お好み食堂 伊東

目の前で焼きそばが仕上がっていく時間も楽しみたい

「富士宮やきそば」の歴史

富士宮市には古くから駄菓子屋の一角などで鉄板を使った、お好み焼きや焼きそばを提供する店が多くあり「洋食屋」と呼ばれ地域住民に愛されてきた。最大の特徴である水分が少なくコシの強い独特な麺は、冷蔵庫が普及する以前に食材を保存させるため考案されたものと考えられている。その後、この食文化に着目し、町おこしに活用しようと立ち上がった「富士宮やきそば学会」により、2000年(平成12)にブランド化。地域ならではの食文化を通じて地域PRを行う「B-1グランプリ」でグランプリを受賞すると、その知名度は全国区に。地元住民だけでなく全国にファンをもつ味として親しまれるようになった。

いちばん人気の「五目やきそば」並750円

モチモチ食感の麺と肉かすが最大の特徴

モチモチとした食感のコシのある麺が特徴的な「富士宮やきそば」。一般的な麺は麺を蒸したあとに茹でて仕上げるが、富士宮の場合は蒸しの工程後、茹でずに強制的に冷やすことで水分が少なくコシのある麺に仕上げている。もう1つの大きな特徴は、ラードの搾りかすを揚げた「肉かす」を具材に加えること。うまみがたっぷりと詰まった肉かすが味のアクセントになる。「富士宮やきそば」の特徴の定義は12項目あり、麺や肉かすのほか、富士宮産の高原キャベツを使用すること、いわしの削り節粉を添えることなども条件となっている。

ソースの味や量、キャベツの切り方、トッピングなどは各店のこだわりの見せどころ

大きな鉄板のある人気店「お好み食堂 伊東」

1975年(昭和50)創業の「お好み食堂 伊東」は、店主とお客が大きな鉄板を挟んで向かい合うスタイルの店だ。家族で営む昔ながらのアットホームな食事処で「富士宮やきそば」はもちろん、お好み焼きや鉄板を使った一品料理などを楽しめる。入り口を入ると大きな鉄板が2枚あり、それを取り囲むようにカウンター席と椅子が並ぶ。キャベツはもちろんネギなどの野菜は地元産のものを使用。麺によくなじむキャベツの切り方や、鉄板の火加減など基本にこだわる人気店だが、ソースの味の濃さなどの調節もしてくれる細やかな気配りがうれしい。週末には店外に行列ができることも。

大きな鉄板を囲むカウンター席のほか座敷席もある

目の前で食材をおいしく手際よく焼き上げてくれる

最寄り駅はJR身延線西富士宮駅。駅から離れているのでバスやタクシーが便利

ご当地グルメ「しぐれ焼き」にも注目

富士宮のご当地グルメとしてさらに注目したいのが「しぐれ焼き」。しぐれ焼きは焼きそばとお好み焼きをあわせたもので、店によって焼き方やトッピングが異なる。「お好み食堂 伊東」では、クレープのように薄く広げた生地の上に焼きそばを載せ、さらに生地をかけて裏返して焼くことで、焼きそばを内側に挟む形に仕上げる。生地と麺の異なるモチモチ食感がクセになる。人気の「五目しぐれ焼き」はイカ、肉、卵、椎茸、桜えびなど具材のうまみがアクセントとなり風味豊かな味わいだ。

薄く伸ばした生地の上に焼きそばや具材を載せて最後に生地をかける「しぐれ焼き」

しぐれ焼きメニューでいちばん人気の「五目しぐれ焼き」並800円