【取材】奈良・春日大社と縁のある全9室の老舗旅館で、日本文化とおもてなしに触れる


2023.09.23

一休コンシェルジュ

奈良県を代表する名勝・奈良公園。その一角に立つ「四季亭」は“ただひたすらに奈良の旅亭でありたい”という想いの元、独自の存在感を確立している老舗旅館です。今回一休コンシェルジュ編集部は、創業120年以上という長い歴史の中で培われた「四季亭」ならではのおもてなしや宿の魅力を、隅々まで取材してきました。奈良の歴史ある地に佇む、社寺風の老舗旅館近鉄奈良駅から歩いて約12分。世界遺産に登録される春日大社「一の鳥居」横に「四季亭」はあります。シンボリックな社寺風の建物は、明治32 年に創業されてから平成12年までの間に5度の改築をしているそう。それでも歴史と風格を感じさせる佇まいは、今なお残っています。建物内に入ると、凛とした空気が流れるエントランスがお出迎え。床の間の壁には、3代前の興福寺の管主の手による三幅対の書が飾られています。右から「蓬莱」「不老仙」「瑞雲」と読み、いずれも神仙思想・仏教に基づくめでたい兆しや事象を示しているそうで、ゲストへの歓迎の意が表現されています。チェックインが済んだゲストは、まずは茶室に案内されます。こちらでは茶菓子と、点てられた抹茶のおもてなしが。茶道の作法に則った形式美を味わいながら、茶菓子、抹茶の順にいただきました。和の心をしみじみと感じつつ「四季亭」での滞在に期待が高まるひととき。抹茶の苦味が旅で疲れた身体に優しく染みわたります。館内には、沢山の書が飾られています。元々は春日大社の宿坊だった同宿には、古くから高名なお寺の住職の書が寄贈されていたそう。達筆な書を見ながら館内を歩くのも、楽しみの一つですね。お部屋ごとに異なる表情を持つ、奈良の風情を感じられる客室お部屋は全部で9室あり、すべて設えを変えているそう。今回は「松の間」「鶴翔」「養老」の3室を見学させていただきました。まずは「松の間」へ。間取りは和室15.5畳と、控えが10畳。和室の一角には床の間が設けられ、広々とした造りです。中央の座卓は掘りごたつになっていて、ゆったりと寛ぐことができます。控えの間の奥に設えられた違い棚には、東大寺の旧住職・清水公照による画文集「ゑごよみ」の貴重な原本が。こちらは全部で12巻あり、四季を題材とした書画が月ごとに分けて描かれているそうです。すべての客室には1巻ずつ異なる書画が置かれていて、お部屋を変えて宿泊する常連客の楽しみの一つとなっているとのこと。「松の間」にあるのは、秋をテーマにしたもの。筆の軽妙なタッチで描かれた書画はとても味わい深く、ついページをめくりたくなります。和室と控えの間をつなぐ廊下部分には、茶器セットが。急須や湯呑みは九谷焼で、絢爛な意匠が素敵です。冷蔵庫の中には瓶ビールや、宿オリジナルの日本酒「四季亭」が(別料金)。お部屋中央の窓の外には石造りの箱庭があり、風流な雰囲気が一層引き立てられます。浴室には、檜風呂を完備。日中は窓から外の光が射し込む開放的な雰囲気です。ドアを開けた瞬間に檜の良い香りがあふれ、とても心地良い気分で入浴できます。バスアメニティは、ヒアルロン酸配合の資生堂「LE MONDOR」。続いて「鶴翔」へ。名称の由来は“鶴が飛翔する事で、幸福が舞い込む”という意味だそう。間取りは和室が12.5畳、控えが6畳あります。お部屋の玄関部分は、土間仕様。玄関専用の履物を履いて、敷き詰められた砂利の上の石畳を渡って和室まで行きます。このアプローチがあるだけでも、どこか特別感を感じさせてくれますね。途中には蹲(つくばい)が。雅やかな気分に拍車がかかります。和室は広々としており、日中は広縁側の窓から外の緑が見えて爽やかな雰囲気。床の間には立派な大安寺長老の書と、奈良の焼物・赤膚焼で作られた南円堂が飾られています。控えの間からも外の木々を眺められ、開放感があります。浴室はこちらも檜風呂。檜が贅沢に使われ、良い香りです。浴槽は少し背もたれに傾斜があって、入り心地を配慮された設計となっています。館内着には浴衣が用意されており、和の伝統美を感じるとともに滞在気分を盛り上げてくれます。お部屋に置かれた美しい螺鈿の硯箱の中には「四季亭」の姿がデザインされた便箋が。この硯箱を座卓に置いて、親しい人へのお手紙を書いたり旅情を綴ったりすれば、とても粋な旅の思い出になるでしょう。一つひとつの調度品が美しく、見とれてしまいます。ちなみにマッチや備品など、各所に掲げられている「四季亭」のロゴは“春夏秋冬、お客様と良い距離感をもって寄り添う”という意味を持っているそうです。最後に拝見したお部屋は「養老」。“一日泊まると寿命が一年延びるように”との想いで、養老の滝から命名されたそうです。間取りは和室が12.5畳、控えが4.5畳となっています。こちらは「四季亭」を代表するお部屋で、なんと館内で唯一、創業時から造りが変わっていないとのこと。天井の高さは、畳数との黄金比を計算して設計されているそうです。奥の床の間に飾られているのは、大和路比古の水墨画と、幕末から明治にかけての彫刻家・森川杜園による鹿の一刀彫。この組み合わせによって、お部屋の中に古都・奈良の風情が一層醸し出されています。こちらのお部屋にある「ゑごよみ」は「梅花一枝」という名前で、冬がテーマのもの。カラフルでとてもチャーミングな絵柄に、思わず笑みがこぼれてしまいました。他の巻を見たくなる常連さんの気持ちも分かります。和室に隣接した広縁、控えの間もゆったりとしていて、落ち着いた雰囲気で休むことができます。浴室は黒い石貼りの壁で、他のお部屋とはまた趣の異なる風情が。脱衣所の洗面台には、基本的なアメニティセットやドライヤーなどの他「ナチュラルデュー」の「へちま化粧水・乳液」が用意されています。ゆったり寛げる大浴場と、湯上りのドリンクサービス続いては、大浴場「不老湯」へ(入浴時間は15:00〜0:00、6:00~9:00)。浴場の床板には御影石、浴槽には古代檜が使用されており、男女対の造りとなっています。洗い場には「MIKIMOTO COSMETICS」のシャンプー類が用意され、細部へのこだわりが光ります。脱衣所には個室ブースがあり、落ち着いてお風呂上りのスキンケアができるのが嬉しいポイント。お部屋にもあった「ナチュラルデュー」のスキンケアグッズも備わっています。入浴後は夕食時間までの間であれば「れすとらん」に案内していただき、湯上りのドリンクサービスがあります。提供されるのは、生ビールやウーロン茶の他、アップル、オレンジジュースといった嬉しいラインナップ。「れすとらん」はカウンターとテーブル席があり、お部屋食付プラン以外で予約したゲストの食事は、こちらで提供されます(受付時間は、昼は11:30~15:00/最終受付14:00、夜は17:30~21:00/最終受付19:00)。美しい器を愛でつつ、奈良の旬をいただける「四季亭大和路料理」夕食では、旬の素材の味を活かした「四季亭大和路料理」を堪能できます。赤膚焼を中心に、一皿ひとさら素敵な器で供されるのも醍醐味の一つ。料理は季節感を大切にしているため、いただく時期やタイミングによって食材や料理内容が頻繁に変更されるそうです。今回は、そのうちの4品をご紹介します。まずは先附の「おくら養老寄せ」。雲丹、花穂、旨出汁で仕立てられ、赤膚焼鈴香炉に入って提供されます。こちらは前菜。大和紐唐辛子や鴨ロース、穴子八幡巻に蛸生姜煮などを盛り合わせでいただきます。左上にあるのは、赤膚焼の正倉院。右上の小さな行燈は、なんと薄く剥かれた大根でできています。煮物椀の器は、金箔で下がり藤が描かれた美しい輪島塗です。蓋を開けると、立ち上る湯気とともに鱸焼目・茗荷・魚素麵・柚子の清水仕立の煮物がお目見え。見た目からも、料理の滋味深さが伝わってきます。預け鉢は、鰊旨煮に茄子揚げ煮、そして大和真菜。この他にもお造りや口替り、台の物に留め肴、お食事など、メニューは盛り沢山です。ここに滞在することでしか味わえない、茶懐石をベースとした「大和路料理」のフルコースを、お腹いっぱい満喫してみては。「れすとらん」を出た所には、お土産コーナーが。お部屋にも置いてあった日本酒「四季亭」や「吉野の葛餅」といった地元のお菓子の他、筆ペンや可愛らしい置物などが並び、奈良ならではのユニークなお土産を購入することができます。今回は、奈良の歴史と文化を感じられる老舗旅館「四季亭」を取材しました。建物はもちろん、館内の調度品や食器、そして細やかで心温まるおもてなしを通して、歴史によって育まれた「四季亭」ならではの美意識に存分に触れることができました。皆さんもこの宿が織りなす風流な趣と上質なひとときを体験しに、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。動画記事も併せて読む:https://www.ikyu.com/concierge/92545 四季亭 奈良県/奈良公園 詳細情報はこちら  

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四季亭
place
奈良市高畑町1163
phone
0742225531
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お部屋タイプお約束プラン/一泊二食付き

¥29,700

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2024/05/10 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/27

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