長良川

提灯に明かりが灯ると、いよいよ鵜飼の始まり

日本唯一の皇室御用の鵜飼「ぎふ長良川の鵜飼」

岐阜県郡上市にある大日ヶ岳を水源とし、濃尾平野を流れて伊勢湾に注ぐ「長良川」。四万十川、柿田川とともに日本三大清流のひとつに数えられる一級河川だ。長良川の名が広く知られる理由は「鵜飼」だろう。鵜飼とは飼いならした鵜を使って鮎などの川魚を捕る、伝統的な漁法のことをいう。ほかにも鵜飼を行っている地域はあれど、長良川は日本で唯一の皇室御用の鵜飼。「宮内庁式部職鵜匠(くないちょうしきぶしょくうしょう)」によって漁が行われる川だ。ぎふ長良川の鵜飼で年に8回ある「御料鵜飼日」には、禁漁区である御料場で鵜飼が行われ、その日に捕った鮎は皇室に納められる。さらに「長良川鵜飼用具」一式122点は国の重要有形民俗文化財に、「長良川の鵜飼漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されており、日 本が誇る伝統文化として認定されている。

1人の鵜匠が一度に扱う鵜はなんと12羽にも及ぶこともある

踊り船では「長良川艶歌」や「長良川音頭」などを踊る姿も

ひとつの漁法から「おもてなし」へ

奈良県にある正倉院に納められている702年(大宝2)の戸籍に鵜飼を生業としていた人物についての記載があることから、1300年前以上の歴史をもつといわれるぎふ長良川の鵜飼。昔を今に伝えるさまざまな文書に登場し、足利義教や織田信長、徳川家康・秀忠父子、松尾芭蕉などが鵜飼を観覧したと記録されている。家康の命により江戸時代から幕府に鮎鮨献上が行われていたが、時代が変わり1878年(明治11)になると、明治天皇の岐阜巡幸中に随行した岩倉具視らが鵜飼を観覧し、天皇に鮎が献上された。さらに1922年(大正11)にはイギリスのエドワード皇太子が、また世界の喜劇王チャールズ・チャップリンは1936年(昭和11)と1961年(昭和36)の2度にわたって、鵜飼観覧を楽しんだといわれている。

松尾芭蕉はぎふ長良川の鵜飼に訪れた際「おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな」という俳句を残した

ぎふ長良川の鵜飼について学べるポケット図鑑も

観覧船に乗船して鵜飼を見学しよう

現在長良川に架かる長良橋の上流付近で、毎年5月11日～10月15日まで鵜飼を開催。長良橋から岐阜グランドホテルまで続く長良川プロムナードからも見学できるが、せっかくなら観覧船に乗ることをおすすめしたい。空席がある場合は当日の申し込みもできるが、インターネットや電話での予約が確実だ。観覧船は18:15、18:45、19:15に出船する3つの便があるが、鵜飼が始まるのは19:45頃。船内には飲食物の持ち込みが可能(19:15の便は持ち込み不可、また新型コロナウイルスの状況により変更の場合あり)なので、最初の便に乗って船内で食事をするのもいいだろう。そして鵜飼の始まりを告げる花火が上がると篝火を焚いた鵜舟がゆっくりと現れ、幻想的な雰囲気のなかで鵜飼が始まる。鵜が鮎を捕る迫力の瞬間と、鵜匠の技を間近で見られる約45分間の鵜飼観覧を楽しもう。

観覧船のチケットは鵜飼観覧船事務所で購入できる

1300年以上の時を超える伝統漁法を目に焼き付けよう

夕方の乗船前に近隣をぶらり散策

鵜飼観覧船の乗船前には鵜匠による鵜飼説明が行われているが、鵜飼についてもっと深堀りしたいなら、「長良川うかいミュージアム」に訪れてみよう。長良川の鵜飼の歴史や価値がわかりやすく紹介され、館内には鵜飼にちなんだ土産やグッズも販売。さらに、鵜飼観覧船のりばからほど近い場所にある川原町界隈もぜひ行っておきたいスポットだ。川原町の古いまちなみには、鮎料理屋や鮎菓子の老舗なども並ぶ。乗船前にここで調達した食べ物を、観覧船でいただくのも楽しみのひとつだ。