大三東駅前

日本一海に近いフォトジェニックな駅

有明海にぴたりと寄り添うようにたたずむ島原鉄道「大三東(おおみさき)駅」。空と海の境界線がわからないほど、まぶしいくらいの青が視界いっぱいに広がり、ホームには黄色いハンカチがたなびく。そんな美しい光景を求めて全国から観光客が集まる話題のスポットへ。

ホームに設置されたベンチも人気の撮影スポット

諫早駅から島原港駅まで、約43kmを結ぶ「島原鉄道」。「しまてつ」の愛称で長年親しまれ、島原城や武家屋敷などの観光地が点在する島原へのアクセスに便利だ。青い海、雄大な山々、のどかな田園風景。窓の外に広がるノスタルジックな景色を眺めながら、ローカル線に乗ってのんびり移動するのも旅ならではの醍醐味ではないだろうか。なかでも日本一海に近い駅といわれる「大三東駅」は、SNS映えすると近年人気を集めている。その美しさは大手飲料水メーカーのCMなどでも起用されるほど。自動販売機でそのドリンクを買って、「なりきり」ポーズで写真を撮ったりすることもできる。無人駅ながら、この駅を目当てに訪れる観光客が後を絶たない。

地域住民の足として長年親しまれている大三東駅

一両編成の黄色い車体からホームに降り立つと、頬をなでるやわらかな風。背後に広がるのは波穏やかな有明海。屋根や柵すらない、かなりの開放感だ。のんびりたたずんでいるだけで不思議と肩の力が抜けていく。これほどまでに海と隣接した駅は珍しく、海の上に浮かんでいるかのよう。背伸びして深呼吸をすると磯の香りがふわりと鼻をくすぐる。まるで映画のワンシーンのような、物語が始まりそうな予感に胸がときめく。また有明海は潮の干満の差が日本一。その差はなんと6mもあるという。潮が引くと遠浅の干潟を、潮が満ちると豊かな水をたたえた姿に。海と一緒の風景を狙って撮影するのであれば、事前に潮位をチェックしてから出かけることをお忘れなく！

日本一海に近いとされる、下り(島原港方面)の海側のホーム

この駅をよりフォトジェニックにしているのが、潮風にたなびく黄色いハンカチ。これは「幸せの黄色いハンカチ」と呼ばれ、願い事や大切な人へのメッセージなどが書かれている。海の青と黄色のコントラストがなんともドラマチックだ。ハンカチは海側のホーム待合室にあるカプセル自動販売機で販売。中にはハンカチと入場券が入っている。メッセージを書く油性マジックや入場券用のスタンプなどもしっかりと用意されているのでご安心を。また「しあわせの駅ノート」も置かれており、大三東駅を訪れた感想や旅の思い出などをメッセージとして残すこともできる。ハンカチは願いが届くよう一定期間、空高く掲げたあとは神社へと奉納。幸せを祈願してくれるという心遣いもうれしい。

思い思いのメッセージを書いてホームに掲げよう

「幸せの黄色いハンカチセット」500円。写真のおみくじタイプのほかに、スタンプタイプもある

大三東駅は島原駅から3つ目。島原観光にプラスして立ち寄るのにもぴったりだ。上り下りともに朝夕は1時間に2本ほど、昼間は1時間に1本ほどが停車。鮮やかな黄色いボディも青い海の背景に見事に映える。またこの路線を運営する島原鉄道では、企画列車として週末を中心に「カフェトレイン」も運行。2か月ごとにメニューが替わり、ランチコースとスイーツコースの2タイプを用意。レトロな雰囲気の列車に揺られながら、島原半島の名物スイーツや食事などを楽しむことができるという。もちろん、大三東駅での撮影時間や黄色いハンカチへの幸せ祈願も行程にたっぷり含まれている。片道2時間ののんびり旅が、思い出をぐっと豊かなものにしてくれそうだ。

1両編成のかわいい車体。島原鉄道の15車両のうち12両にこの黄色い車両が使われている