「会津若松」と聞くと、歴史好きであれば、幕末に活躍した侍たちが浮かぶのではないだろうか。新選組や白虎隊などと縁の深い会津藩が有した鶴ヶ城は、東京ドーム約6個分の広さ。町のシンボルとして、当時の風格を今に伝えている。もちろん、磐梯山や猪苗代湖などもあり、東北の豊かな自然に恵まれた土地。福島県の酒蔵の数は、全国で4番目に多いというのもそう意外ではない。
-
01
レトロな町並み七日町通りある「末廣酒造」
末廣酒造 蔵外観
日光、越後、米沢街道といった主要道路が通る七日町通りは、昭和30年頃まで、繁華街として賑わっていた。今も、大正ロマンの雰囲気が漂い、町をぶらぶら散歩するだけでも楽しめるだろう。
そんな七日町通りある酒蔵が「末廣酒造」。創業1850(嘉永3)年、150年と長きにわたる酒造りの歴史を積みあげてきた。会津藩初代藩主の保科正之の家臣として家を興し、御用酒蔵となっていた新城家から、初代の新城猪之吉が分家して独立。幕末の動乱期の真っ只中にスタートをきったのだ。もともと会津の酒造家は、自分たちの手で酒造りを続けてきた。しかし、品質の向上を目指した3代目は、初めて県外から杜氏を招き酒造りを依頼。酒質の向上や売り込みにも成功し、明治40年代には、会津の酒蔵の中でも1、2位を争う生産量を誇るようになった。
-
02
山廃仕込みが生まれた「嘉永蔵」
末廣酒造では、"山廃仕込み"という新しい酒造りの手法が考案された蔵でもある。山廃仕込みは、生酛系の酒母の造り方のひとつ。生酛造りとは、昔から行われている手法で、自然界にいる天然の乳酸菌と取り込むことで酒母を造るという手法だ。その工程の中で、半切桶に蒸米、麹、水を仕込み、櫂を使ってすり潰していく、"山卸(やまおろし)"という重労働のうえ手間ひまがかかる作業がある。近年になって、米麹の酵素力を利用して米を溶かす方法、山卸を廃止したことから"山廃"と呼ばれる手法が開発された。元摺りの手間が省けるうえ、生酛系酒母の良さである酸とボディのある酛に仕上げられるという一石二鳥の方法だ。
蔵の中
この山廃仕込みを生み出したのが、大蔵省醸造試験技師であった嘉儀金一郎。大正のはじめから3年かけて、末廣酒造の「嘉永蔵」で試験醸造を行い、試行錯誤のうえ完成させたのだ。末廣酒造では、以来約100年にわたり嘉儀金一郎の"山廃"の手法を伝承し、「嘉儀式」として今に伝えている。
-
03
伝統の造りはもちろん、新しい時代の酒も登場
伝承山廃純米酒 末廣
伝統の山廃仕込みでできた「伝承山廃純米酒 末廣」は、甘味と酸味がバランス良く、しっかりとしたコクのあるタイプの酒質。30〜45度のぬる燗にして飲むのがおすすめだ。トマトベースのピザなど、チーズのクリーミーさが感じられる洋食とも相性良く合わせられる。
ぷちぷち
末廣酒造では、伝統的な造りを継承する一方で、低アルコールタイプの微発泡酒「ぷちぷち」といった、新しい酒造りにも挑戦している。ラベルも愛らしく、女性や若い世代の飲み手にも注目される商品だ。グラミー賞のパーティのお土産として、使われたこともあるそうだ。
純米大吟醸 ゆめのかおり
「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」で金賞を受賞したのが、「純米大吟醸 ゆめのかおり」。フルーティで心地よい香りのある純米大吟醸酒。キリリと冷やして飲むといっそう香りが引き立つ。甘い香りがありつつも、飲みごたえのある味わいなのが、末廣酒造の真骨頂ではないだろうか。
-
04
登録有形文化財に認定された「嘉永蔵」を見学しよう!
嘉永蔵
2018年、末廣酒造の嘉永蔵は、主屋や新蔵、煉瓦煙突、正面門など全9か所に渡り、国の登録有形文化財に認定された。蔵の趣のある木戸をくぐると、堂々とした吹き抜けのホール。その佇まいに、時代をこえた感覚が味わえる。仕込み蔵が見学できたり、展示室では昔の酒造りの道具に触れられたり。カフェやショップもあるので、ゆっくりと楽しめる。
-
05
末廣酒造の酒を買うなら、嘉永蔵の売店で
嘉永蔵の売店
会津若松駅の売店などにでも販売されているが、やはり一番手厚いのは、「嘉永蔵内の売店」。ほとんどすべてのラインナップが入手できる。試飲コーナーでは、常時6〜10種類の銘柄の試飲ができるので、自分好みの酒をじっくりと選ぶのにもいい。売店では、会津の名産品なども販売しているので、お酒と一緒にお土産に贈れば、喜ばれること間違いなし。
-
06
「彩喰彩酒 會津っこ」で会津地鶏と会津の地酒に舌鼓
※写真はイメージです。
鶴ヶ城から徒歩10分と観光地からのアクセスも良い「彩喰彩酒 會津っこ」(http://izakaya-aizukko.com/)は、末廣酒造をはじめとする会津の酒を飲みつつ、地元産の食材でつくる料理が楽しめるおすすめの飲食店。特に、会津地鶏の唐揚げや串焼き、オムレツなど、会津地鶏のメニューが豊富。コクやうまみのある味わいに、「伝承山廃純米酒 末廣」の燗酒などを楽しむのもいい。木のぬくもりある和空間で、のんびりと杯を傾けたい。
-
07
竹久夢二や与謝野晶子など文人にも愛された東山温泉へ
※写真はイメージです。
会津若松に泊まるなら、標高300mの高台にたち会津の市街を見渡せる絶好のロケーションにある旅館「会津東山温泉 御宿 東鳳」(https://www.onyado-toho.co.jp/)がおすすめだ。露天風呂から見る会津の町や夜の星空は、一見の価値あり。何度でも訪れたい温泉宿だ。東山温泉は、約1300年前、行基(ぎょうき)上人により開かれたと伝えられる歴史ある温泉地でもある。竹久夢二や与謝野晶子などの文人や、新選組で活躍した土方歳三なども訪れたという、歴史ファンにもうれしい土地。温泉で体を温めたら、会津の郷土料理と会津の酒を心ゆくまで楽しもう。
和室 (畳) バスルーム付き
¥12,750
2024/05/10 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金 更新日:2024/04/26
周辺の予約制駐車場