しまばら火張山花公園

赤、白、ピンクとカラフルに咲き誇る約500万株のポピー

ダイナミックな自然の営みに圧倒される

島原半島のほぼ中央にそびえる雲仙普賢岳は、この土地で暮らす人々の絶対的なシンボル。1990年(平成2)には5年にも及ぶ噴火活動を再開。この噴火によって出現したのが日本でいちばん新しくできた「平成新山」だ。その高さは1359mの雲仙普賢岳を上回る1483m。山肌には今もなお火砕流の跡がはっきりと残り、その迫力や自然の脅威を実感することができる。その一方でさまざまな恩恵ももたらしてくれる。地球の成り立ちがわかる地形や地質。こんこんと湧き出る、美しく清らかな水。ほっこり癒やしてくれる温泉もある。そんな自然のリズムに寄り添いながら、火山とともに生きる暮らしが息づいている。耳をすませば大地の鼓動が聞こえてきそうだ。

火口から湧き出た溶岩が冷え固まってできた平成新山が背後にそびえる

桜の開花を皮切りに春が色づいていく

雲仙普賢岳の噴火災害時に市民を守るために指定された砂防地を活用し、2012年(平成24)に整備されたのが「しまばら火張山花公園」。2018年(平成30)に「しまばら芝桜公園」から名称変更した。ちなみに公園の名称である火張山とは、200年ほど前の噴火の際、役人が火の様子を見張っていたことから名付けられたこの辺りの地名なんだとか。目の前に平成新山を望む公園の広さは約10万平方メートル。毎年、3月下旬-5月中旬にかけて、桜・菜の花・ポピーが次々に美しい花を咲かせていく。例年の見頃は、桜が3月下旬～4月上旬、菜の花が3月下旬～4月中旬、ポピーが4月下旬～5月中旬。「まるで天国みたい」と感動のあまりに涙ぐむ人もいるという。その姿をひと目見ようと、長崎県内外から多くの人が足を運ぶ花の名所となっている。

桜のピンクと菜の花の黄色のかわいい共演も見もの

手作りのピンクのドアは人気のフォトスポット

秋に咲く珍しいヒマワリとコスモスの共演

秋にはコスモスとヒマワリが訪れる人の目を楽しませる。例年の見頃はともに10月上旬～11月中旬。同じ時期に花が咲くよう、タイミングを見計らいながら8月に種まき。この地はもともと火砕流で焼け焦げて更地になった場所。土に堆肥を混ぜて耕し、梅雨が開けたら除草し、花が咲く土台をしっかりと整えなければならない。こうしたていねいな管理があってこそ、美しい花を楽しむことができるのだ。コスモスは大輪の花を咲かせる品種を選び、なかには直径12cmほどになるものもあるという。また夏のイメージが強いヒマワリだが、この公園では秋に満開を迎える。1000万本のコスモスと6万本のヒマワリの取り合わせは圧巻のひと言。花畑のなかには遊歩道が整備されており、目線を下げれば、まるで花の波が押し寄せるかのよう。いろいろとアングルを変えながら、ベストショットを狙おう。

色とりどりのコスモスが秋の訪れを告げる

色鮮やかなヒマワリは見ているだけで元気がもらえそう

季節の花を楽しんでもらうための工夫がいっぱい

花の見頃にあわせ、毎年春と秋に「春の花まつり」「秋桜まつり」をそれぞれ開催。ハンバーガーやクレープ、ソフトクリームなどのキッチンカーが出店し、さらなる賑わいをみせる。祭り終了の2日前には見物客にハサミを貸し出し、切り花を持ち帰ってもらう無料のサービスも好評だ。園内はとても広く、ひと回りすると約1kmにも及ぶ。そのためスニーカーなど歩きやすい靴で出かけるのがおすすめだ。随所に手作りのベンチが設置されているから、座って花を眺めたり、飲み物を飲んだり。ひと休みしながらのんびりと園内を散策しよう。また公園は高台に位置するため、眼下に島原市街地が広がる展望スポットでもある。島原城や穏やかな有明海、その奥に連なる阿蘇の山々などの眺めも一緒に楽しむといい。

5層の天守閣を有する島原城などを一望できる