近代化産業遺産 三津谷の登り窯

その他の史跡/建造物

独特な風合いのレンガを作り出した登り窯

喜多方の独特な街の雰囲気をつくり出している喜多方レンガ。表面に釉薬(ゆうやく)が塗られているため、レンガが輝いているように見える。この喜多方レンガを作り続けたのが、喜多方市郊外の三津谷(みつや)地区にあるこの登り窯だ。

登り窯のシンボル的なレンガ造りの煙突。建屋の周りには薪に利用するアカマツを乾燥させている} 登り窯のシンボル的なレンガ造りの煙突。建屋の周りには薪に利用するアカマツを乾燥させている

見る人の目をひきつける美しい喜多方のレンガ

喜多方は「蔵の街」といわれ、たくさんの蔵があるが、独特な色彩を放つレンガ造りの蔵は見る人の目をひきつけるほど美しい。レンガは蔵以外に、塀、煙突、トンネルなど、街のさまざまなところに使われ、独特の景観をつくり出してきた。この喜多方レンガの魅力を生み出しているのが、この三津谷の登り窯だ。喜多方レンガの最大の特徴は表面に釉薬(灰汁)がかけられていること。登り窯の創始者、樋口市郎が寒い冬でも耐えられるよう、凍害を防止し劣化を防ぐために考案したものだ。基本的にはアースカラーで、周りの景色に溶け込みやすいが、同じ茶系でも一つひとつの色が微妙に違い、季節、時間、天気、光線の加減によってさまざまな表情を見せ、見飽きない。また、レンガの長手(長い面)だけを見せる段と小口(短い面)だけを見せる段を交互に積み上げる「イギリス積み」と呼ばれる組み方も、レンガ造りの建物を美しく見せている。さまざまな要素が組み合わさり、手作りの独特な風合いのレンガは喜多方の景観になじんでいるといえる。

薪を燃料にして焼くため、釉薬のかかり方によってレンガの色がさまざまに変化する} 薪を燃料にして焼くため、釉薬のかかり方によってレンガの色がさまざまに変化する

約80年間燃え続けた登り窯

三津谷地区(現在の喜多方市岩月町周辺)は良質な赤土と燃料に最適なアマカツがそろっており、この登り窯は1890年(明治23)に7段の瓦窯として造られたという。当初は屋根瓦の生産が主だったが、1904年(明治37)の岩越(がんえつ)鉄道(現在のJR磐越西線)の喜多方延伸工事などにともない、建設資材としてレンガの需要も増えてきた。そのため、大正時代に10段の登り窯に増築し生産体制を整えていった。最盛期には喜多方近隣でもこの窯を含め、4つの窯が創業していたそうだ。しかし、昭和時代になると、レンガや瓦の需要が減り、廃業に追い込まれた。最後まで残ったこの登り窯も1970年(昭和45)の生産を最後に廃業となり、そのままの姿で残されていたという。この登り窯がよみがえったのが、2007年(平成19)に経済産業省から近代化産業遺産として認定を受けたことだ。翌年には有志で窯を「活きた産業遺産」として保存を図るべく、プロジェクトを組んで保存に努めた。2011年(平成23)の東日本大震災で窯が崩れる被害に遭ったが、2013年(平成25)には継続保存を目的に「喜多方煉瓦會」を発足させ、レンガの焼成技術の伝承、登り窯の修復等に力を入れている。

大きさに驚かされる10段構えの登り窯。幅は5.2mもある} 大きさに驚かされる10段構えの登り窯。幅は5.2mもある

窯のアーチ部分の型。これが残っていたため、登り窯を修復、再現できたそうだ} 窯のアーチ部分の型。これが残っていたため、登り窯を修復、再現できたそうだ

「活きた産業遺産」として動態保存されている登り窯

登り窯の見学は予約制(喜多方煉瓦會ウェブサイトhttp://www.kitakata-renga.jp/)で、担当者がていねいに説明してくれる。窯は階段状で、窯のいちばん下に火の神を祀った神棚が祀られている。年に数回、実際に火入れをしてレンガを焼くが、その際には安全祈願や火入れの成功を祈り、必ず参拝するという。レンガの制作でいちばん難しいのは火入れだという。レンガが割れないように、12時間かけて1房(窯の部屋)全体の温度を800℃に予熱する。そして、房の温度が1200℃以上になるように15分おきに内部を確認しながら薪をくべていく。使用可能な6房目まで同じ作業を繰り返すと3日3晩かかるそうだ。焼き上がったら密閉状態で10日から2週間かけて熱をとり除く。1回の火入れで5000~6000本のレンガが完成するという。

実際に窯の火入れを行っている喜多方煉瓦會の加藤裕之(かとうひろゆき)さん} 実際に窯の火入れを行っている喜多方煉瓦會の加藤裕之(かとうひろゆき)さん

房の中でレンガを焼く様子を再現。1房で焼けるレンガは約1000本} 房の中でレンガを焼く様子を再現。1房で焼けるレンガは約1000本

火入れ時は窯を開けられないので、状態を確認するためののぞき窓が付いている} 火入れ時は窯を開けられないので、状態を確認するためののぞき窓が付いている

試行錯誤を繰り返し製品化へ

三津谷の登り窯は窯場の維持・管理のほか、レンガの復活生産を行いながら、現在も窯の火を絶やすことなく使用されている。そのため、現在では日本で唯一稼働できる登り窯ともいわれている。レンガの復活にはさまざまな苦労があった。再生プロジェクトが立ち上がった当時は、レンガを焼いても釉薬が粘着し理想のレンガにならなかったり、割れて破損したりと失敗の連続だったという。それでも焼き方を研究して、徐々に伝統的な風合いを出すレンガを焼けるようになり、2013年(平成25)にはグッドデザイン・ベスト100にも選ばれるなど、レンガ造りの技術も上がってきている。復活したレンガは長辺210mm、短辺100mm、高さ60mmと一般的なJISサイズだが、重さは約3kgとずっしりとしている。そのため重厚感があり、蔵はもちろん、喜多方市内各所の修景用としても利用され、喜多方の大切な地場特産品として注目を集めている。

登り窯、喜多方レンガの再生と継続を評価され、2013年(平成25)度グッドデザイン賞に選出された} 登り窯、喜多方レンガの再生と継続を評価され、2013年(平成25)度グッドデザイン賞に選出された

スポット詳細

住所
福島県喜多方市岩月町宮津字火付沢3567-2 map map 地図
電話番号
0241235004

情報提供: ナビタイムジャパン

アクセス

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最寄り

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