アイヌ文化発祥の地といわれる平取町二風谷地区。この二風谷地区を流れる沙流川流域で発展したアイヌ文化を学べるのが「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」です。
民族衣装や装飾品、アイヌの人々が使用していた生活用品など1000点近くの重要有形民俗文化財に指定された展示品が並ぶ施設です。
自然を尊び、自然から学び、自然と共に生きてきたアイヌ民族の文化を深く学べる、二風谷アイヌ文化博物館へ出かけませんか？
アイヌ民族の生活に触れる「二風谷アイヌ文化博物館」
新千歳空港から車でおよそ１時間と比較的アクセスしやすい沙流郡平取町二風谷（さるぐんびらとりちょうにぶたに）に、アイヌ文化を伝える「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」はあります。
館内では暮らしについて紹介する「アイヌゾーン」にはじまり、祈りや信仰などアイヌ民族の精神文化を紹介する「カムイゾーン」、農耕や狩猟などに使う器具などを展示した「モシリゾーン」、そして装飾品などが数多く展示された「モレウゾーン」と続きます。アイヌ文化を、明るさを抑えた照明の中に浮かび上がらせる展示は、本当に見応えがあります。
「アイヌゾーン」は木彫の彫刻品や、食文化を始めとする生活全般に関する古い用具類が展示されていますが、その中で特に目を引くのがサケの皮でできた靴。背びれが滑り止めになる冬の履物だったそうで、身を食べた後の丈夫な皮を利用したアイヌ民族の知恵がうかがえます。
見事な刺繍が施された美しい民族衣装
アイヌ文化といえばアイヌ文様を思いつくのではないでしょうか。衣類をはじめ身の回りのさまざまな生活用具にこの文様を見ることができ、男性は彫刻で女性は刺繍で表すのが基本だそうです。
刺繍が全体にほどこされているのがアイヌ衣装の特徴で、さまざまな文様を見ることができます。
これらの文様に意味があるのをご存知ですか？アイヌ刺繍でよく見かける渦を巻いたような文様の「モレウ（ゆるやかに曲がっている）」には「家族が健康で長生きできるように」という願いが込められています。その他「コタン（アイヌ語で集落や村落）に争いごとが起こらないように」とか「家族が繁栄しますように」などの意味を持っているのです。
それぞれの刺繍に込められた意味を思いながら見学するのも面白いのではないでしょか。
「二風谷アイヌ文化博物館」には日本一大きな丸木舟も展示
アイヌ民族は狩猟や漁、山菜採取や農耕によって食糧を得ていました。その時に使われた道具などが展示されています。クマ用の仕掛けの模型もあり実際に試してみることもできますよ。
真っ先に目を引くのが丸太舟。これらは太くてまっすぐな桂の大木をくりぬいて作った日本一大きな丸木舟です。アイヌの人々にとっては欠かすことのできない生活必需品である丸木舟を、機械がない時代に手彫りで作ったというのには驚かされます。
生活用品の他に儀式などで正装するときに身に着けていた装飾品も展示されています。
写真は「タマサイ」と呼ばれるネックレスで、大小のガラス玉を連ねたものです。ガラス玉はすごく高価で、アイヌの人々の間では刀や漆器類とともに宝物として重要な位置を占めていたのだそう。
美に対する気持ちはいつの時代のどんな人も変わらない、ということが実感できるのではないでしょうか。
展示品以外にも見どころ豊富な「二風谷博物館」
二風谷アイヌ文化博物館の野外施設としてチセ（家）が復元されています。アイヌ文化伝承を目的に建てられたチセ内の2棟では、工芸品づくりの実演を行っています。一方が木彫り作品、もう一方が二風谷アットゥシというアイヌの織物を作る様子を見ることができます。ぜひ中をのぞいてアイヌ工芸に触れてみてはいかがでしょうか。
※アットゥシ：オヒョウ等の樹皮の内皮から作った糸を用いて機織りされた反物。
チセ群のそばには工芸館が建っています。館内では木彫や刺繍などを実際に教えてもらいながら作ることができ、アイヌ工芸の伝承者による作品も販売されています。立派なアイヌ衣装もありますよ。アットゥシを利用した小物もあるのでお土産におススメです。
博物館に隣接していて無料で入館できる「沙流川歴史館」では、沙流川とその流域の自然や歴史の解説、二風谷の集落遺跡からの出土品の展示などがなされています。博物館と合わせて見学することをおススメします。
1000点近くの展示品の数々が文化財に指定されている「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」では、アイヌ民族の歴史や生活、信仰などを深く学ぶことができます。アイヌ文化に興味のある人も無い人も、ぜひここを訪れてはいかがでしょうか。
