージだ。現在では藤野地区の人口約8300人の4%近くがアーティストといわれ、音楽、演劇、歌舞伎、写真などさまざまなイベントも行われている。
アート鑑賞のあとは、自身の手で創作してみてはどうだろう。芸術の道の近くにある「藤野芸術の家」には木工・陶芸・ガラスの工房があり、予約なしで体験できる。週末に訪れるなら「藤野芸術の家」の入り口にある「ふじのアートヴィレッジ」にも立ち寄ってみるといい。藤野在住のアーティストやクラフト作家が広場にコンテナを並べ、作品を展示販売している。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン