無量光院跡
自然の営みを活かしながら、極楽浄土の世界を表した世界遺産
建物の西側に「金鶏山」が見える理由とは
独特の意匠・設計が施されている、平泉の寺院や浄土庭園群。そこには、浄土の世界をこの世に体現したいとする思いが反映されている。奥州藤原氏3代秀衡(ひでひら)公が建立した無量光院もそのひとつで、初代清衡(きよひら)公、2代基衡(もとひら)公から引き継いだ思想や技術を存分に取り入れている。無量光院は金鶏山の東側にあり、山頂に夕日が沈む4月と8月頃には、本尊である阿弥陀如来の背後からまっすぐ光が差し込むように設計されている。金鶏山は、初代清衡公が平泉を守るために雌雄一対の黄金の鶏を埋めたという伝説があるほどの信仰の山。金鶏山を空間的に取り込むことも、極楽浄土の世界に近づく工夫だったことがわかる。
「平等院鳳凰堂」をしのぐほどの規模
12世紀後半に建立された無量光院は、1053年(天喜元)に京都に建てられた平等院鳳凰堂を模しつつ、それよりも大きく造られた阿弥陀堂。翼を広げた鳳凰のようなことから名がついた鳳凰堂と同様に、無量光院も正面から見ると、左右対称で優美な伽藍であったといわれる。さらに、美しい姿を映すために造られたような、東西約140mという広大な池が、伽藍のあった辺りの近くまで迫っている。その大きな池に架かる橋を越えて、伽藍にたどり着くという趣向も、理想の世界観を表現している。
伽藍の中央部分が建っていたとされる跡地。今もしっかりと礎石が残っている
伽藍を礼拝する場でもあった東島。今は1本の松が静かにたたずむ
800年前も今も生活を支える照井堰
奥州藤原氏滅亡後は、度重なる火災で焼失してしまい、ここに残るのは土塁と礎石のみ。少しでも在りし日の姿を感じてもらいたいと、世界遺産に登録された翌年の2012年(平成27)から始めたのが、園池に水を張る作業。ここに注がれる水は、秀衡公の家臣、照井太郎高春(てるいたろうたかはる)により開削され、先人たちにより幾度も改修工事が行われてきた照井堰(てるいぜき)から引いている。照井堰は、今も地域の稲作を支える大切な用水。800年の時を超えても、自然を生かしながら暮らしを豊かにする人々の姿は変わらない。こうした普遍的な営みを、平泉の街のなかで体験できることこそ、平泉の世界遺産の魅力でもある。
スポット詳細
- 住所
-
岩手県西磐井郡平泉町平泉字花立地内
地図
- エリア
- 平泉・奥州・一関エリア
- 時間
- 24時間
- 休業日
- 無休
- 料金
- 無料
情報提供: ナビタイムジャパン