庚申さんの魅力を伝える「奈良町資料館」で疫病退散を祈願!


2020.12.26

トラベルjp 旅行ガイド

奈良市の観光スポット“ならまち”にある「奈良町資料館」は、入口に吊るされた身代り申が目を引く入館料無料の私設資料館。館内には、疫病退散にまつわる庚申信仰のご本尊が祀られており、併設の売店では身代り申を販売。このほか、恋愛成就や、子宝恵授などに霊験あらたかな吉祥天女像も祀られています。ならまちの隠れたパワースポットとして人気の奈良町資料館を訪れてみませんか?
奈良町資料館で来館者を出迎える「身代り申」とは
奈良町資料館は、1985年(昭和60年)に、ならまちの歴史を伝えるために開館しました。館内への入口は、北側と西側の2ヶ所あり、北側の入口は、住民が町を守るために通行人を改めた「木戸」になっています。
ところで、奈良市を代表する観光スポットのひとつである“ならまち”とは、行政地名ではなく、元興寺旧境内を中心とした地域のことを言います。
南都七大寺のひとつ、元興寺は、1451年(宝徳3年)の土一揆で焼失し、その跡地に人々が生活するようになり、ならまちとして栄えました。ならまちには、江戸時代の末から明治時代にかけての町屋が数多く残り、面影を今に伝えています。
資料館の入口に吊された赤いぬいぐるみは、庚申(こうしん)といい、申をかたどった御守りです。
魔除けを意味し、家の中に災難が入ってこないように吊します。災いを代わりに受けてくださることから「身代り申(みがわりざる)」と呼ばれ、また、願い事を背中に書くことから「願い申(ねがいざる)」とも言います。
奈良町資料館は、もともと1907年(明治40年)に、ならまちで蚊帳を製造する南商店として開業しました。あまり知られていませんが、奈良県は、かつて「蚊帳(かや)」の一大生産地でした。資料館に掲げられている看板は、その当時のものです。
「吉祥天女」から恋愛成就や子宝恵授などの御神徳をいただく
館内には、室町時代の土一揆で、元興寺とともに焼失した吉祥堂が再建されています。吉祥天女像の左手には、如意宝珠が。如意宝珠とは、すべての物事を思い通りにかなえてくれるという珠のことです。
恋愛成就や子宝恵授などの御神徳がいただける吉祥天女の御守りは、如意宝珠にあやかった水晶のストラップがおすすめ。水晶は、最強のパワーストーンと呼ばれ、浄化、強化、潜在能力の開花などの意味を持っていて、幸運を呼び寄せる力がある特別な石です。
昔懐かしい絵看板や各種民具の見学を堪能
注目のコーナーとしては、現代の企業ロゴの起源ともいえる江戸時代から明治時代にかけての絵看板が。先代の当主が、蚊帳の行商中に集めてきたコレクションです。
薬屋の看板では、松尾健康堂の看板が面白い。シルクハットをかぶった外国の紳士が、腹痛に悩む人のところに黄金の馬に乗って疾走して行く様子を表現。手にしているのは、江戸時代の1811年(文化8年)、わが国初の洋風名の売薬「ウルユス」。
ほかに、駄菓子屋の「あめ」と書かれたものや、算盤屋の算盤の実物大の看板など、その独特のデザインには驚かされるものばかり。
昔懐かしい各種民具では、香時計(こうどけい)が。その名の通り、お香の燃焼速度で、時の経過を測っていました。古くは、6世紀頃の中国で使われ、日本に伝来したもののひとつが正倉院にも残されています。
枚挙にいとまがないほど斬新で独創的な、昔の絵看板や各種民具をじっくりと観察してみましょう。
災いや病魔を退治する神通力を持つ「青面金剛」
奈良町資料館で最大の見どころが、庚申室に祀られている青面金剛(しょうめんこんごう)像。災いや病魔を退治する神通力があり、昔から「庚申さん」と呼ばれて親しまれています。
青面金剛は、身体は青色で、六臂(ろっぴ)または四臂、二臂。目は赤くて三眼で、怒りの形相をとり、足元に邪鬼を踏みつけています。身代り申の御守りは、この青面金剛のお使いです。
身代り申は、奈良町資料館でのみ制作販売されています。根付けでは1100円から、「ご縁があるように」との5つ連なった身代り申(五申)の4400円まで豊富に揃うので、お土産にも最適です。
身代り申は、ほかにもいろいろなサイズがあり、どれにしようかと目移りしてしまうかも知れません。
ならまち庚申さん信仰の本尊を祀る「庚申堂」
奈良町資料館の見学を堪能したら、すぐ近くにある「庚申堂」に行ってみましょう。ここにも、青面金剛像が祀られています。『庚申縁起』によれば、飛鳥時代に疫病が流行し、多くの人々が苦しみました。
その様子を見かねた元興寺の高僧、護命(ごみょう)僧正が佛様にその加護を祈っていると、青面金剛が現れ、「汝の至誠に感じ悪病を払ってやろう」と言い、まもなく疫病がおさまった。それが1月7日で、この日が「庚申の年」の「庚申の月」、そして「庚申の日」であったといわれています。
それ以来、人々はこの地に青面金剛を祀り、悪病を持ってくると言われる「三尸の虫(さんしのむし)」を退治して健康に暮らすことを念じて講を作り、佛様の供養をしたと、この地で伝えられています。
よく見ると、庚申堂の屋根には、見ざる、言わざる、聞かざるの三匹の猿の像が並んでいます。これは、悪病を持ってくるという三尸の虫が、コンニャクと猿が大嫌いということに由来しています。なぜかというと、猿が仲間と毛づくろいする姿が、三尸の虫を退治しているように見えるから。
また、猿は昔から「厄が去る(猿)」という語呂合わせで、縁起のよい動物として扱われてきました。そのため、ならまちの軒先では、前述したように「猿」をかたどったぬいぐるみである「身代り申」を吊るして魔除けや災難除けとしているのです。
ならまちを訪れたら、ぜひ奈良町資料館や庚申堂を訪れて、過去からの不思議な伝承に触れて、吉祥天女や青面金剛に心願成就や疫病退散を祈願してみてください。
<庚申堂の基本情報>
住所:奈良県奈良市西新屋町
アクセス:JR奈良駅から徒歩約20分、近鉄奈良駅から徒歩約15分 

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奈良町資料館
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4.0

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place
奈良県奈良市西新屋町14
phone
0742225509
opening-hour
10:00-16:00
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