蒲焼 國よし
江戸時代に始まった大磯が誇るうなぎの名店
歴史に名を残す著名人から愛されたうなぎ専門店
うなぎの名店「國よし」の敷居をまたぐとき、少なからず躊躇してしまった。それもそのはず、江戸時代から続く「國よし」の客の顔ぶれがあまりにも華やかで、ちょっと恐れ多かったのだ。江戸幕府最後の征夷大将軍、徳川慶喜も訪れたことがあったという。明治以降は伊藤博文、吉田茂といった歴代総理大臣や政財界の常連客も多く、特に吉田茂はダイニングの椅子席にお気に入りの定番席があるほどに「國よし」をひいきにしていた。また昭和天皇などの皇族や、島崎藤村、獅子文六をはじめとする文化人からも「國よし」のうなぎは愛されてきた。白洲正子は明治・昭和の激変期においても、店構えを変えることなく暖簾を守り続けた「國よし」のその姿勢をも絶賛している。そんな「國よし」とはどんな店なのか、どきどきしながら引き戸を開いた。
18代続く老舗中の老舗
「國よし」は1803年(享和3)に店を構えるが、当時は食事付きの宿屋「國吉屋」として旅人をもてなす旅籠だったという。東海道五十三次の8番目の宿場町として大いに栄えた大磯に店を構えて18代。「國吉屋」は江戸時代末期にうなぎ専門店「國よし」にシフトしながら、東海道が国道1号線に変わったあとも少しずつ店舗の改装を重ね、変わらず大磯の地で年輪を刻んできた。うなぎ専門店としては現在、3代目。座敷のある2階に上がる階段や玄関脇の厨房に昔の面影を残しながら、2階には畳敷きが苦手なご年配や海外からの客への配慮から椅子席を設け、椅子席から近いトイレを真新しくして使い勝手をよくするなど、必要なところをリニューアルしてきた。そうかと思えば、古い造りのトイレに当時を懐かしむ客も少なからずいて、1階のトイレはあえて昔のままに。料理だけでなく普通は気にもとめない空間にまでこだわるのが老舗のさりげない気配りなのだろう。
焼き上がるまでの時間も楽しむ
焼き上がりの時間は30~40分ほど。焼き置きなどいっさいせず、注文を受けてからさばき始める。「待つ」のも、うなぎをおいしくいただくための大切な時間だ。待っている間、店の調度品や内装をゆっくり鑑賞しよう。さりげなく置かれた床の間の器、見事なデザインの丸窓障子、屏風絵、長押(なげし)にかけられた日本画や書など、辺りを見回して目に入ったものを見ているだけでもあっという間に時間は過ぎていく。今回は車で来店したので断念したが、うな重を待つ間に酒をたしなむのもおすすめだ。肴はとろけるような卵焼きと、常連客に人気のうなぎの肝焼き。「國よし」の肝焼きは新鮮なので臭みもなくぷりぷりとした食感がクセになり、肝が苦手な人をも虜にするという。「次回は必ず一献傾けよう」と既に次回を考えていると、そろそろお腹も空いてくる頃合いだ。俄然うなぎを食べるのが楽しみになってくる。
噂にたがわぬおいしさに舌つづみ
楽しみにしていたうなぎが丸重で運ばれてきた。丸重は「國よし」に代々受け継がれてきた輪島塗。うなぎといえば四角い重箱か陶器の丼でしか食べたことがないので、このような丸い漆器のうな重を見たのは初めてだ。お重は当時の絵柄をそのまま生かすために塗り直しを重ねながら大切に使われてきたという。輪島塗の生産地、石川県の輪島市でも「國よし」の器の形はもう見ることのない貴重なものだ。この器でいただける特別感にわくわくしながら蓋を開け、いざ、実食。備長炭で焼き上げた焦げ目も美しいうなぎは大きくて肉厚だ。ひと口食べてみると香ばしい香りとともにふわっとやわらかいうなぎの旨みが口いっぱいに広がった。きりっと切れ味のあるタレも絶品。決して甘過ぎず、深みがあるのにサラリとした江戸前のタレは、江戸末期から無添加の厳選素材を継ぎ足してきたもの。昔は近くの相模川で獲れた天然うなぎを使っていたが、時代とともに河川では見かけなくなり、現在使用するうなぎは九州に専用池を設けて育てている。6か月程度で出荷される養殖ものとは違い、エサにこだわり、いっさいの薬品を使わず、2年以上ていねいに時間をかけて育てた国内最高級のうなぎはとろけるような味わいだった。
今回いただいた「特選うな重定食」には地元の無農薬野菜を使った香の物や静岡産マスクメロンなど、こだわり食材が使われていた。実は「國よし」のお吸い物は肝吸いでなく、三つ葉、そうめん、才巻海老が入ったお碗。肝は肝焼きに使用するからという理由でお吸い物に使われないが、才巻海老のお吸い物も「國よし」でしかいただけない上品なものだった。老舗の高級店でありながら、懐かしい日本家屋のたたずまいや美人だけれど気取らない女将の所作にほっとさせられ、お腹も気持ちも大満足で店をあとにした。入ってきたときの緊張感もどこへやら、帰り際、引き戸をガラリと閉めながら「できりゃあ毎日喰いてぇなぁ」なんて思わず江戸ことばでつぶやきたくなる、そんな粋が似合う店だった。
スポット詳細
- 住所
- 神奈川県中郡大磯町大磯1085 地図
- エリア
- 湘南エリア
- 電話番号
- 0463610423
- 時間
- 11:30-15:00
- 休業日
- 水、木
- 駐車場
- あり(5台)
- クレジットカード
- 可(VISA、MasterCard、JCB、AMEX、Diners Club)
- 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- Wi-Fi
- なし
- コンセント口
- あり
- 喫煙
- 不可
- 平均予算
-
【昼】10,000円以上
【夜】10,000円以上 - 滞在目安時間
- 60-120分
- 車椅子での入店
- 可
- 乳幼児の入店
- 可
情報提供: ナビタイムジャパン
クチコミ
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- 歴史を感じるお店で、大変美味しい鰻がいただけます。
- もとは國吉屋という旅籠で200年以上の歴史があるお店です。うなぎ専門店になってからは三代目だそうです。初代総理大臣、伊藤博文も通ったそうです。天然に近い鰻を使って料理を提供しています。特選うな重とうな重は、全く別物だ祖王ですので、せっかくだから特選にしました。マスクメロン、車海老のお吸い物 香の物が付いた特選うなぎ重定食です。肝焼きは2本あります。辛口タレで弾力がしっかりあります。特選うな重は輪島...
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- 日本一の鰻屋さん
- 湘南界隈では知る人だけ知っているお店です。国道1号線沿いにあり、古民家でひっそりと建っているのですが、目立つのか、目立たないのか、不思議なお店、そして、時の総理大臣、伊藤博文さん、吉田茂さん等が利用したお店、非常に歴史を感じるお店です。それは、お店の中に入ってわかります。掛け軸、食器、お椀すべてについて、高級感、歴史を感じました。うな重は丸い丼ぶりに載ってでてきました。いやあ、実にやわらかいです...
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- 鰻は絶品ですが、再訪は躊躇します
- 日本一高い鰻屋です。東京あたりの名店の2-3倍はします。特選うな重定食(お吸い物・香の物・マスクメロン)で12000円に昼でもサービス料が15%も付きます。鰻重単品でも9000円ほどします。こだわりの鰻は文句なしに美味しいですが、サービス料15パーセントをとられるほどのサービスはありません。二人で30000円払う客でも、玄関までお見送りもないです。狭い店で、他に客が一組しかなく、忙しくもないは...
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