天空の観音様と岩窟に篭る大日様!秩父札所・般若山法性寺


2018.07.04

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秩父札所の起源は、兵庫の書写山円教寺を創建した性空上人が、閻魔大王や、倶生神、善光寺如来などの13権者と、文暦元年(1234年)に開創したと伝わっています。各寺院のご本尊は秘仏で、12年に1度の午年に御開帳法要が行われています。般若山法性寺は秩父観音巡礼32番札所。岩船山を背にした寺院は、本堂に薬師如来、観音堂に聖観音が祀られ、山の頂上では天空の観音様と大日様と出会える感動の寺院です。
岩船山山麓の船若山法性寺!上階に鐘楼のある仁王門
法性寺の楼門は、山門と鐘楼が一体となった2層建ての鐘撞門。宝永7年(1710年)に建立された木造の門は、長い年月を経た風合いと重厚感があります。「般若山」の扁額が掲げられ、「日本百観音・秩父三二番御船観音」と書かれています。門の両脇は怒りの表情の阿形と吽形の仁王像が守っています。
日本百観音とは、西国三十三観音、坂東三十三観音に秩父三十四観音を加え、日本を代表する百ヶ所の観音巡礼所で、結願寺は、秩父三十四札所の水潜寺となっています。全ての札所を巡拝した後は、善光寺と北向観音へお礼参りをすることが習わしとされています。
法性寺は関東1都6県の花自慢の寺院が集まり、仏教寺院と自然の恵みを身近なものに感じてほしいと編成された東国花の寺の1つ。春のミツバツツジに始まり、夏のシュウカイドウ、サルスベリ、秋のリンドウと四季の花が境内を彩ります。
約80段の石段を登ると、法性寺の本堂があります。本堂には、東方浄瑠璃光世界(現世)で人々に法薬を与え、病を治す薬師如来が祀られています。その横には、札所本尊の御前立像の聖観音菩薩が祀られています。
本堂から、木々の緑の谷に小さく観音様が見えます。山頂の観音様に合うためにはここから約40分、険しい山道を登ります。境内には、奥ノ院遥拝所があるので足腰に自信がない人や、高所が苦手な人は、ここで参拝することもできます。
岩船山の岩肌に立つ回廊式の観音堂!裏の岩窟には子授け地蔵
秩父32番札所の観音堂の参道は、荒々しい岩肌に数々の石碑や石仏が並び、激しい自然の姿を目の当たりにします。そして、境内の新緑に、温かさすら感じる不思議な空間です。
秩父山地の渓谷にある法性寺観音堂は、斜面に建てられた懸崖造。宝永2年(1705年)に建立とされています。苔がむした観音堂の扁額に、「補陀巌」「般若堂」とあり、観音菩薩が降臨する霊場を示しています。
秘蔵のため閉ざされた扉の上には、笠をかぶり、櫂で船を漕ぐ聖観音菩薩の額が掛けられています。御詠歌には「願わくば 般若の船に乗りを得ん いかなる罪も 浮かぶとぞ聞く」とあり、観音菩薩は、穏やかな顔をして迎えてくれます。
また観音堂の裏には、子授け地蔵の小堂があります。右腕に杖、左腕に勾玉と子供を抱え、足元に2人の子供がすがっています。母のように優しい顔の子授け地蔵に心が洗われるようです。
法正寺観音堂の本尊も秘仏ですが、12年に1度の午年に御開扉の法要が行われます。開かれた扉の中の観音様はどのようなお顔をしているのでしょうか。
観音堂裏の岩窟は無数の蜂の巣のような穴があり、幻想的な風景に出会います。これは、砂岩層の塩類が表面にしみ出し結晶化され岩石を崩した現象の「タフォニ」です。法性寺は貴重な地層が見られるジオパーク秩父の見どころの1つでもあります。
奥ノ院と観音様、大日様への入り口は巨岩の狭間!途中には龍虎岩も
奥ノ院へは重なり合う巨大な岩の狭間をくぐります。山の斜面沿いの山道は、深い崖沿いや、大きな段差や鎖場などあり、険しい道のりです。奥ノ院への中間地点に龍虎岩があります。強力な力を持った、龍と虎が戦った後のように、岩崖に空いた大きな穴は不思議な形をしています。この穴には、蛇と蛙とナメクジが潜んでいます。
山頂手前のパックリと割れた岩窟に、人の死後、初七日から三十三回忌までの13法事の本尊とされる十三仏が祀られています。憤怒の相で、めらめらっと燃え上がる炎を背負った不動明王や、右手を上げ、左手を下げ、それぞれ掌を見せ穏やかな顔をしている釈迦如来などの石像は、かなり風化しています。岩船山の頂上はこの岩窟の上。森の山道とは風景が一変します。
ナメクジは蛇を溶かし、蛇は蛙を丸吞み、蛙はナメクジを簡単に食べることが出来ます。よく見ると、左の岩が蛇、上の岩に蛙、右にナメクジがいます。この3者は、遠い昔に龍虎岩で出会ってしまい、現在も三すくみの状態のようです。
龍虎岩には鎖につたわって登ります。穴の中には小さな祠があり、穴の中は観音堂裏の岩窟のように、無数の小さな穴があります。この大きな穴も岩石中の塩類の結晶によって崩されたのでしょう。
十三仏の岩窟へは、岩場を削った石段を鎖の手すりにつかまりながら登ります。岩船山は船の底のような一枚岩の山。頂上の舳先に観音様、船尾に大日様が祀られています。岩窟はほぼ中央にあります。
めまいがしそうな断崖!舳先に立つ岩船観音は天空の観音様
観音堂から、深い森の山道を登った山頂は、青空が広がり風景が一変します。岩船山は長さ200メートルに及ぶ巨大な岩山。船形の山の舳先に蓮華の蕾を持った岩船観音が立っています。舳先の両側は断崖絶壁、恐怖で足がすくみますが、本堂から見た観音様に合うことが出来た達成感はとても大きいものです。観音様は岩山中央から見ると空中に浮かんで見え、まさに天空の観音様です。
岩船観音は、人々の救いを求めれば様々に姿を変え、手を差し伸べる聖観音菩薩。聖観音は、千の手に武器や盾を持ち、色々な道具と手段を使い人々を救う千手観音や、十一の顔で病気や災害などに救う十一面観音などに変化身するとされています。天空の観音様は空から私たちを見守っているようです。
本堂前からから小さく見えた観音様は、その周りを木々の緑に包まれ空中に浮かんでいるようです。観音様の足元に行くと、眼下に小さく法性寺の本堂が見えます。
近くで見る観音様は穏やかな表情で、蓮華の蕾を持っています。悟りを開いた大日様に対して、菩薩は悟りを求めている仏です。そのため持っているのは蕾なのでしょうか。しかし高い水準で悟りを求める仏は、私たちにとって身近な存在。青空に立つ観音様は凛として優しく迎えてくれます。
岩窟に篭った大日様は、更に鎖をつたわらなければ会えない!
大日様は、観音堂とは反対側の岩船山の艫に、高さ10メートルほどの岩の上に祀られています。岩窟に篭っているので、岩の下からその姿を見ることが出来ません。登り口は岩の右側にあり上に登るためには、鎖をつたわり回り込んで大日様の左側に出ます。下は断崖絶壁。ここまで来てさらに、参拝者の思いを確かめているようです。
岩の上は、大日様が籠っている岩窟の前に、半畳程度岩が削られて平らになっています。岩の上からは、小鹿野町の街並みや、秩父山地の山々が一望でき、鳥になったようです。山の舳先に立つ観音様は岩船山の航路を見守り、大日様は、船長のように、法性寺や観音堂など、岩船山全体を見守っているようです。
断崖絶壁の岩船山の山頂から境内に戻ると、今までの緊張感がほぐれます。境内のベンチに腰を下ろすと、穏やかな達成感を感じます。そして、遠くに見える観音様と心がつながっているように感じます。法性寺の御朱印は、「お船観音」「聖大悲殿」「大日如来」の3種類。大日様の御朱印は奥ノ院へ行った人だけに頂ける貴重なものです。四季折々の花が咲き、舟を操る観音様や、岩窟の子授け地蔵など、見所満載の法性寺で、天空の観音様と大日様に出会ってください。
大日様は森羅万象とされ、この世の最高位の存在で、全ての生き物の根本となる根本仏とされています。また大日様は、未と申生まれの人を一生守る十二支守り本尊でもあります。
大日様は蓮華座の上に座り、左手の人差し指を右手で握る、智慧の象徴、智拳印(ちけんいん)を結んでいます。断崖絶壁の恐怖に打ち勝った参拝者だけが合える大日様は、静かに目を閉じ、安らかな顔で迎えてくれます。 

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秩父札所32番 法性寺
place
埼玉県秩父郡小鹿野町般若2661
phone
0494753200
opening-hour
[3/1-10月末]8:00-17:00[11/1-…
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