能仁寺

寺院

江戸時代に禅道場として栄華を誇った奥武蔵の名刹

飯能(はんのう)市にある曹洞宗の寺院。幕末には旧幕府軍と新政府軍の間で勃発した飯能戦争の舞台にもなった。「日本名園百選」に選ばれている庭園があり、春はツツジ、秋はモミジなど四季折々の情景を楽しめる。

美しく整えられた境内。本堂を中心にして数多くの伽藍が立ち並ぶ} 美しく整えられた境内。本堂を中心にして数多くの伽藍が立ち並ぶ

徳川幕府の厚い信任を得て大寺に発展

埼玉県で初めて名勝として指定された天覧山(てんらんざん)。そのふもとに広がる能仁寺は、室町時代中期の1501年(文亀元)、飯能の武将中山家勝が名僧斧屋文達(ふおくもんたつ)師を招いて小庵を結んだのが始まりとされ、家勝の子・家範が父の冥福を祈るために寺院を創建した。江戸時代には徳川家康の庇護のもと、多くの雲水(修行僧)をかかえる禅道場として発展。のちに沼田城三万石の大名となる黒田家の菩提寺となり、能仁寺中興の祖と仰がれる黒田直邦は将軍家のうしろ盾により山門・大殿・庫裡と改修を行い、伽藍を完成させた。飯能地方の大寺として華やかであったが、1868年(慶應4)の戊辰戦争の際に渋沢成一郎・平九郎(渋沢栄一の従兄弟)ら振武軍を中心とする旧幕府方が本営をおいたため、新政府軍との激戦によって末寺と近隣民家ともども焼失してしまった。現在の本堂は、長い仮本堂の時代を経て、1936年(昭和11)に再建されたものだ。

境内に立つ「振武軍の碑」。埼玉県内で唯一、戊辰戦争の戦場となった歴史を伝えている} 境内に立つ「振武軍の碑」。埼玉県内で唯一、戊辰戦争の戦場となった歴史を伝えている

立派な石灯籠に迎えられ、伽藍の立ち並ぶ境内へ

西武池袋線飯能駅から能仁寺へは徒歩20分ほど。入間川方面から中央公園通りをまっすぐ進むと、天覧山を背にして能仁寺の山門が見えてくる。山号を表す「武陽山」の扁額は、1697年(元禄10)に将軍綱吉の命で天台座主公辨(こうべん)が筆を振るったもので、飯能戦争の際は保管されて焼けずに残った貴重な品だ。勇壮な仁王像が立つ山門をくぐると、砂利が敷かれた参道に大きな石灯籠が並んでいて、古刹らしいおごそかな風情を感じさせる。この石灯籠はもともと東京芝の増上寺の徳川家霊廟正門にあったもので、戦後に能仁寺に移築された。中雀門をくぐって境内に入ると、正面に本堂、左側に開山堂、右側に総檜造りの大書院が配置されている。本堂にかかる能仁寺の扁額も公辨の筆によるものだ。

見事な扁額が掲げられた山門。ここから続く参道は、秋になるとモミジが美しく色づく} 見事な扁額が掲げられた山門。ここから続く参道は、秋になるとモミジが美しく色づく

御本尊の毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)を祀る本堂。天覧山に登る前にお参りする人も多い} 御本尊の毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)を祀る本堂。天覧山に登る前にお参りする人も多い

庭園で自然美を愛で、本堂を参拝する

本堂の北側にある「池泉鑑賞蓬莱(ほうらい)庭園」も見事なので、ぜひ鑑賞したい。大書院の入り口で拝観料を納め、靴を脱いで廊下を渡っていく。天覧山の南斜面を巧みに取り入れた庭園は、面積約1070平方メートル(324坪)。背後に枯滝を組み、下部を池泉とした上下二段式庭園で、桃山時代の造成と推定される。季節ごとにさまざまな景色を楽しめるが、春のツツジ、秋の紅葉はことさら美しい。御本尊の毘盧遮那仏が安置されている広い本堂は、外陣をぐるりと回って参拝する。本堂へと通じる渡り廊下には、東京芸術大学名誉教授の絹谷幸二氏と長嶋茂雄氏の合作によるリトグラフ『新世紀生命富士』が飾られている。

東日本の代表的な名園といわれる「池泉鑑賞蓬莱庭園」。奥行きと立体感が見事} 東日本の代表的な名園といわれる「池泉鑑賞蓬莱庭園」。奥行きと立体感が見事

能仁寺にお参りしたら、その背後にそびえる天覧山に登ってみよう。標高197mの山頂からは飯能の街並みをはじめ、天気がよければ東京スカイツリーや富士山も見える。山道の途中には十六羅漢像が祀られている。五代将軍綱吉が重い病に冒されたおり、能仁寺の和尚の祈願によって快復し、それを喜んだ母・桂昌院がお礼として奉納したものと伝わる。以前は愛宕山と呼ばれていたが、これを機に羅漢山と呼ばれるようになり、のちの明治天皇の行幸の際に天覧山と名付けられ現在にいたっている。

天覧山中腹の岩場に安置されている十六羅漢像。一つひとつ表情が異なる} 天覧山中腹の岩場に安置されている十六羅漢像。一つひとつ表情が異なる

スポット詳細

住所
埼玉県飯能市飯能1329 map map 地図
エリア
西部エリア
電話番号
0429734128
時間
[庭園]9:00-16:00
休業日
無休
料金
[境内散策]無料
[庭園]300円
駐車場
あり
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
可(境内に喫煙所あり)
滞在目安時間
0-30分

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 戊辰戦争の舞台の一つ
    4.0 投稿日 : 2021.08.29
    NHKの大河ドラマ「青天を衝け」でも紹介された寺で、戊辰戦争の1つの反応戦争の舞台で、渋沢成一郎・尾高惇忠・渋沢平九郎など渋沢栄一の縁者が中心となって結成した振武軍が新政府軍と戦った場所ということで、行ってみました。今まで歴史のある有名なお寺だと知らなかったので、初めて境内に入ってみましたが、思っていたより大きなお寺でした。本堂などに古さを感じなかったのは、飯能戦争で焼失した本堂を昭和11年に再建...
  • 飯能市に越して来た時に能仁寺に除夜の鐘を突きに来ました
    3.0 投稿日 : 2021.06.18
    今回も能仁寺が目的ではなく前回の天覧山の紅葉と同じように、昨年できたOH! 発酵食品の店に来た次いでに隣の能仁寺に寄った。前回は門からのモミジが真っ赤になって美しかった。天覧山に行く途中の庭園は有料の為パスしました。今回は桜の季節でした。飯能市に越して来た40年近く前には親子4人で除夜の鐘を突きに来て甘酒を頂いたのを覚えています。
  • 能仁寺の庭園は有料です
    4.0 投稿日 : 2021.05.28
    今アラフォーの息子たちが小学生の時大晦日に来た能仁寺に訪問しました。参詣道の紅葉が綺麗だった。本堂の前の庭、本堂の裏手にあるお墓付近の紅葉も美しかった。能仁寺庭園は有料でした。最近できたレストランフェミーの隣が能仁寺です。その上が天覧山で何回も来たことがあります。飯能市中央公園にある子供の遊び場を通って駐車場に向かう。

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アクセス

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