芸西村 伝承館
江戸時代から続く芸西村特産の「白玉糖」作りを体験できる
芸西村伝統の「白玉糖(黒砂糖)」作りを体験できる
高知市内から国道55号線を東へ約40分、右手に景勝地・琴ヶ浜が見えてくると芸西村。左前方に憩ヶ丘運動公園の白い体育館が見えるそばに、伝承館の日本家屋が立っている。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線「赤野(あかの)」駅から徒歩約20分、「和食(わじき)」駅からは徒歩約30分の距離だ。ここでは、1989年(平成元)に地元の有志が復活させた「白玉糖(黒砂糖)」作りを体験できる。黒砂糖といえば沖縄県が有名だが、高知県も昔からサトウキビ栽培が盛んで、農家では家庭で手作りした砂糖をお祝い事や法事のときに配っていた。芸西村でも砂糖作りが江戸時代後期から始まり、1945~1955年(昭和20~30)頃に最盛期を迎えるが、外国産の安価な白砂糖に押されて1970年(昭和45)頃には衰退してしまった。芸西村特産の黒砂糖には、水分を残して煮詰めた「白下糖」と、水分を飛ばした「白玉糖」の2種類がある。「白下糖」は和三盆の基にもなる含蜜糖で、スプーンで削れるぐらいやわらかいもの。「白玉糖」は白下糖をさらに煮詰めたもので、固形状で硬い。高知ではサトウキビの収穫時期は11月から12月で、本格的な白下・白玉糖作りは11月から1月にかけて行われるが、それ以外の時期は予約制で小さな鍋を使った白玉糖作りを体験できる。
11~1月なら本格的な製糖見学も
サトウキビの収穫時期なら、本格的な製糖作業も見学できる。サトウキビの収穫、機械での搾り体験、汁を煮詰める工程を見学する。釜は1番から3番まであり、荒炊きをして灰汁をとるところから煮詰めるところまで、どの釜を見られるかは製糖時期による。一度衰退してしまった白玉糖作りを復活させたのは、かつてこの地でサトウキビを栽培していた農家の人たち。60~80代の地元の有志で芸西村製糖組合を結成し、昔ながらの製糖技術を後世に伝えている。一般的な黒砂糖より色が白いのが特徴で、これは灰汁を全部取り除き、上澄みだけを煮詰めているから。ミネラルたっぷりだけどクセのないまろやかな甘みで、調味料としても、おやつ代わりにも重宝される。製糖見学は白玉糖のお土産付き。伝承館では、さまざまなサイズや形の白玉糖も販売されている。
再び脚光を浴びている「まんじゅう笠」
芸西村の伝統品にはほかにも「まんじゅう笠」と呼ばれる竹の子笠がある。真竹、土用竹、ハチクの3種類の竹を使った笠で、竹の骨組みに竹の子の皮を張り、極細の竹ひごを数mm間隔で縫い付けて作る。漁民が暑さを避けるために被っていたもので、漁民の副業として最盛期には約120軒で作られていたが、終戦後、東南アジアから安い帽子が輸入されるようになり衰退した。そんななか、現在唯一の作り手である宮崎直子さんの両親だけは笠作りをやめず、1967年(昭和42)頃の民芸ブームで全国から注目されることに。1989年(平成元)に芸西村伝承館を設立することが決まると、村は直子さんに笠作りを依頼。一時は生産が途絶えた笠作りを復活させた。饅頭のような見た目から「まんじゅう笠」と呼ばれ、やわらかい曲線を描いた丸みのある笠は、顔を隠すのにも都合よく、坂本龍馬が脱藩のときに被ったとも伝わる。細かい手作業で作られる笠は美術工芸品のようで、手に持つと驚くほど軽い。日傘のように大きく、かつ両手が空くため、近年、釣り人や農作業をする人に需要があるという。伝承館では、現在、お弟子さんたちが月に1回程度製作している。工房の壁には直子さんやお父さんが作った笠が飾られ、間近にその美しいらせん状の糸目を見ることができる。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン