ボンネット

三島由紀夫、谷崎潤一郎、志賀直哉など昭和の文豪や著名人がお忍びで通った名店

熱海銀座商店街中ほどにある路地裏に入ると、姿を現したのは熱海を代表する老舗喫茶店「ボンネット」。戦後間もない1952年(昭和27)の創業当時から変わらぬスタイルで営業を続け、店内を照らす明かりや椅子、音楽など、すべてがどこか懐かしさを帯びた雰囲気に包まれている。1929年(昭和4)生まれのマスターと妻のおしどり夫婦で守り続ける店の看板メニューは「ハンバーガー」。戦後、店主が銀座の将校クラブで出合った味を、日本人好みにアレンジしたもの。バンズは何度も試作品を作り、小ぶりで食べやすく改良。パティの豚肉と牛肉の分量にもこだわりオリジナルの味を追求した。当時はハンバーガーを知る人も少なかったが、そのおいしさから、瞬く間に口コミで広がり大人気に。時の文豪・三島由紀夫や、伊豆山に別荘をもつ谷崎潤一郎にも愛された味を、今なお大切に守り続けている。1杯ずつサイフォンで淹れるやさしい味わいのコーヒーは、無類のコーヒー好きで知られる俳優・高倉健も愛し、魔法瓶で持ち帰ったという逸話が残るほど。昭和の時代から熱海を見守り続け、文豪が愛した純喫茶でノスタルジックな時間を過ごしてみては。

看板メニュー「ハンバーガーセット」はコーヒーとセットで900円

店内は昭和レトロな空間

ヨーロッパの伝統的な女性用帽子「ボンネット」を店名とロゴに使用