越前海岸

粗削りな岩々が勇壮で起伏に富んだ景観を生み出している

越前町に見どころがたくさん

越前海岸は、北は東尋坊、南は敦賀の杉津にかけて日本海に面する海岸線だ。印象的な奇岩・奇勝が数多くあることから国定公園に指定されている。福井市の南隣にある越前町内で越前岬を西端に、なだらかな「く」の字形に日本海へ突き出ており、一帯は漁期の11月から3月にかけて越前がにのメッカとなるほか、沿岸には夏に賑わう海水浴場が点在することから、一年を通して観光客が多く訪れる人気ドライブルートとなっている。海岸線に沿って国道305号線が走っており、ここぞという景観の見どころ付近には車を止められるパーキングエリアも設けられているので、車を下りて、大自然が悠久の時をかけて形づくった景観を存分に堪能しよう。

海にそそり立つ鳥糞岩。南側の国道沿道にパーキングエリアがあり、そこに車やバイクを止めて景色を楽しもう

展望台で日本海の大パノラマを一望

越前海岸の地学的な特徴は、隆起海岸であることだ。隆起海岸とは浅海の海底地形が地盤の隆起によって海面上に現れた結果生まれる海岸のことで、海岸線は直線的。大小の湾が連なり、出入りに富んだリアス式海岸とは異なる。波や風の侵食が手伝って無骨で雄々しい奇岩断崖が続き、独特のダイナミックな景観は見る者を魅了する。越前海岸の代表的なスポットは「鳥糞岩」だ。高さ約100mの大断崖で、垂直に立つ断崖が日本海に迫り出している。先端が海鳥の棲息地になっており、糞で崖の一部が白く染まっているためこの名が付いたという。また、「越前岬展望台」から日本海を望む眺望もすばらしい。鳥糞岩南側の国道沿いパーキングエリア付近から山側へ斜めに入るつづら折りの坂道があり、その先に越前岬展望台がある。車を止め、足を運んでみよう。木組みの展望台に上がると、視界をさえぎるもののない絶景が広がる。水平線に目を凝らせば、地球の丸さを実感できるはずだ。

天候がよければ東尋坊や敦賀半島も一望できる越前岬展望台。越前岬は「日本の夕陽百選」にも選ばれている

洞穴に愛の神・愛染明王を祀る

越前海岸で見ておきたいスポットはほかにもある。海に迫り出した岩に穴がぽっかり開いた洞穴の「呼鳥門(こちょうもん)」や、道路を挟んで呼鳥門の反対側の岩山にある「愛染明王洞・水仙廼社(すいせんのやしろ)」、そして「恵比須岩」だ。愛染明王洞・水仙廼社は、崖地の小さな洞窟にある祠(ほこら)で、真言密教の愛の神である愛染明王を祀っている。恋愛成就を願って参拝するカップルが多い。恵比須岩は、鳥糞岩から車で3分ほど国道305号線を南下すると、公園のすぐ南側に現れる。左右対称の双子岩が海面から突き出ており、タイミングがよければこの2つの岩の間に沈む夕陽を見ることができ、幻想的だ。このほか、越前岬周辺は「日本水仙三大群生地」のひとつとなっており、12～1月にかけて越前海岸の急斜面に白い絨毯のようにスイセンの花が咲き誇る。日本海側唯一の群生地であり、雄々しい海岸線と可憐なスイセンとのコントラストは越前海岸でしか見られない絶景だ。

愛染明王洞・水仙廼社。地元では「恋岬の愛染さま、縁結びの愛染さま」と親しまれている

恵比須岩。恵比須は漁業の神であり、海ととともに生きる近在の人々にとって象徴的な存在だ