臥龍山荘

歴史的建造物

日本建築の粋を集めた大洲随一の見どころ

大洲・肱川(ひじかわ)流域の景勝地に、日本建築の粋を集めた「臥龍山荘」がある。茅葺き屋根で農家風の「臥龍院」や、崖の上に懸け造りで建てた「不老庵」など、ミシュラン・グリーンガイドで1つ星を獲得した匠の技の数々を観賞しよう。

臥龍山荘の主屋である臥龍院。客間「壱是の間」を庭から見る} 臥龍山荘の主屋である臥龍院。客間「壱是の間」を庭から見る

貿易商・河内寅次郎(こうちとらじろう)が財を投じた別邸

文禄年間 (1592~1595年)、この地に屋敷を構えたのは城主の藤堂高虎の重臣・渡辺勘兵衛だった。その後、大洲藩第3代藩主・加藤泰恒(やすつね)は、この地をこよなく愛し、吉野の桜や龍田のカエデなどを移植して風情ある庭を整えていったという。すぐ前にある蓬莱山(ほうらいさん)が、龍の臥す(横になる)姿に似ているということから「臥龍」と名付けたのも泰恒だ。その後も幕末まで歴代藩主らの遊賞地だったが、明治維新以降は次第に荒廃していった。時が流れて1897年(明治30)頃、ここを購入したのは木蝋貿易で財をなした地元大洲出身の河内寅次郎(こうちとらじろう)で、構想に10年、工期に4年をかけて山荘を整えていった。すべてが完成したのは1907年(明治40)のことだ。さっそく臥龍山荘に足を踏み入れるとしよう。

「清吹(せいすい)の間」(手前)と「壱是(いっし)の間」(奥)。襖、引き手、鴨居など、細部にも美意識と技術の高さを感じられる} 「清吹(せいすい)の間」(手前)と「壱是(いっし)の間」(奥)。襖、引き手、鴨居など、細部にも美意識と技術の高さを感じられる

自由な発想から生まれた石積みに注目

臥龍院の入り口となる黒門を抜けると、右手に高く築き上げられた石垣が見えてくる。手前にあるのは大小さまざまな石をあわせるように積んだ「乱れ積み」。石垣の裾を広げて積んだ「末広積み」には、もともとここにあったチシャノキをそのまま生かしている。また、「流れ積み」では細長い石を横に並べて川と舟に見立て、石臼を横にしてはめ込み、月に見立てているという手の込みようだ。乱れ積みの石垣の上に立っているのは、国指定重要文化財になっている「文庫」。文書や書物、絵画などをしまっておく土蔵で、外観下部には舟板を張り、上部にはひしぎ竹が使われている。臥龍山荘では石ひとつとっても、遊び心と匠の技を感じることができる。

左/下から仰ぎ見ることを計算した外観をもつ「文庫」 右上/石臼を月に見立てている 右下/右の石垣は乱れ積み、左は流れ積み} 左/下から仰ぎ見ることを計算した外観をもつ「文庫」 右上/石臼を月に見立てている 右下/右の石垣は乱れ積み、左は流れ積み

国指定重要文化財の臥龍院

臥龍山荘の主屋となるのが臥龍院だ。茅葺き寄棟造りの外観は一見農家を思わせる。だが、そこには「誇示する美よりも、つつましやかなものがよい」とする建築コンセプトがある。桂離宮や修学院離宮などを参考にし、相談役に茶室建築家の八木甚兵衛を迎え、施工は大洲の中野寅雄と京都の草木國太郎の名大工が手がけ、細部は千家十職に依頼するなど、類いまれな名建築となっている。「霞月(かげつ)の間」は、農家の侘びた風情を感じさせる茶室で、天井も低くなっている。襖は渋い灰色の染め唐紙、襖の引き手はコウモリ型で、夕暮れの空間を表現しているという。注目したいのが「霞棚」。ここには違い棚と丸窓があり、丸窓は月を、違い棚は霞を表現しているという。茶室のため、座ったときにちょうど満月に見えるよう、、少し低い位置に丸窓がしつらえられている。

「霞月の間」。丸窓の向こうには仏間があり、ロウソクを灯すと丸窓が月のように、ほのかに明るくなる仕掛けが施されている} 「霞月の間」。丸窓の向こうには仏間があり、ロウソクを灯すと丸窓が月のように、ほのかに明るくなる仕掛けが施されている

左上/コウモリ型の引き手 左下/ひょうたんの透かし彫り 右/「霞月の間」と「清吹(せいすい)の間」をつなぐのは仙台松の一枚板。あえて目地(溝)を入れている} 左上/コウモリ型の引き手 左下/ひょうたんの透かし彫り 右/「霞月の間」と「清吹(せいすい)の間」をつなぐのは仙台松の一枚板。あえて目地(溝)を入れている

次の間は「清吹(せいすい)の間」。「夏の部屋」とも呼ばれるように、天井を高くして北側からの風を入れ、足元に籐を敷くなど、夏向きに工夫されている。四方の欄間には季節をイメージした透かし彫りが施され、神棚の下には春の「花筏(はないかだ)」、その右側には夏の「水門の美」、反対側には秋の「菊水」が、そして「花筏」の反対側には冬を表す「雪輪窓」がある。空間全体に一貫したテーマを感じられる部屋だ。

「清吹の間」の大きな床の間の上部にある透かし彫り「花筏」。西日が当たるとさらに存在感を増す} 「清吹の間」の大きな床の間の上部にある透かし彫り「花筏」。西日が当たるとさらに存在感を増す

名工たちの技の競演「壱是(いっし)の間」

その奥にある「壱是の間」は最も格式の高い書院座敷で、大きな床の間をもつ。障子戸や明かり窓、天井板などそこかしこに桂離宮様式が見える。欄間には野菊や鳳凰の透かし彫りが施され、優雅さを醸し出す。この部屋は畳をあげると能舞台として使用できるよう設計されていて、音響をよくするため床下には12個の備前焼の壺が置かれているという。また、座敷の南と東側には畳敷きの廊下があり、庭師が10年をかけて造った、自然の景観を取り入れた庭を眺めることができる。

高い天井と広い床の間をもつ「壱是の間」。細部にまで河内寅次郎の美意識とそれに応えた名工たちの技が見える} 高い天井と広い床の間をもつ「壱是の間」。細部にまで河内寅次郎の美意識とそれに応えた名工たちの技が見える

山荘内にある、かつて浴室だった建物を1949年(昭和24)に茶室に改造した「知止庵(ちしあん)」。さらに奥には数寄屋造りの傑作といわれる「不老庵」がある} 山荘内にある、かつて浴室だった建物を1949年(昭和24)に茶室に改造した「知止庵(ちしあん)」。さらに奥には数寄屋造りの傑作といわれる「不老庵」がある

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スポット詳細

住所
愛媛県大洲市大洲411-2 map map 地図
電話番号
0893243759
時間
9:00-17:00(札止16:30)
休業日
無休
料金
[観覧料]大人550円、小人(中学生以下)220円
駐車場
あり(43台)
※大洲まちの駅「あさもや」利用
クレジットカード
可(VISA、MasterCard、JCB、AMEX、銀聯、DISCOVER)
電子マネー/スマートフォン決済
可(Suica、PASMO、QUICPay、iD、Apple Pay、PayPay、楽天ペイ、メルPAY、d払い、auPAY、ALIPAY)
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
滞在目安時間
30-60分

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 駐車場がちょっと遠い
    4.0 投稿日 : 2022.12.21
    駐車場がないので、駐車場に車を止めて少し歩きます。建築は素晴らしかったですが、借景が殺風景で残念。また足場の悪いところを歩く必要があるので、雨の日は注意が必要です。
  • 大洲の、いや日本の宝
    5.0 投稿日 : 2022.11.14
    大洲市に生まれて育ち、一度も来たことがなかった臥龍山荘がこれほどまでに日本文化のすばらしさと、正統派では思いもつかない遊び心にあふれた建築物であったとは想像できませんでした。わびさびだけのことではなく、日本人としての「極上の遊び」とは何かが見られる素晴らしい文化遺産です。多くの人に体感してもらいたい!と切望いたします。
  • なかなかです
    4.0 投稿日 : 2022.05.04
    大洲一の観光名所。建物が素晴らしい上に、眺望も良い。時間がなかったので、ここだけだったが、大洲城などとの共通券があるので、ゆっくり観光するとよい。

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