【取材】金沢の中心地で1日4組だけをもてなす「料亭旅館 浅田屋」の魅力とは


2020.02.20

一休コンシェルジュ

「金沢で150年以上続く料亭旅館」と聞いて、みなさんはどのような印象を持つでしょうか?「風格ある佇まい」や「老舗の格式」、「敷居が高い」など、かしこまった印象を持つ方は少なくないかと思います。今回私は、金沢の台所「近江町市場」のすぐ側で150年以上も続く老舗「料亭旅館 浅田屋」を見学させていただき、現在の社長である浅田 久太氏にもお話を伺うことができました。良い意味で期待を裏切られたような、ホームページや写真の情報だけではなかなか分かり得ない「料亭旅館 浅田屋」の魅力をご紹介いたします。歴史と伝統を守りながらも進化を続ける老舗料亭旅館「料亭旅館 浅田屋」の歴史は、今から350年以上前、1659年まで遡ることができます。地元加賀藩から江戸へ荷物を運ぶ飛脚として始まり、のちに飛脚頭として飛脚たちのための旅籠も兼ねるようになります。そして1867年には、現在の浅田屋の原型となる旅館を開業しました。
当初の客室数は37室。団体のお客様も多い大衆旅館でしたが、「自分の目の行き届くお部屋数でお客様をおもてなししたい」という女将の想いを受けて、1982年に全5室お部屋食の料亭旅館へと転身しました。その後プライバシーを重視する風潮の高まりを受け、2015年には、別室で食事ができるように、お茶室として使っていたお部屋と、5室のうち1室をダイニング専用の部屋に変更。長い歴史と伝統を守りながらも、時代の変化に合わせて少しずつ進化を続けています。世界が認めた、伝統にとらわれない浅田屋流の加賀料理「浅田屋の特色は何かと言えば、まずひとつは料理です」と自信を持って語る浅田氏。「料亭旅館 浅田屋」は、世界に知られる格付けガイド誌への掲載やグルメメディアなどにも選出され、現在も変わらずその評価を獲得し続けています。
しかし、多くの人々を魅了し続ける料理についてお話を伺うと150年以上続く老舗料亭旅館としては少し意外な回答が返ってきました。「伝統的な加賀料理にはあまりこだわっている訳ではなく、美味しいものであれば何でも取り入れようというスタンスです。
例えば、冬の名物料理のひとつである『トリュフ茶わん蒸し』。カニのほぐし身とトリュフを入れた茶わん蒸しにトリュフ餡をかけ、スライスしたトリュフを飾ったものですが、ニューヨークにあるフレンチレストラン『ブーレイ』で実際に提供されているメニューの浅田屋バージョン。
金沢の料亭とニューヨークのレストランで毎年行っている料理人の交換留学を通じて、シェフのブーレイ氏から直々に教わった公認メニューなんです」「トリュフやキャビア、フォアグラといった食材は和食ではタブーとも言われていますが、浅田屋ではそこも『美味しければいい』『お客様に喜んでいただければいい』という考えでやっています」と、笑顔で語った浅田氏。料理人の交換留学や様々なシェフとの交流を通じて得た新しい経験全てが浅田屋の料理に活かされ、伝統を超えた、進化した浅田屋流の会席料理を生み出すエッセンスとなっているのでしょう。食材に関しても100パーセント地産地消にこだわっている訳でなく、旬の地元食材を中心としながらも、各地の食材も積極的に採用するのが「料亭旅館 浅田屋」のスタイル。「例えばウニは北海道産、アワビは三陸産が美味しいに決まっているのはわかっている。無理やり地元のもので固めようとすると、美味しさのバリエーションにリミットがかかってしまうので、そこにはあまりこだわっていません。とは言え、その季節の美味しいものを求めて市場に行くと地元食材が約7割になりますけどね」と、浅田氏。伝統に固執することなく、「美味しさ」や「お客様の満足」を求めて柔軟に取り組まれていることが伺えました。細やかなヒアリングが叶えるパーソナルなおもてなし「料亭旅館 浅田屋」のもうひとつの特色が、お客様ひとりひとりに寄り添ったパーソナルなおもてなし。「うちは最大で1日4組しかいらっしゃらないので、お客様のお好みはできる限り全て対応しようという想いでやっています」と浅田氏がおっしゃるだけあり、食べ物やお酒の好みはもちろん、グルテンフリーのリクエストや宗教上の理由でNGな食材に関しても、事前に細かく要望をいただければ基本的にはお断りすることはないそう。食に関してだけではなく、枕は5種類、浴衣のサイズはなんと20種類から選べるというから驚きです。
食事の好みや注意事項はもちろん、枕の好みや浴衣のサイズも全ての情報は「カルテ」に保存。次回は何も言わなくともカルテ通りに全てが用意されるので、予約の度に同じことを伝えるわずらわしさがなく快適に宿泊ができます。
さりげなくも細やかなおもてなしは、浅田屋ならではのリピーター心をくすぐる魅力のひとつであり、大きな強みと言えるでしょう。滞在中の過ごし方や観光もお客様の目的に合わせて相談に応じ、「料理長と巡る近江町市場」や「庭師と巡る兼六園」など、今までに実現したものは数知れず。「どれも確約はできませんが、他ではできない本当の体験をしていただくことで、思い出に残る特別な旅のお手伝いができたらと思っています」と、嬉しそうに語られた様子が印象的でした。金沢の風雅を散りばめた数寄屋造りの上質な空間宿を訪れたお客様はまず始めに、玄関を上がってすぐのところにある「茶の間」に招かれます。こちらでおしぼりとお茶をいただきながら一息、現実世界とのスイッチを切り替えます。
多くの人々で賑わう近江町市場が目と鼻の先にあるにもかかわらず、館内ではその喧騒を感じることはほとんどありません。客室に向かいながら館内を見渡すと、調度品や工芸品、季節のお花などがさりげなく飾られ、空間を明るく彩っています。廊下に展示されたおびただしい数の鍔は、まさに圧巻。歴史好きにはたまらないコレクションです。4室ある客室のうち、今回は「葵の間」と「雲井の間」の2部屋を見せていただきました。
まずは2階にある「葵の間」へ。10畳の客室に広縁と坪庭のあるお部屋です。約2坪の広縁越しに坪庭を望み、窓からは自然光がたっぷりと差し込みます。取材時は、お食事用のレイアウトになっておりテーブルとイスが用意されていましたが、通常は座卓と座椅子が置かれ、足を伸ばして寛げるようになっています。バス・トイレなどの水回りも完備しており、コンパクトながら石の質感が美しいお風呂と、ゆったりとした広さのある洗面台も備わります。
タオルや歯ブラシ以外のアメニティーは備え付けではありませんが、フロントに連絡をすると、シャワーキャップや髪留めゴム、ブラシ、基礎化粧品セットなどを届けてくれるので、忘れ物をしてしまっても心配は要りません。「雲井の間」も2階にあり、10畳の客室に次の間と石庭を備えています。北側に面しているので外庭はありませんが、石庭付きの次の間の効果で広々とした印象です。暖簾の先には、洗面所やお風呂、トイレが。
「雲井の間」のお風呂は檜風呂。浴室に窓があるのは嬉しいですね。掛け軸や陶磁器はもちろん、金箔の模様があしらわれた輪島塗の電話機など、室内にさりげなく飾られている装飾品のひとつひとつが素晴らしく、老舗旅館ならではの風格を感じられました。広いお風呂で寛ぎたいという方のために、館内には貸切で利用できる家族風呂も備わります。窓の外には坪庭が設けられており、窓を開ければ坪庭を望む半露天風呂に。なんと浴槽にはジェットバスが付いています。カランとシャワーは2セット備わっているので、2人一緒にお風呂に入ることも可能です。ちなみに、お風呂だけでなく食事やチェックアウトのときなど、お客様が館内を移動される際にはなるべく他のお客様と顔を合わせることがないように、動線を配慮しているそう。
お客様が周囲に気兼ねなく過ごせるように、目に見えないところにまで気を配られていることに感動を覚えました。今回の取材を通じて、伝統に固執することなく柔軟に進化しようとする前向きな姿勢や、さりげないおもてなしや心遣いなど、「料亭旅館 浅田屋」の真髄を伺うことができました。「歴史にあぐらをかくことなく、お客様のご要望に合わせて進化していきたいという気持ちがあります。格式ある旅館であると同時に、少しずつ進化もしていきたいと創業から152年経った今でも思っています」という浅田氏の言葉の通り、今後も進化を続ける「料亭旅館 浅田屋」。次回訪れた際はきっと、また新しい驚きと感動を与えてくれることでしょう。 料亭旅館 浅田屋 石川県/金沢 詳細情報はこちら  

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浅田屋
place
石川県金沢市十間町23
phone
0762312228
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