若松南海岸
日本一の石炭積出港だった面影を残す海岸通り
昔の港町の景観に出合える海岸通り
響灘と洞海湾に囲まれた北九州市若松区は、石炭がエネルギーの主役だった明治時代から昭和時代の中頃にかけて、筑豊地方で産出された石炭の積出港として大いに賑わった。その最盛期の面影を残すのが洞海湾に面した若松南海岸通りだ。一帯にはかつての賑わいを伝える史跡や景観が残っており、レトロな街灯が立つ遊歩道が整備されている。散策を楽しみながら、1919年(大正8)に建てられた「旧古河鉱業若松ビル」をはじめ、歴史的な建物や1962年(昭和37)に竣工した「若戸大橋」を見ることができる。
若松興隆の原点といえるスポット
海岸通りを南側から歩いてみる。最初に目に飛び込んでくるのが「弁財天上陸場(べざいてんじょうりくば)」と「旧ごんぞう小屋(ごや)」だ。「ごんぞう」とは筑豊から運ばれてきた石炭を荷揚げし、若松港に横付けされた大型の船に荷下ろしする港湾労働者のこと。作業の際に利用されたのが弁財天上陸場で、当時の階段や敷石がほぼ復元されている。横に立つ旧ごんぞう小屋は港湾労働者の詰所だったものを北九州市が再整備。上陸場とともに、若松興隆の原点となっている。小屋の向こうに見える赤い橋が若戸大橋だ。洞海湾を挟み交通の便が悪かった若松と戸畑の間に架けられた全長2km余りの吊り橋で、日本で初めての長大吊橋として誕生。その壮大さから「東洋一の夢の吊り橋」といわれ、北九州の発展を支えた。2022年(令和4)には国の重要文化財に指定されている。
若松南海岸を象徴する旧古河鉱業若松ビル
旧ごんぞう小屋からさらに北へ歩くと左側に「石炭会館」が見えてくる。若松に現存する洋風建築としては最も古く、1905年(明治38)、若松石炭商同業組合の事務所として建てられた。左右対称のデザインが特徴で、1階左側の部屋にはクロワッサンが人気のベーカリーが入っている。この並びにあるのが若松南海岸を象徴する旧古河鉱業若松ビルだ。海岸通りとそこから鋭角に延びる路地にあわせて建てられているルネッサンス様式の2階建て建物で、先端に優雅な雰囲気の塔屋をもつ。1944年(昭和19)まで石炭関連の業務を行っていたが、入居者がいなくなったことで老朽化が進み、解体の危機に瀕した。これに対して保存活動が起こり、2004年(平成16)、観光施設・コミュニティホールとして新たに出発。近代化産業遺産に認定され、国登録有形文化財にも登録されている。その先には旧三菱合資若松支店として1913年(大正2)建築の「上野ビル」がある。建物はドイツから輸入したレンガが使われており、玄関部分など一部を除き、往年の姿をとどめている。なかに入ると2・3階部分が吹き抜けの回廊になっており、天井には当時からあるステンドグラスが残る。映画のワンシーンを見る思いがするが、実際ロケにも使われているという。ビル内の部屋は貸し出されており、雑貨店などが入居するテナントビルとして活用されている。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン
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