阿寒湖アイヌコタン

日本最大のアイヌコタンで、アイヌ民族の文化に触れる旅をしよう

自然と共生してきたアイヌ民族。実際にアイヌの人々が暮らす街へ出かけて、その精神に触れてみよう。繊細な技巧で作られた木彫りや、デザイン性に優れたアイヌ文様をあしらった小物などステキなお土産も見つかる。

テーマパークのようなかわいらしい街並みだが2階は住居になっていて、アイヌの人が暮らしている

雌阿寒岳や雄阿寒岳などの山々が連なる原生林に囲まれる阿寒湖。アイヌの人々は自然をカムイ(神/霊)として崇めてきた。阿寒湖畔には、日本最大のアイヌコタンが存在する。コタンはアイヌの言葉で「村」や「集落」という意味である。このコタンには、現在も36戸・約130人が暮らし、アイヌの伝統工芸品などを販売する店が軒を連ねる。コタン内には、アイヌの古式舞踊を公演する「阿寒湖アイヌシアター〈イコロ〉」や、厳しい自然と共存してきた昔のアイヌの暮らしを紹介した、伝統・創造「オンネチセ」などがあり、誰でもアイヌ文化に触れられる観光スポットにもなっている。

阿寒湖アイヌコタンの中央に建つシンボル、伝統・創造「オンネチセ」。アイヌ語でオンネは「大きな/完成に近づいた」・チセは「家」を意味する

かわいらしい「アイヌコタン幸福の窓」は絶好のフォトスポット

アイヌコタンの店にはそれぞれに個性があって、そぞろ歩きが楽しい。アイヌ文様にはさまざまな意味があり、なかには魔除けの意味があるものも。購入の際には店の人にどんな意味が込められているのか尋ねてみよう。コタン内の「熊の家」は木彫りクマの申し子と呼ばれる作家・藤戸竹喜(ふじとたけき)の店だ。竹喜は、木彫りクマの名手として知られた父のもと12歳からクマ掘りを始めた。父から渡された丸太で、自分なりに彫刻を施すも、それが父のお眼鏡にかなわなければ、すぐ火にくべられたという。やがて、竹喜は野生の力強さを繊細な技で表現する木彫家となった。アイヌ民族と「クマ彫り」としての誇りを持ち続け、2018年(平成30)に84歳でこの世を去った。

コタンの中央にあるカムイニ(神の木)が、コタンの雰囲気を盛り上げる

この世のあらゆるものに魂が宿ると考え、自然と調和しながら生きてきたアイヌの人々。その精神に触れられるツアーも開催されている。アイヌのガイドとともに、阿寒湖を囲む森を歩き、民族楽器のムックリを森のなかで演奏する「森の時間」ツアーは所要時間90分。オプションで、ムックリを自分で作ったり、アイヌ料理のランチを食べられたりもする。また、アイヌ文様の意味を学びながら、小物やアクセサリーを作る刺繍体験や木彫り体験も行っている。参加には予約が必要。このアイヌコタンは、阿寒の自然環境を守るために尽くした前田家の3代目でアイヌの母と呼ばれた前田光子が、無償で土地を提供したことでできた。民族名として定着している「アイヌ」は、アイヌの言葉で「人間」という意味だ。

アイヌ民族の目線で阿寒の自然を見ると、違う美しさが見えてくるはずだ