【京都】花に彩られる襖絵〈大雄院〉、現代のアーティストによる襖絵が続々と。


2021.09.10

Hanako.tokyo

お釈迦様は生まれ、悟りを開き、そして入滅と人生の大切な場に植物があった。泥の中から茎を伸ばし花を咲かせる蓮は、修行で悟りを開く仏教の教えを表すとされる。また京都では、仏前に供える花に凝らした工夫から六角堂で生け花が誕生した歴史を持つ。そして今、襖絵(ふすまえ)や天井、清めの手水(ちょうず)にもあしらわれることが増えた、花に注目が集まる。今回は、襖絵が美しい〈大雄院(だいおういん)〉をご紹介します。江戸と現代の絵師による、禅の教えに通じる丸図。大方玄関には一面ごとに春夏秋冬を描き分けた襖。糸桜に留まるメジロ、山茶花に積もる雪などは絵師・安川如風によるアレンジ。是真作品を踏襲した蝶や貝、雀も添えられている。これまで寺院の襖絵といえば、文化財となったものは取り外されて美術館や博物館へ。現地に残るのはレプリカといった具合に、少々残念なことが多かった。ところが近年、京都の寺院で増えているのが新たな襖絵の制作や公開だ。大徳寺塔頭(たっちゅう)真珠庵、随心院、建仁寺塔頭両足院(りょうそくいん)。そして妙心寺塔頭大雄院でも4年の年月をかけた襖絵が2020年9月に完成したばかり。未来へ受け継がれる新たな作品を目にすることが、京都を訪れる楽しみに加わった。かつて明治の時代に御所として建てられた明治宮殿の広間・千種(ちぐさ)の間の天井には、江戸から明治にかけて活躍した美術家・柴田是真(しばたぜしん)による112の花の丸図が描かれていた。戦火で焼失し、今では直筆の下絵を残すのみとなった花の丸図を襖絵として復活させたのが、妙心寺塔頭大雄院の襖絵プロジェクト。「本堂には柴田是真による72面の障壁画が残ります。是真の素晴らしい作品を多くの人に知ってもらうべく、また、丸は禅の教えの円相にも通じることから『千種の花の丸襖絵』をと考えました」と住職の石河法寛(いしこほうかん)さん。宮絵師・安川如風(やすかわにょふう)により描かれたのは18面、43種の花の絵。「心の苦労も多い時代、見た方に笑顔になって、喜んでもらえればと『花ゑみの間』と名付けました。素晴らしい絵がもたらす癒しの場所を、100年200年と残していくのがお寺の役割かと」。次に目にできるのは今年11月。目にする日を思い心弾む、新たな作品の登場だ。〈大雄院(だいおういん)〉慶長8(1603)年、尾張藩家老・石河光忠により創建された、妙心寺の塔頭のひとつ。本堂(客殿)の襖絵72面には、柴田是真がひまわりなどを描いた「四季草花図」が残り、こちらにも注目したい。庭も見応えあり。
京都府京都市右京区花園妙心寺町52
075-463-6538
10:00~16:30(16:00受付終了)
拝観料600円。千種の花の丸襖絵完成記念図録は500円※通常非公開。秋の特別公開は11月上旬~中旬頃を予定。(Hanako1200号掲載/photo : Akira Yamaguchi text : Mako Yamato) 

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大雄院
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京都府京都市右京区花園妙心寺町52
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