手向宿坊街
修験道が育んだ「生きるための精進料理」
ユネスコ食文化創造都市選出理由のひとつ
出羽三山がある山形県鶴岡市は、2014年(平成26)に「ユネスコ創造都市ネットワーク食文化部門」に認定された。その選出理由のひとつに挙げられたのが、古より修験者や参詣客に提供されてきた「出羽三山精進料理(でわさんざんしょうじんりょうり)」の存在だ。かつて松尾芭蕉をもてなした精進料理の伝統的な調理法は今も変わることなく、山の恵みを多くの人に振る舞っている。また2011年(平成23)には食文化交流事業の一環としてハンガリーとフランスで山伏文化と精進料理を紹介したり、2015年(平成27)にはイタリアのミラノで開催された国際博覧会に参加するなど、その地の恵みを生かした滋味深い料理は海外から注目されている。
山伏の自給自足の食生活がルーツ
出羽三山精進料理のルーツは、山伏が山中で行っていた自給自足の食生活といわれている。修験道では食べることも修行のひとつと考えられており、かつてはその日採れたものを生でそのまま食べていたという。その後、京都の寺院などの技法が融合し、火を通したり塩漬けにしたりという保存方法が取り入れられ、出羽三山固有の食文化として発展した。いちばんの特徴は、出羽三山で採れた食材を使うこと。月山筍(がっさんだけ)やフキノトウ、なめこや山菜など、食材は今でも山に自生しているものを採ってきている。その日その時の旬のものが使われた出羽三山精進料理は、山のエネルギーを得られる生きた食文化といえるだろう。
羽黒で精進料理に舌つづみをうつ
出羽三山を訪れたときに精進料理を味わいたいなら、羽黒山がおすすめだ。羽黒山の「三の坂」を登り切った左手にある羽黒山斎館(さいかん)では、鶴岡市指定有形文化財の風情のある建物の中で、伝統的な精進料理をいただくことができる。メニューは月替わりなので、どんな食材に会えるかは膳を目の前にしてからのお楽しみ。また、羽黒山の門前町である手向(とうげ)地区の宿坊や旅館でも精進料理を食べることができる。2012年(平成24)には、出羽三山がもつ歴史や伝統、信仰、文化を発信しようと、手向地区の旅館や宿坊・茶屋・山小屋の担い手たちによる「出羽三山精進料理プロジェクト」が発足した。精進料理は予約が必要な場合が多いので、事前に確認しよう。
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情報提供: ナビタイムジャパン