ナニこの野外大歌舞伎?栃木・烏山「山あげ祭」は規格外のユネスコ無形文化遺産


2018.06.24

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山あげ祭は、栃木県那須烏山市で毎年7月下旬に行われる国指定重要無形民俗文化財「烏山の山あげ行事」と八雲神社の神輿などで構成されるお祭り。
烏山の山あげ行事とは、450年以上の伝統を誇る日本一の野外歌舞伎舞踊で、ユネスコ無形文化遺産に登録されていますが、烏山の町なかを封鎖して行われる壮大な野外歌舞伎以外にも、「山」と呼ばれる巨大な舞台装置の移動や設置など、たくさんの見どころのある規格外のお祭りです。
烏山「山あげ祭」の由来と見どころ
烏山の山あげ行事は1560年、時の烏山城主那須資胤が、牛頭天王を八雲神社にお祀りし、疫病防除・五穀豊穣・天下泰平を祈願した際の奉納余興が起源とされています。当初は相撲や神楽獅子等が行われていましたが、やがて江戸歌舞伎が流行したのをきっかけに常磐津所作が奉納余興として行われるようになり、今日のような全国でも例を見ない絢爛豪華な野外歌舞伎舞踊となりました。
昭和54年2月には国の重要無形民俗文化財に指定され、また平成28年には全国33の「山・鉾・屋台行事」のひとつとしてユネスコ無形文化遺産に登録されています。
山あげ行事の「山」とは、野外歌舞伎の舞台背景として使われる「はりか山」のこと。網代状に竹を組んだ木枠に烏山特産の和紙を幾重にも貼りその上に山水を描いたこの大きな「山」を人力であげる事から、「山あげ」と呼ばれるようになりました。
野外歌舞伎の舞台背景となる「山」は前山、中山、大山の3つがあり、その年の祭りの当番町となる若衆により1年をかけて作られたもの。特に高さ約10メートルを超える大山をあげる瞬間は迫力満点で、このお祭りの見どころの一つでもあります。
烏山の山あげ行事の「舞台の裏側」もこのお祭りのもうひとつの楽しみ方。豪華絢爛な舞台の裏で、若衆たちが一斉に舞台を組立てたり、舞台背景となる山をあげたり、さまざまな舞台演出を人力で支えたりと、一糸乱れぬ団体行動を見せてくれるのです。
そんなシーンのひとつに舞台装置の手持ち移動があります。期間中、野外歌舞伎は町内の各所で行われるため、巨大な舞台装置一式も移動させなければなりません。その移動ももちろん若衆たちの手持ち。3日間でその移動距離は約20キロとも言われていますが、一糸乱れぬ団結力で町なかを駆け巡る様子は大迫力です。
山あげ祭の必見シーン、屋台お囃子の競演「ブンヌキ」
山あげ祭は、烏山の6つの町の輪番制により行われています。それぞれの町が、山あげ祭を行う道具と屋台を所有し、祭り当日には華やかに彩られた各町の屋台が繰り出されます。
数年に一度、特別な祝い事がある年には6町全ての大屋台が勢ぞろいし、JR烏山駅前から市内の目抜き通りを進む大屋台パレードが行われます。近年では烏山線開業90周年やユネスコ無形文化遺産登録記念の際に実施されましたので、パレードの有無はその年の予定表をチェックしてみてください。
この各町の屋台が集まって行われるお囃子の競演「ブンヌキ」もこのお祭りの見どころのひとつ。6町の屋台が向かい合わせとなり、約30分の間、笛、大鼓、鉦を万雷のごとく鳴らし続け、相手よりもリズムの良さ、音量の大きさと力強さ、持続力などを競います。囃子方の交代は一切できず、若衆達は大きなうちわで囃子方を扇ぎ、また自身も雄叫びを上げて景気を付けます。
ブンヌキという名称は「屋台の障子をブン抜いて行うから」、「空をブン抜く程の音量だから」など諸説ありますが、演者も観客も一種のトランス状態になってしまうかと思うほど圧巻の様子は必見ですので、こちらもぜひ時間と場所をチェックしておいてください。
山あげ祭は舞台装置の設営見学も面白い!
山あげ祭では、ぜひ野外歌舞伎の舞台設営の様子も見学してみましょう。
舞台設営は開演時間の約40分前から行われます。まず当番町の屋台が到着し、地車から道具が下ろされ、本舞台が設営されます。そして舞台の背景となる「前山」「中山」「大山」と呼ばれる3つの山の土台が設置され、その場で組み立てがはじまります。
それぞれの組み立てが終わると、前山、中山、大山の順に次々と山があがります。特に、高さ約10メートルを超える大山をあげる瞬間は迫力満点で最大の見所。うまく上がると観客は思わず拍手喝采、当番町の若衆にとってはほっと一安心の瞬間です。
こうしていつの間にか町の道路上約百メートルの間に御拝、舞台、座敷、波松、舘、前山、中山、大山といった舞台装置が瞬く間に配置されます。3つの山も遠近法が効いていて見事な舞台背景となっていますね。
山あげ祭の野外歌舞伎は昼は灼熱、夜は妖艶。
舞台の設置が終わると、いよいよ野外歌舞伎の開演となります。山あげ行事で行われる歌舞伎演題は全部で9演目ですが、山あげ祭のシンボルともいうべき「ガマ」が登場する「将門」、鬼女の迫力が特徴的な「戻橋」などが主要な演目とされています。
それにしてもこの野外歌舞伎、遠くから眺めると完全に町の商店街の真ん中で行われていることがよくわかります。まさに規格外のお祭りですね。
このように舞台前は多くの観客で大変混雑しますが、先着順で有料桟敷席が販売されることもありますので、希望される方はお早めに会場にお越しください。
山あげ祭の野外歌舞伎は夜になるとライトアップされ一層妖艶な香りが漂います。1年のうちで日差しが最も厳しい季節に行われる山あげ祭ですが、夜の公演は、多少の熱気は残しつつも、落ち着いて観劇することができます。
この山あげ行事の舞台に上がる演者たちは「烏山山あげ保存会芸能部会」に属し、1年を通じて稽古に励んできた人々。日中の酷暑の中、板張りの舞台は火傷しそうなほどの熱さとなりますが、そんな中でも美しく舞い続けることができるのは、まさに日々の稽古の賜物ですね。
山あげ祭の予習もできる「山あげ会館」や龍門の滝もおすすめ
烏山の中心部にある「山あげ会館」。ここでは「山あげ祭ミニチュア劇」や大型スクリーンによる山あげ映像の上映も行われていますので、山あげ祭の予習をすることもできます。土産物の売店や休憩スペースもありますので、催しの合間に暑さ対策で利用するのにも便利です。
また烏山の郊外には那珂川の支流である江川が高さ20m、幅65mに渡って流れ落ちる大滝、龍門の滝があります。大蛇が住むという伝説もある迫力満点の滝つぼ近くまで遊歩道で降りることもでき、また、滝の上にはJR烏山線が走っていて、列車と滝を一枚の写真におさめることもできます。
山あげ祭期間中は、市街とこの龍門の滝とを結ぶ無料の観光周遊バスも運行されていますので、あわせて観光するのもおすすめです。 

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斉藤家
place
栃木県那須烏山市中央1丁目17-10
phone
0287831115
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山あげ祭
place
栃木県那須烏山市金井2丁目
phone
0287831115
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