福島
喜多方
KITAKATA
多種多様な蔵が建つ農民と商人の町。ラーメンも大人気!
福島県西部、会津若松の北にあり、市街地は広大な田園に囲まれている。東に奥羽山脈、西に豪雪で知られる飯豊(いいで)連峰に囲まれた扇状地で、豊かな伏流水と土壌に恵まれ、古くから稲作が行われてきた。また米沢と新潟をつなぐ街道筋に位置するため交易が盛んで、商人の町としても栄えた。江戸時代になると良質な水と米から酒が造られるようになり、温度湿度が安定した蔵での醸造が始まる。やがて醤油や味噌の醸造、養蚕業、漆器業の作業場としての蔵も増えた。1880年(明治13)、喜多方は大火に見舞われる。約300棟が灰と化した焦土に蔵だけが残る光景は、蔵の価値をさらに高めることとなり、住宅用の蔵など約4000棟が建つにいたった。素材も形も個性的でふたつと同じデザインがないのが特徴だ。喜多方はまたラーメンでも有名で、早朝から営業している店が多い。夜勤明けの工場作業員のために始まったといわれる「朝ラー」体験もおもしろい。
エリアの見どころ
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旧甲斐家蔵住宅
- 土蔵の中に洋間もある、「蔵のまち」で最も贅を尽くした蔵の住宅
- レトロ横丁商店街の国道459号の交差点から北へ200mほど歩くと、2階の窓に重厚な観音開きの扉をもつ建物が見えてくる。「蔵のまち」喜多方でもひときわ目立つ蔵が、旧甲斐家住宅だ。当時の最高級の建材と職人の技を結集し、7年の歳月をかけて1923年(大正12)に完成した。甲斐家は酒、麹、味噌、醤油の醸造で財を成した豪商で、建造費用は約40年前の試算で5億円相当というから、どれだけ突出していたかがうかがえる。黒漆喰の壁は喜多方でも珍しく、1階には店舗と応接間、2階には座敷がある。2つの階をつなぐ洋風のらせん階段は1本のケヤキの大木から作られたもので、柱もなく、釘も使われていないというから驚きだ。座敷蔵は上段の間、下段の間、廊下を合計すると51畳になる。ほかにも2階窓まわりの細工や小さいながらも美しい池泉回遊式にも注目を。戦時中、非公開の地下室で西洋文化を楽しんでいたこともあったと伝えられている。
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旧甲斐家蔵住宅
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大和川酒造店
- 江戸時代から続く酒蔵で、酒造りの伝統と粋を知る
- 1790年(寛政2)創業の大和川酒造店は、喜多方でも老舗中の老舗。飯豊山(いいでさん)の伏流水と自社栽培の酒造好適米から造られる酒は、国内はもとより台湾、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ブラジルでも高評価を受けている。昔ながらの酒蔵の一部が公開され、酒造りに関する展示のほか、試飲も楽しめる。興味深いのは、巨大な樽や桶、時代劇で登場するとっくりなど江戸時代から昭和にかけての酒造りの道具。醸造の工程や良い酒造りに欠かせない米の精米歩合、日本酒の歴史や種類、ラベルの見方についても紹介されていて、こちらも勉強になる。酒造りから出た米ぬかや酒粕を肥料にするなど、サステナブルな酒蔵でもある。見学後は利き酒コーナーへ。大和川酒造を代表する銘柄「弥右衛門」は純米、大吟醸、本醸造寒造りなど種類も豊富で、超甘口の酒「カスモチ原酒 弥右衛門酒」という珍しい酒もある。
- スポットの詳細
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大和川酒造店
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会津喜多方ラーメン館
- 黄色い箱でおなじみのお土産ラーメン
- 観光スポットが集まるふれあい通りから市役所通りを徒歩5分、市役所を過ぎたところに蔵を模した大きな土産物店が現れる。お土産ラーメンで知られる河京(かわきょう)の直営店だ。創業1956年(昭和31)の河京のラーメンは、かなり太めの縮れ麺でモチモチとしていて食べごたえがある。良質の小麦粉2種をブレンドし、「名水100選」にも選ばれた栂峰(つがみね)渓流水で練り上げているとのこと。そして、毎日でも食べられると評判のスープは、あっさり系ながら鶏ガラと豚骨のうまみがしっかりと感じられる味。店の前の屋台で試食してから入るといい。店内にはおなじみの箱のほかにもさまざまな商品があり、会津地方の厄除けのお守り、赤べこをデザインしたオリジナル丼がかわいい。白、黒、黄、ピンクなど7色ありラーメンとセットで935円。なお、支店が猪苗代湖の野口英世記念館の並びにあり、ラーメンもトッピングも食べ放題のビュッフェが珍しい。
- スポットの詳細
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会津喜多方ラーメン館
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坂内食堂
- 日本3大ラーメンのひとつともいわれる喜多方ラーメン
- 人口4万4000人に対しラーメン店が約120もある喜多方市で、1、2を争う人気店がここ。スープは塩味。豚骨ベースにもかかわらずしつこくなく、すっきりしながらコクがある。特製焼豚は余分な脂を落としてうまみを凝縮、口の中でとろけていく。食べるタイミングに合わせて熟成する麺も申し分ない。つねに長蛇の列ができるのも納得だ。喜多方ラーメンは、中国出身の藩欽星(ばんきんせい)氏が、昭和の初めに福島の鉱山で働く叔父を頼ってこの地を訪れたのが始まり。鉱山の仕事がなく、思いついたのが故郷の中華麺。その味が評判となり、やがて100人もの弟子をとって麺やスープを伝えた。手打ち風縮れ太麺の製麺機を開発した蓮沼季吉氏も功労者のひとりだ。加えて昭和の終わり、喜多方を「蔵のまち」としてPRしていた頃、団体客の昼食にと紹介したのがラーメン。メディアで取り上げられるとブームとなり、喜多方ラーメンの名は全国に知られることとなった。
- スポットの詳細
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坂内食堂
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喜多方蔵座敷美術館
- 蔵座敷と絵の魅力を一緒に堪能できる
- 喜多方は「街を歩けば蔵に出合う」といわれるほど蔵が多い。明治時代に市街が大火に見舞われたとき、蔵はびくともせず焼け残ったことから、皆がこぞってさまざまな「蔵」を建てたからだ。なかでも居間、客間として造られた「蔵座敷」はそれぞれの個性が発揮され、豪華さを競ったという。喜多方蔵座敷美術館はそんな蔵座敷を利用した美術館で、創業1879年(明治12)の由緒ある笹屋旅館の敷地内にある。蔵は1891年(明治24)に建てられ、3つの部屋から成り立っている。展示物は旅館の3代目主人、岩田圭一郎が収集したもの。芸術に造詣が深く、画商としても活躍していたことから笹屋旅館に泊まった芸術家も多く、美人画の竹久夢二、「河童」を多く描いた小川芋銭(おがわうせん)、福島県出身の酒井三良、小説家の武者小路実篤など、コレクションは100点を超えるという。美術館はこのコレクションを一般公開するために1990年(平成2)に開館した。目をひくのは1階に展示されている夢二が旅館に泊まった際に書き記した書や直筆の作品、会津ゆかりの酒井三良の六曲一双の屏風絵『夕月』などだ。2階では酒井三良の雪景色や田園風景の作品などを見ることができる。
- スポットの詳細
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喜多方蔵座敷美術館
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珈琲蔵ぬりの里
- 郷土料理のこづゆをいつでも味わえるカフェ
- 「珈琲蔵ぬりの里」は毎日の生活に漆器を手軽に取り入れてほしいという想いから、漆器の日常使いを提案するカフェ。コーヒーや手作りのスイーツ、軽食、郷土料理など、美しい塗りの器に盛り付けて出される料理はぬくもりが感じられる。もとは江戸時代末期に建てられた漆の作業蔵と住居蔵を利用した漆器店だったが、2019年(平成元)に建物の半分をカフェに改装し、オープンした。カフェは、郷土料理の「こづゆ」が予約なしでいつでも味わえることでも有名だ。こづゆとは会津地方で冠婚葬祭や節目のときに食べられる具だくさんのおつゆのこと。祝事で食べるときは赤みの多いものを、仏事はキクラゲなどの黒いものを多く入れるという。家庭により味や入れる具材はさまざまだが、干し貝柱でだしをとるため手間がかかり、一般的にはこづゆを味わうには予約をしなければならないそうだ。単品(500円)でも楽しめるが、おすすめは塗りのお膳に3種の餅と香の物が一緒に付いた「田舎もち」(1200円)。醤油味のこづゆが餅の甘さをいっそう引き立ててくれる。餅も歯ごたえのよい固さで、全部食べても胃にもたれないちょうどよい大きさがうれしい。
- スポットの詳細
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珈琲蔵ぬりの里
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山中煎餅本舗
- 炭火で焼く煎餅焼きに挑戦
- 喜多方の定番土産のひとつ「たまりせんべい」は、米を有効に活用するために、各家々で作られていたもの。その伝統を今に受け継ぐのが、1900年(明治33)創業という山中煎餅本舗だ。レンガ窯の炭火焼きにこだわり、昔からの製法を守りながら職人が1枚ずつていねいに焼いていく。さっくりした軽い歯ごたえ、醤油の香ばしい香りと甘みを感じる米の味わいを楽しめる。この職人の仕事を体験できるのが「せんべい炭火焼体験」(1人600円)だ。時間は15分程度で、空いていれば予約なしでも受け付けてくれる。体験用の七輪の周りには、生地にヨモギと塩が練り込まれた「もち草せんべい」が3枚と、焼き棒が用意されている。焼き棒に挟んだ生地を七輪の炭火にかざし、2~3秒温めて落とさないようにひっくり返す。この作業を続けていくと生地の縁が白っぽく変わり、あっという間に膨らんでいく。焼き色がついてきたら完了だ。焼き上がった煎餅はぜひその場で試食してみよう。アツアツでサクッとした歯ごたえの煎餅はその時にしか味わえないものだ。店頭には、昔懐かしいガラス瓶に入ったばら売りの煎餅や、喜多方ラーメンのスープの風味を利かせた煎餅などの商品が並ぶ。
- スポットの詳細
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山中煎餅本舗
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近代化産業遺産 三津谷の登り窯
- 独特な風合いのレンガを作り出した登り窯
- 喜多方の独特な街の雰囲気をつくり出している喜多方レンガ。表面に釉薬(ゆうやく)が塗られているため、レンガが輝いているように見える。この喜多方レンガを作り続けたのが、喜多方市郊外の三津谷(みつや)地区にあるこの登り窯だ。
- スポットの詳細
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近代化産業遺産 三津谷の登り窯
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旧国鉄日中線熱塩駅(日中線記念館)
- 日中線にまつわる数々の資料を展示した記念館
- 90余年の鉄道建設の歴史をもちながら廃線となった旧国鉄日中線。現在、終着駅の熱塩駅(あつしおえき)の駅舎は「日中線記念館」となり、日中線が沿線住民に親しまれていたときの車両、資料などを展示し、公開している。
- スポットの詳細
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旧国鉄日中線熱塩駅(日中線記念館)
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日中線しだれ桜並木
- 線路跡を利用した市民の憩いの場
- JR喜多方駅から徒歩5分のところにある遊歩道。ここはかつて旧国鉄日中線の線路が敷かれていた場所だ。日中線は喜多方駅と熱塩駅を結び、1938年(昭和13)に開通した鉄道路線だが、1984年(昭和59)に社会情勢や国鉄合理化などにより廃止となってしまった。喜多方市はこの線路跡を日中線の歴史を残す意味も含め、自転車歩行者道路として整備、1986年(昭和61)から1998年(平成10)までの期間で、約3kmにわたり、しだれ桜を植樹した。現在、桜並木は東北でも有名な桜の名所になり、4月中旬から下旬には見事に咲き誇る桜を見に、多くの観光客が訪れる。桜のトンネルや展示されているSLと桜のコラボレーションは、絶好の撮影スポットだ。しだれ桜の開花にあわせて「喜多方さくらまつり」も開催されるので、足を運んでみたい。遊歩道は住宅街にほど近いところにあるので、ふだんは通勤、通学、ジョギングや散歩などに利用され、親しまれている。歩道沿いにはベンチや休憩所も整備されており、憩いの場にもなっている。
- スポットの詳細
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日中線しだれ桜並木
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三ノ倉高原
- ゲレンデいっぱいに咲き乱れる花々を楽しむ
- 三ノ倉高原は会津盆地を見下ろす標高650m前後の高原で、三ノ倉スキー場のゲレンデを利用した花畑で有名だ。春には菜の花、夏はヒマワリが咲き誇り、訪れる人の目を楽しませてくれる。花畑はいくつかの区画に分かれているので、花畑の中心部辺りに位置する山小屋「くらら」を起点にまわってみよう。山小屋の入り口には各区画の開花状況が出ているので、どの区画を見るか迷ったら参考にするのもいいだろう。花畑の中では8月中旬に見頃を迎えるヒマワリが有名で、東北最大級といわれる約250万本が咲き誇り、太陽に花を向けて咲く一面のヒマワリを見に、県内外から多くの観光客が訪れる。花畑のいちばん広い区画「くらら西部」には、散策路を5分ほど上っていくと、「みはらしの丘」がある。そこからは喜多方市街、会津盆地を一望でき、すがすがしい気持ちになる。また、丘には「幸福の鐘」があり、幸福を祈願して鐘を鳴らす人も多い。そのほか、ヒマワリでつくられた迷路を楽しめる「くらら北部」、山小屋南部に広がる「くらら南部」、いちばん標高の低い「花畑展望台」などの区画もある。
- スポットの詳細
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三ノ倉高原
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旅のヒント
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その1
郡山と新潟をつなぐJR磐越西線が主要な足。全線単線で、ほとんどが会津若松で乗り換え。郡山から最短で1時間26分。1時間に1本程度の運行。駅からレトロ横丁商店街(旧ふれあい通り)まで徒歩約12分。
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その2
時間はかかるが、東京浅草から東武特急と会津鉄道で日光を経由して会津若松へ出る方法もある。浅草から4時間30分。さらに喜多方まで15分。
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その3
最も風情があるアクセスは、上越新幹線で新潟へ出て、磐越西線で20分の新津へ。そこから「SLばんえつ物語」で喜多方を訪れる方法。週末のみで冬期運休。予約制。
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その4
会津バスが新宿から高速バスを運行している。所要5時間。
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その5
東京都心から車で行く場合、東北自動車道・磐越自動車道で会津若松まで3時間40分。そこから国道121号で20分。豪雪地帯なので秋-春は道路状況をよく確認しよう。
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