日の丸醸造株式会社

日本有数の豪雪地帯である増田地区。外観からは想像もつかないが中には豪華な内蔵がある

内蔵を含めた酒蔵全体が国の登録有形文化財

秋田道十文字ICより車で15分ほど。日本有数の豪雪地帯でもある秋田県南部、蔵の町として有名な秋田県横手市増田地区のなかで唯一の酒造で、創業は1689年(元禄2)までさかのぼる。日の丸という蔵の名は秋田藩主佐竹公の紋が「五本骨の扇に日の丸」だったことにちなんでいる。増田地区は明治・大正・昭和初期に商人や地主の町として栄えていたため、母家の奥に絢爛豪華な内蔵を建てるという独特の街並みをつくり出している。増田の町並み案内所「ほたる」の無料駐車場に車を止め、徒歩2分ほどで見えてくる漆喰の蔵に大きな杉玉。店舗の中に入るとお酒やグッズが購入できるショップスペースになっており、見学料200円を払うと奥の内蔵を見学できる。蔵の町増田の内蔵のなかでも日の丸醸造の文庫蔵は特に豪華な造りになっており、青森ヒバをふんだんに使った意匠は一見の価値あり。この文庫蔵を含めて酒蔵全体が国の登録有形文化財に指定されている。

増田の街並みを歩いていると現れる日の丸倉庫。大きな杉玉が目印

入り口付近に広がるショップスペース。日本酒の購入はもちろんオリジナル雑貨も販売

全国新酒鑑評会にて連続金賞受賞の品質

現在は内蔵の見学のみで酒蔵の見学はできないが「VR酒蔵見学」のサービスで、実際の酒蔵の内部を立体感のある映像で鑑賞することができる。日の丸醸造は中心となるブランド「まんさくの花」をはじめ、小ロット多品種製造にこだわりながら毎年50種以上もの日本酒を生み出している。使う原料米は秋田酒こまち、亀の尾、吟の精、山田錦など16種類。さらに酵母が16種類で種麹が10種類と、その組み合わせによるバリエーションの可能性は無限。そのため同じまんさくの花シリーズのなかでも、華やかでフルーティーな香りの純米大吟醸酒もあれば、低温発酵で丹念に仕込みキリッとしたのどごしと酸味のバランスが絶妙な純米酒もある。全国新酒鑑評会の金賞受賞常連となる日本酒造りの工程は、VR酒造見学のなかでも公開。とりわけ、徹底した温度管理ができる小ロット仕込み用のサーマルタンクが40基以上も並ぶ光景は圧巻だ。

国の指定有形文化財に指定されている文庫蔵。蔵を囲む建屋も美しい

ヒバ材に漆塗りなど贅を尽くした造りの蔵内部も見学可能

内蔵に続く廊下には「まんさくの花」シリーズのラベルなども展示

内蔵見学のあとは試飲や買い物を楽しんで

内蔵見学した人にはもれなく記念コインを配っており、高級酒の試飲サービスかお買い物の際の200円引きサービスと交換できる。もちろん記念として持ち帰ってもOK。またショップ内には各種日本酒が試飲できるコーナーもあり、自分の舌でお気に入りを見つけてから購入することも。日本酒好きの人であれば、スタッフに酒造りについていろいろ質問してみてもいいだろう。20歳未満の人は内蔵見学が無料なので、増田の内蔵見学ルートのひとつとして家族で訪れる観光客も多い。日の丸醸造から徒歩5分ほどの位置には、老舗こうじ屋が運営する発酵グルメのショップカフェ「くらを」があり、この地が清らかな湧水と農耕地であり、豊かな発酵文化が根付いたエリアであることに気づかされる。日の丸醸造から車で3分ほど移動すると「増田まんが美術館」もあるため、内蔵見学とあわせて一日中観光を楽しめる。

ショップにはつねに10種類以上のお酒を試飲できるコーナーあり

11種類の酒米の違いを愉しめる「巡米酒シリーズ」も購入可能