石切り場から九谷焼まで「日本遺産・小松の石文化」をめぐる旅


2021.03.26

NAVITIME TRAVEL EDITOR

石切り場から九谷焼まで「日本遺産・小松の石文化」をめぐる旅

日本各地の旅に目を向けたとき、そこにしかない伝統や文化等を知ることができることは魅力ですよね。石川県の小松市には日本遺産にも認定されている「石」の世界が広がっています。有名建築に小松産の石が使われていることや、美しい絵付けが特徴の「九谷焼」にも石が使われていることはあまり知られていないのではないでしょうか。
今年は、全国100箇所以上の日本遺産(Japan Heritage)が一同に集結する「日本遺産サミット」の開催地にも選ばれている小松市をひと足先にめぐってみましょう。

  • 01

    小松の石の文化とは

    小松の石文化の始まりは弥生時代にさかのぼります。全国で4か所しかない碧玉(へきぎょく)の良質な産地であり、その加工技術が発達しました。古墳時代には古墳の石室にも使用された良質の凝灰岩石が小松市東部で広範囲にあり、江戸時代に加賀前田家三代利常公により、小松城と城下町の整備に伴い需要が拡大したため、その後も広く小松産の石が使われるようになりました。

    観音下石

    観音下石

    現存する有名な建築物にも小松産の石が使われており、黄色い色味が暖かな印象の「観音下石(かながそいし)」は国会議事堂の2階廊下の壁や、旧前田侯爵邸洋館に使われています。青白く耐久性に優れた「滝ケ原石(たきがはらいし)」は、ブルーボトルコーヒー品川の店内に使われ、クールな印象を崩すことなく石の温かみを添えています。
    他にも様々な建築物でも使用されている小松の石をさっそく見て行きましょう。

  • 02

    江戸時代から現在まで稼働し続ける「滝ケ原石切場」

    小松空港から車で30分のところに、小松市内で現在も稼働している石切場「滝ケ原石切場 本山丁場」があります。こちらを見学するには事前にガイドさんへの予約が必要。今回は「いしかわ体験ランドClub」舟津さんに案内してもらいました。ヘルメットを装着して、周囲のものには決して触れないことを約束し石切場へと入っていきます。

    滝ケ原石切場

    滝ケ原石切場

    人力と機械を使い掘り進めていくという石切場ですが、50年前までは手掘りのみで、何十年もかけて掘り進めてきたといいます。滝ケ原は、江戸時代後期から切り出しが進められ、最盛期にはこの山の周辺7,8箇所から石の採掘が行われていました。当時は大変な人数の石工さん達が従事していたことでしょう。

    滝ケ原石切場

    滝ケ原石切場

    約6000万年前から火山の溶岩が堆積したことによりできた凝灰岩石で、滝ケ原産のものは色が青白く、水に強い石です。切り出した石からは、地層の線が見れたり、木の化石(珪化木)を見ることができたり、石から時の流れのロマンを感じることができる場所です。

    石から発見された珪化木

    石から発見された珪化木

  • 03

    岩山を切り開いて創られた「那谷寺」

    那谷寺(なたでら)は、白山信仰の開祖「泰澄(たいちょう)大師」によって約1300年前に開かれたといいます。お寺ですが入口には鳥居があり、神仏習合と「自然智(じねんち)」の教えを守っています。

    那谷寺の鳥居

    那谷寺の鳥居

    自然の岩山の地形を大切に本殿は岩の壁に寄りそうような形で建てられ、その不安定な足場に立つ建築のすばらしさは目を見張るものがあります。本殿の中は岩山の洞窟と繋がっていて本尊はその中に、「胎内くぐり」によって拝観できるようになっています。

    那谷寺

    那谷寺

    国の名勝にも指定されている「奇岩遊仙境」の長い年月をかけて形成された奇岩の中に並ぶ、石仏も必見です。
    自然と一体化しているため季節毎の風景が大変美しく、特に紅葉の季節は人気。雪を白くかぶる時期も趣があります。
    もとは立派なメノウの産地だったという「石」の観点で那谷寺を見るのも、また面白いのではないでしょうか。

    那谷寺

    那谷寺

    那谷寺
    rating

    4.5

    221件の口コミ
    place
    石川県小松市那谷町ユ122
    phone
    0761652111
    opening-hour
    9:15-16:00
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  • 04

    日本最古の宿「法師」

    那谷寺の直ぐ近くにあるのが、今から1300年以上前に同じく泰澄大師によって開湯されたという古い歴史を持つ「粟津温泉」です。中でも大師の命に従って弟子の雅亮によって開かれたという「法師」はギネスブックに「世界最古のホテル」として登録されたこともある歴史ある老舗旅館。二代目当主より代々「善五郎」と名乗り現在も46代当主の法師善五郎さんに継承され守られています。

    法師

    法師

    館内には、長い年月の中で蓄えられた歴史的な骨董品や美術品がコレクションとして収蔵されています。宿の中心には、2万坪を超える美しい日本庭園があり、玄関から通される茶室からはお抹茶をいただきながら絶景の日本庭園を眺めることができます。
    中庭には法師一の貴賓室である、総檜の書院造り「延命閣」があり、国登録の有形文化財にも登録されています。

    延命閣

    延命閣

    日本庭園の美しい茶室

    日本庭園の美しい茶室

    そして、ここでも石文化をみることができます。自家掘り源泉3本を所有する浴室には、青白く水に強い「滝ケ原石」が使われているのです。

    粟津温泉 法師
    place
    石川県小松市粟津温泉
    phone
    0761651112
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    ファミリールーム(5名)

    ¥20,386

    arrow icon

    2024/05/10 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/27

  • 05

    手にとれる石文化「CERABO KUTANI/九谷セラミック・ラボラトリー」

    最後に訪れたいのは、小松市が誇る“石文化”の九谷焼を通して体感できる場所として建てられた「CERABO KUTANI/九谷セラミック・ラボラトリー」です。九谷焼きの特徴は「赤・黄・緑・紫・紺青」の5色と、絵柄の線に使われる黒い下絵が見えることです。ダイナミックで多彩な絵付けで、古典的な柄から現代向けにアレンジされた可愛らしいものまで、食卓を彩ってくれるファンの多い焼き物です。

    建物のデザインは隈研吾氏のもの

    建物のデザインは隈研吾氏のもの

    九谷焼の中でも、小松周辺でとれる「花坂陶石(はなさかとうせき)」を粉砕してつくる磁器土を使っているものしか九谷と認めないという作家さんもいるという程。品質のよい陶石を使った九谷焼の製造工程をセラボ・クタニで見学してみてましょう。

    粉砕される石の過程を実際に見ることができる

    粉砕される石の過程を実際に見ることができる

    作家による作品の並ぶギャラリーを見て、気に入ったものは購入も可能。
    また、興味がわいたら、絵付けやろくろ体験ができるスペースもあるので、事前に予約して自分だけの作品が作れるのも魅力です。

    絵付け体験で焼いた皿は郵送も可能

    絵付け体験で焼いた皿は郵送も可能

    石にフォーカスして旅をすることで、改めて歴史の奥深さだったり、品質や技術が世界に誇れるものだったりと、日本の魅力を再認識することができるのではないでしょうか。

    九谷セラミック・ラボラトリー
    place
    石川県小松市若杉町ア91
    phone
    0761484235
    opening-hour
    10:00-17:00(最終入館16:30)
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    no image

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