江別市ガラス工芸館

レンガ造りの建物の中にはさまざまなガラス作品が展示されている

元はレンガ工場代表社員の邸宅だったという洋館

JR野幌(のっぽろ)駅から徒歩約15分のところにある「江別市ガラス工芸館」。駅から10分ほど歩くと、国道12号線から「野幌グリーンモール」と呼ばれる遊歩道が続いている。名前のとおり、木々の緑に癒やされながら歩くことができ、途中には都市景観賞を受賞した噴水も。ガラス工芸館の前の広場に着くと、地元の金属造形作家・西山省一さんが手がけた大きなオブジェ『TIME BELL』が見える。ガラス工芸館は、ノスタルジックな雰囲気が漂うレンガ造りの洋館。この建物は、江別のレンガ工場のひとつ「北海煉瓦合資会社」の代表社員であった石田惣喜知(そうきち)さんが自身の邸宅として設計し、1946年(昭和21)に建てたもの。「れんがのまち」の象徴的な建物のひとつとして旧石田邸を保存しようと、1992年(平成4)に江別市が買い上げ、現在の場所に移築し改修整備を行った。

窓が将棋の駒のような形をしているなど、珍しいデザインの洋館だ

世界で活躍するガラス工芸作家・柿崎均(ひとし)さんの工房

移築後の1994年(平成6)4月、建物を保存しながら、ガラス工芸作家の工房として活用するために「江別市ガラス工芸館」としてオープン。現在は、ガラス工芸作家である柿崎均さんが創作活動を行っている。柿崎さんは、日本だけでなくスウェーデンやフランス、イタリアなどでもガラス制作に携わってきた。映画『ぶどうのなみだ』では柿崎さんが手がけたワイングラス、同じく映画『そらのレストラン』ではグラスと水差しが採用されている。開館中(5～10月の土・日曜、祝日10～17時)は、建物の中に入って、柿崎さんが制作する様子や、オブジェなどの展示作品を見ることが可能。牛乳を注ぐと牛柄になるお茶目なグラスや北欧スタイルのおしゃれな塩コショウ入れなど、日常使いできるものも数多くそろう。11～4月は休館となるので注意を。

建物の2階にも、オブジェなどを中心に柿崎さんの作品が並んでいる

柿崎さんのガラス工房の様子。ここでガラス作品を制作している。1階で見学可能

吹きガラス体験で世界にひとつの作品作りに挑戦

同館では、見学だけでなく「ガラス作品づくり体験」も開催。参加費は4,800円、所要時間は約1時間。柿崎さんが講師となり、ていねいにレクチャーしてくれる。体験は、どのようなものを作りたいか、たくさんのサンプルを参考に決めていくところからスタート。「せっかく体験するならば好きなものを作ったほうがいいですよ」と、可能な限り体験者の希望にあわせて自由な作品作りをさせてくれるのが魅力だ。柄の配置や色使いなど、悩みながらデザインを決めたら、炉のある場所へ移動。工房内の室温は30℃近くあり、黙って立っているだけでもじんわりと汗がにじんでくる。1000℃近くあるという炉の中で熱したガラスに、デザインした柄のガラスを付け、形を整えながら息を吹き込み、また炉に入れて形を整え……という作業を何度も繰り返す。形を整え終わったら、ひと晩かけてゆっくりと冷ますのだ。そうすることで割れにくくなるのだそう。完成品を後日受け取りに来られない場合は、着払いで送ってもらうこともできる。体験希望の場合は、事前に電話で申し込もう。

体験では最初に、トレイの上に色付きガラスのチップを並べて、柄の配置を決めていく

柿崎さんが炉の扉を開けると、一気に熱さが伝わってくる

こちらが後日受け取った体験時のグラス。色付きガラスをたくさん配置したため、カラフルな仕上がりとなった