新杵菓子舗

和菓子

大磯に暮らす政治家や著名な作家たちに愛された菓子

1891年(明治24)から国道1号線沿い「さざれ石」交差点近くに店を構える「新杵」は、大磯を代表する老舗菓子店。創業から130年もの間、多くの著名人に愛されてきた和菓子は奇をてらわない素朴さが持ち味。

開業当時、今より西側にあった店舗は1938年(昭和13)国道1号線を通すために移築した} 開業当時、今より西側にあった店舗は1938年(昭和13)国道1号線を通すために移築した

由緒ある店舗は商家造りの建物

老舗の多い大磯のなかでも特に老舗の店は?と聞かれたら、多くの地元民は「新杵」と答えるだろう。古いが手入れの行き届いた入り口は観光客にはハードルの高いものだが、ためらわず扉を開けてみたい。扉の向こうは別世界。昔ながらの庄屋造りの建物は、太い梁がわたる高い天井や黒光りする年季の入った柱、戸棚には今は希少な大正ガラスがはめ込まれ、長い歴史を感じさせる。窓の桟(さん)の幅の狭さは江戸時代の名残で、入り口の正面に鎮座する高さ2mほどもある立派な鏡は明治時代からそこにかけられているという。和菓子を買いに訪れたというのに、その重厚なたたずまいに圧倒された。この店を伊藤博文、大隈重信、吉田茂などの政治家や、島崎藤村、獅子文六、安田靫彦などの文化人がひいきにしていたという。実はその昔、大磯に町屋園という貸別荘一帯があり、そこの大家が新杵だった。そのうちの1軒に作家、島崎藤村が暮らしていたのだが、そのしつらえもすばらしいので、今も当時のままを見学できる「旧島崎藤村邸」を訪れてみるのもおすすめだ。まるでタイムトリップしたかのようなレトロ空間のなか、気さくに応対してくれる女将とスタッフの心配りもうれしい。菓子についてだけでなく、まずは目の前に見える時代物の秤についてや、興味ある逸話など気になることを女将に聞いてみよう。大磯の歴史を肌で感じることができるかもしれない。

おいしそうなお菓子の数々と昔ながらの店内にわくわくする} おいしそうなお菓子の数々と昔ながらの店内にわくわくする

歴史にはぐくまれた和菓子は素朴な味わいが魅力

入り口を入ってすぐ、華やかな菓子が並ぶショーケースの中、一見地味とも思える和菓子2種が新杵の2大看板商品「虎子饅頭」と「西行饅頭」だ。新杵の代名詞「西行饅頭」は2代目店主が作り上げた銘菓。西行法師がこの地を訪れたときに詠んだ歌にちなんでその名が付けられた。旅笠を模した形に、味わいは洋風とも思える焼き饅頭。口の中で溶けていくなめらかなこし餡は北海道のあずきをていねいに漉し、卵と沖縄波照間産の黒糖を使った焼き皮で包んだ。塩を使わないあっさりしたまんじゅうに男性ファンが多いのも納得だ。「虎子饅頭」は創業時から作り続けられている初代考案の味。こちらはこし餡とほのかな塩味を感じるふっくらした皮が絶妙の蒸しまんじゅうで、大磯所縁の曽我十郎祐成と虎御前の物語からその名が付いた。客人に牙を見せないよう、焼き印が虎のうしろ姿になっているのもおもしろい。そのほか、現4代目店主考案による赤エンドウ豆とつぶ餡を使った「豆大福(160円)」はその味を絶賛するファンも多く、今後受け継がれていく新杵の看板商品の一端を担うだろう。

添加物をいっさい加えないシンプルな菓子。左/神奈川県指定銘菓にも選ばれた「西行饅頭」150円 右/初代考案の「虎子饅頭」150円} 添加物をいっさい加えないシンプルな菓子。左/神奈川県指定銘菓にも選ばれた「西行饅頭」150円 右/初代考案の「虎子饅頭」150円

新杵の看板は大磯のシンボル

風情あるたたずまいの新杵の外観でまず目をひくのはその大きな金看板だろう。幕末から明治にかけて活躍した書家、「明治の三筆」のひとり、巌谷一六による揮毫(きごう)だ。その堂々たる「新杵」の文字を見るたびに脈々と培われてきた老舗和菓子屋の歴史と、一店舗主義でていねいな菓子作りを貫いてきた誇りを感じずにはいられない。店内の大鏡の横にも看板があり、こちらも巌谷一六の書。外看板のシンプルな一枚板とは違い、こちらは鎌倉彫が施された華やかな一枚だ。大鏡を挟んで、看板の逆にあるのはシカゴ万国博覧会に出品したときの受賞の額。よく見ると「横濱市新杵」と書かれている。初代は横浜の「和洋菓子新杵総本舗」で修業をしたあと、暖簾分けで大磯に店を構えたのだが、壁に書かれた小さな文字からも新杵の歴史を垣間見ることができる。

店の片隅に置かれていても存在感たっぷりの金看板} 店の片隅に置かれていても存在感たっぷりの金看板

1893年(明治26)シカゴ万国博覧会に和菓子を出品したときの表彰メダル} 1893年(明治26)シカゴ万国博覧会に和菓子を出品したときの表彰メダル

お茶席に欠かせない、四季折々に楽しめる干菓子

新杵の味を堪能するなら「西行饅頭」「虎子饅頭」などの饅頭だろうが、店に入って釘付けにされるのはカラフルな干菓子の数々だ。女性なら必ずうっとり見入ってしまうだろう。小さくてかわいらしくて彩豊かな干菓子がこんなに並ぶショーケースはなかなかお目にかかれるものではなく、こちらは専門店からの取り寄せだというが、ゼリーや落雁など、関東でこれだけの干菓子を一堂に見ることはなかなかない。本来お茶席で使われる干菓子は意外にもコーヒーや紅茶にもよくあうので気軽にお土産に買ってみたい。いくつかセレクトされた箱入りもあるが、1つから選べるのでここは自分でセレクトしてみるのもいいだろう。女将曰く「ホワイトデーに贈られたら喜ばれること間違いなしです」とのこと。なかなか粋なプレゼントになるが、たくさんの種類の中からどのように組み合わせるか、贈る側のセンスが問われるかもしれない。

ショーウインドウに40種類ほど並ぶ。1つから購入可能だが、どれを選ぼうか迷ってしまう} ショーウインドウに40種類ほど並ぶ。1つから購入可能だが、どれを選ぼうか迷ってしまう

初夏に訪れた際に並んでいたのは涼やかなモチーフの干菓子} 初夏に訪れた際に並んでいたのは涼やかなモチーフの干菓子

スポット詳細

住所
神奈川県中郡大磯町大磯1107 map map 地図
エリア
湘南エリア
電話番号
0463610461
時間
8:30-16:00
休業日
火、水
駐車場
あり(店舗の前に2台)

情報提供: ナビタイムジャパン

クチコミ

  • 濃密な西行
    5.0 投稿日 : 2023.05.12
    外側は柔らかい生地ではなく密な舌触りで、故に中にたっぷりと詰め込まれた漉し餡の重さをしっかり支えています。それでいて平な形に抑えてあるので重すぎず、もう一個ほしくなります。重厚さと軽さのバランスの良さを吉田首相も気に入られたのでしょうか?昔の政治家はそうであったように。
  • 西行まんじゅう
    3.0 投稿日 : 2021.05.27
    昔ながらの和菓子屋さん。西行まんじゅうがお店の、大磯名物ということで購入。なんとなく、お饅頭って皮がやわらかい、温泉饅頭的なものを思い浮かべるが、ここの皮はひよことか、ままどおるとかああいう感じの皮。中がこしあん。自分は粒あんのほうが好みなのと、皮もあんまりひよことかああいう感じより上用饅頭系のほうが好みなのでというのもありますが。家族も、ふつうな感じのまんじゅうだねと特筆する感じがないので、万人...
  • 豆大福が最高
    5.0 投稿日 : 2020.05.14
    老舗のお菓子屋さんです。私はここの豆大福と桜餅の大ファンです。午前に行かないと買えない事が多々あるので要注意です^ ^桜餅は見ても楽しめる位に綺麗なお餅です。お餅が米粒状なところが特徴です。ここの大福にしても甘さが爽やかで後味がとても良いのが特徴です。

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