三鷹市山本有三記念館

記念館

作家・山本有三が愛した、大正ロマンを今に伝える洋館

大正から昭和にかけて作家として活躍した山本有三が、約11年間にわたって家族と暮らした家。現在は有三の生涯や功績を紹介する記念館として公開され、常設展示や企画展示のほか、朗読会やコンサートなどのイベントも開催している。

大正末期に建てられた本格的な洋風建築。三鷹市有形文化財に指定されている} 大正末期に建てられた本格的な洋風建築。三鷹市有形文化財に指定されている

緑と水に囲まれてたたずむ洗練された建物

JR三鷹駅南口から井の頭公園方面へ向かい、「風の散歩道」と呼ばれる玉川上水沿いの遊歩道を進むと、右手にしゃれたたたずまいの洋館が現れる。山本有三が1936年(昭和11)から1946年(昭和21)まで暮らした家だ。ユニークな形の屋根と煙突が印象的な建物は、大学教授や商社役員などを務めた清田龍之助の住まいとして、1926年(大正15)頃に完成したもの。アメリカ生活の経験があり、関東大震災を体験した清田は、都心部を離れた郊外に鉄筋コンクリート構造を取り入れた堅牢な住宅を建設した。清田が実業界を退いたのち手放し、新しい住まいを探していた有三が土地と建物を購入。母ナカと妻はな、4人の子どもたちとともに移り住んだ。玉川上水と武蔵野の緑に囲まれた静かな環境をとても気に入っていた有三は、この家で代表作『路傍の石』や戯曲『米百俵』を執筆するとともに、自らの蔵書を利用して「ミタカ少国民文庫」を開いた。

有三が仕事部屋として使っていた2階の洋室書斎} 有三が仕事部屋として使っていた2階の洋室書斎

国民的作家として活躍した山本有三

記念館の前庭に立って、建物を見上げてみよう。外壁に使われているのは、細い溝の模様がついたスクラッチタイル。煙突の基部に積み上げられた大谷石とのコントラストが印象的だ。重厚な木製のドアを押して中に入ると、右手に暖炉と長椅子が設えられた小さな空間がある。スコットランド古語で「暖かく居心地がいい場所」という意味の「イングルヌック」と呼ばれ、有三一家の団らんの場や来客の控え室として使われた。

居心地がよさそうなイングルヌック。19世紀後半にイギリスで流行したスタイル} 居心地がよさそうなイングルヌック。19世紀後半にイギリスで流行したスタイル

テラスに面した南側は、応接間と食堂だったところだ。応接間には装飾が立派なレンガ造りの暖炉が、また食堂にはスクラッチタイルを使った暖炉があり、それぞれデザインも個性的。旧応接間には山本有三の生涯が紹介されている。1887年(明治20)に現在の栃木市で生まれた有三(本名・勇造)は、劇作家として名をなし、『女の一生』や『真実一路』など多くの小説を執筆するとともに、先駆的な子ども向けの教養書シリーズ『日本少国民文庫』の編さんも手がけた。戦後は参議院議員としても活動し、国語国字問題に尽力するなど、マルチな才能を発揮する人物だった。

1階西側の旧応接間。アーチ状の梁や寄木細工の床などさまざまな意匠が施されている} 1階西側の旧応接間。アーチ状の梁や寄木細工の床などさまざまな意匠が施されている

1階南西にある「長女の部屋」。建築当初は半屋外のサンルームのような場所だった} 1階南西にある「長女の部屋」。建築当初は半屋外のサンルームのような場所だった

有三ゆかりの貴重な品々を見学する

2階には有三が仕事部屋として使っていた洋室と和室がある。洋間を数寄屋(茶室)風に改築した和室書斎は、ガラス戸の内側に障子戸が設えられ、執筆に適した明るさに調節できるようになっている。書斎の上部には屋根裏部屋があり、子どもたちの遊び場にもなっていたという。奥の東側の部屋は、南側を妻はな、北側を次女と三女が使っていた。現在は有三の作品をはじめ、メガネや万年筆など愛用の品が展示され、有三の人となりがしのばれる。

階段のステンドグラスにも注目。さまざまな様式が融合した建築物は一見の価値あり} 階段のステンドグラスにも注目。さまざまな様式が融合した建築物は一見の価値あり

有三が愛用した背広と革靴、三鷹時代に使用していたと伝わるチェストも展示されている} 有三が愛用した背広と革靴、三鷹時代に使用していたと伝わるチェストも展示されている

戦中7回にわたる空襲でも戦火を免れた三鷹の家だったが、進駐軍に接収されることになり、1946年(昭和21)11月に有三はやむなく転居する。5年後に接収が解除されたのちは、国立国語研究所三鷹分室として、また「有三青少年文庫」として利用された。有三は接収後この家に戻ることはなかったが、「もし、家を接収されなかったら、私も市民として、三鷹にとどまっていたことであろう。三鷹に住んでいたのは、十一年ほどだが、三鷹は私にとって忘れがたい土地である」(三鷹市報「三鷹の思い出」)と語っている。

南側の有三記念公園から見た記念館。公園は無料で開放され、四季折々の自然を楽しめる} 南側の有三記念公園から見た記念館。公園は無料で開放され、四季折々の自然を楽しめる

スポット詳細

住所
東京都三鷹市下連雀2-12-27 map map 地図
電話番号
0422426233
時間
9:30-17:00
休業日
月、年末年始(12/29-1/4)、月曜日が休日の場合は開館し、翌日と翌々日休館
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
平均予算
【昼】1-1,000円
滞在目安時間
30-60分

情報提供: ナビタイムジャパン

クチコミ

  • 今の時代にも色褪せない魅力的な建物
    4.0 投稿日 : 2021.02.20
    JR三鷹駅南口から”風の散歩道”を通って、徒歩12分程度の住宅街にある。「路傍の石」の作者である山本有三が家族と共に住んだ家。大正時代に建てられた和洋折衷の洋館で、今の時代にも色褪せない魅力的な建物で庭園も素晴らしく、武蔵野に溶け込むデザイン。 女性スタッフの知識が素晴らしく、質問にも適切な対応で、詳しく説明して頂きました。
  • 洋と和が融合
    4.0 投稿日 : 2020.03.23
    外観は洋風の建物で1階は暖炉や居間がありましたが、2階には和室もありました。きれいな庭もあるので外も忘れずに見学オススメです。
  • 玉川上水沿いにあるユニークな洋館の記念館
    5.0 投稿日 : 2019.11.06
    大正から活躍した作家・山本有三氏(戦後には国会議員にもなった)が昭和11年から住んでいましたが、戦後、進駐軍に接収になった家です。3つの暖炉と煙突が特徴的なデザインの建築。中の資料だけでなく建築も楽しめる記念館です。JR三鷹駅から玉川上水沿いに吉祥寺方面に10分ほど歩くとこの洋館が見えてきます。門の前には大きな路傍の石も置いてあります。

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アクセス

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最寄り

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