旧伊庭家住宅
100年を超える時を紡ぐ、洋と和の美が溶け合うヴォーリズ建築
安土村長を務めた伊庭慎吉の住まい
JR東海道線安土駅から徒歩約6分。南方に直進し、住宅街を抜けると左手に異彩を放つ洋風の邸宅が現れる。旧伊庭家住宅は、1913年(大正2)、ヴォーリズの設計により建てられた木造住宅。漆喰の外壁にベンガラ塗りの化粧梁をめぐらせたハーフティンバー様式の洋館建築の主体部と、純和風の玄関からなる。発注者は、住友の2代目総理事で別子銅山の煙害問題を解決したことで知られる伊庭貞剛(いばていごう)。居住者は、近くの沙沙貴(ささき)神社の宮司を経て2期にわたり安土村の村長を務め、画家でもあった四男の慎吉夫妻。現在は建物の保存・継承に取り組む団体と近江八幡市が管理している。開館は夏季と年末年始を除く木~日曜と祝日で、木・金曜の場合は予約が必要だ。
和風を基調とした1階
建物は屋根裏付き2階建ての10LDKで、1階は書院風の和室が中心。各部屋を結ぶ廊下は、数寄屋風の網代天井となっている。「近江八景図」を飾る和室の襖(ふすま)に描かれた菜の花と朧月(おぼろづき)の『春の図』、ゲストルームから見る襖の裏側に描かれた『秋の図』、風趣に富む2つの襖絵は必見。ほかにも船底天井や階段を利用したクローゼット、欄間、花頭窓(かとうまど)、ガラスのカッティングなど、どの部屋も細部まで工夫が凝らされており、随所に職人技が光る。可動式の八角形のテーブルを据えた食堂の壁面には野石積みの暖炉が設けられており、暖炉下のタイルはオリジナルで今はもう手に入らない貴重なもの。画家であった慎吉が各界の芸術家と親交があったことから、各部屋には友人から贈られた手紙や書、絵画など多くの愛蔵品も残っており、見逃せない。
洋風が基調の2階へ
慎吉のアトリエや書斎、寝室、板間部屋のある2階は洋風が中心で、建具や天井に和風を取り入れている。階段を上って左手、慎吉のアトリエの引き戸は何処からか譲り受けたという屋久杉の一枚板で、階段側は岩と滝、部屋側にはソテツの絵が描かれている。ベランダから外に出ると、伊庭家に関連する近江守護職・六角氏が城を築いた観音寺山や、のどかな安土の風景が一望できる。ここではスレート葺きの屋根にも注目。硯石にもなる天然の玄昌石が使われており、急勾配の屋根葺きに挑んだ職人たちの技と苦労が垣間見える。洋風を軸に和風を巧みに取り込んだ旧伊庭家住宅。20数棟のヴォーリズ建築が残る近江八幡中心部からは少々離れているが、ひと足延ばしてでも一見の価値がある。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン
クチコミ
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- 市の歴史的文化財でおしゃれです。
- 市の歴史的文化財でおしゃれな建物です。内部にはシャンデリアもあれば襖もある、和洋が一体となった美しい館です。
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- 近江八幡市内で鑑賞出来る《ウォーリス建築》として 内部まで鑑賞出来、写真撮影可能と言う意味で価値ありです
- 近江八幡市内で開催された《ウォーリス建築めぐり(9月14日-10月14日の17日間)》に合わせ 訪問し、[ウオーターハウス記念館][アントリュース記念館][ウォーリス記念館]と[伊庭家住宅]4軒の《ウォーリス建築》を鑑賞しました。他の3邸宅は 内部鑑賞出来るものの 見学範囲が限定されていたり、写真撮影禁止 などの制限あるのに対し こちらは基本的 邸宅内のほとんどの場所を鑑賞出来る上に...
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- 木造建築の洋館
- 建築家のヴォーリズの設計したお洒落な三階建ての洋館です。庭が小さいのが残念ですが、素敵な建物でもっと注目されて良いと思います。
TripAdvisorクチコミ評価
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