エルルカン ビス

「アジの酢締めグリル」「トマトとアボカドのマリネ」「きゅうりのハチミツのピュレソース」

湯河原の隠れ家フレンチレストラン

JR湯河原駅から車で約10分。湯河原の旅館街を走り、閑静な住宅街を抜け、急坂を高台へと走っていくと周りの自然に溶け込むように「エルルカンビス」の看板が現れた。店は一軒家。入り口はゆるやかな階段を下り、玉砂利を敷いた小道をたどったところにあり、モダンな白い暖簾と東南アジア風の石の置物やエスニックな壺たちが出迎えてくれる。辺り一面に竹林が広がり、人工物が何も見えない様子はまるで「隠れ家」のよう。2006年(平成18)にオープン以来、おもに湯河原の別荘族や東京・横浜圏内のグルマンたちに支持され、特に休日は予約の取れない店としても知られている。ふだん忙しない日々を過ごしている人にぜひこのレストランでゆっくり食事をしてほしい、そんな場所だ。

東南アジアのリゾートのエントランスを思わせる

自社農場の野菜と産直の魚介を使用する

食事は和とフレンチを融合させた「エルルカンビススペシャル」とでも呼びたい内容。「従来のフレンチにこだわらず、和食の理論、技法、食材をフレンチに生かしています」と話すのはオーナーでシェフの伊東淳一さん。料理の考え方が真逆である和食とフレンチのよいところを引き出すのが難しくもあり楽しいという。伊東さんは平塚に自社農場をもち、野菜はこの農場から多く使用。魚は産地直送で取り寄せている。ランチ(4400円～)は2コースあり2、3週間に一度メニューが変わる。ディナー(7150円-)は3コースで1か月半から2か月ごとに変わる。どちらもできれば予約が望ましい。ワインはフランス産を中心にイタリアワインやビオワインもそろえる。

「アマレット風味のミルクゼリー」「湯河原産夏ミカンのゼリーがけ」

伊東淳一オーナーはアートにも通じている

竹林の中での食事はエキゾチックムード

レストランは全58席。満席にせずだいたい30席で満席としている。どの席に座っても大きな窓から竹林を眺められるのが心落ち着く。インドネシア・バリのリゾート風とでもいおうか、異国情緒たっぷりな雰囲気を醸し出している。室内席のほかに、天井から透明なビニールシートですっぽりと覆われたテラス席があり、こちらに座ると竹林のなかで食べているような感覚だ。昼は竹がつくり出す木漏れ陽が注ぐなか、夜は月明かりや星明かりのなかで食事をすることができる。竹林もライトアップされる。見渡す限りの竹林のなかで食べる極上のフレンチは必ず記憶に残るはずだ。「竹は季節を問わず、昼も夜も、そして雨に濡れても美しい。こんな場所が湯河原にあったんですよ」と伊東さん。

昼に夜に美しさを窓いっぱいに映し出す竹林を眺めるテラス席

テーブル間はゆったりしているので隣席の会話も気にならない

こだわりのアート作品が店内を飾る

店内にはオーナーの伊東さんが集めた絵がいくつか飾られている。すべて玉井佑典(たまいゆすけ)さんというアーチストが描いた作品で、毎年一度開かれる個展のたびに1枚ずつ買い求めるそうだ。フランス、ベルギー、イタリアなどの名レストランで修行を積んできた伊東さんが選ぶアートは「エルルカンビス」の料理のように表現方法にこだわらない豪快かつ繊細な作品だ。また店内は窓の外の竹林がよく映えるようにモノトーンを基調としたしつらえになっている。さらに店内を明るくし過ぎないように配慮された照明を設置、竹林とあわせ、夜や明かりの美しさのなかで食事をできる。非日常の空間演出がすばらしい。誕生会や記念パーティーなどの貸切使用も可能だ。

玉井佑典さんの作品はどこか人をひきつける