ズーラシア近くにある山野草の宝庫「四季の森公園」めぐり


2018.05.12

トラベルjp 旅行ガイド

今や首都圏の公園でも、春夏秋冬それぞれの季節“らしさ”が求められています。横浜市緑区と旭区にまたがる県立四季の森公園も、その名の通り四季折々の自然が楽しめるスポット。初夏には鮮やかな緑の下、野生ランを始めとした様々な山野草が花開き、鳥や昆虫も訪れて一際賑やかな雰囲気に! 著名な動物園「ズーラシア」に隣接する立地ながら、昔ながらの谷戸環境を今なお色濃く残す自然公園の魅力をたっぷりとご紹介します。
花と緑の谷戸型公園で、ゆったりと癒される
深い森に囲まれつつ、所々に芝生広場も広がる四季の森公園。山野草を中心として自然度の高さが注目されることが多い公園ですが、敷物を敷いてピクニックも楽しめる環境となっています。すぐ近くには菜の花などの季節の花が咲くスペースもあり、彩りを添えてくれることでしょう。
ちょうど公園の中央付近にも芝生広場がありますので、ここを拠点に園内全域を歩き回ってみるのもいいかもしれません。
ビジターセンター近くの大きな池には、GWが近づくと谷をまたぐように「こいのぼり」が掛けられます。この池にはトンボはもちろん、時折カワセミも姿を現わすため、三脚を担いだバードウォッチャーがよく訪れます。
センターでは公園の最新情報が入手でき、今見られる動植物とその場所がわかりますので、まず最初に訪れておくといいでしょう。また、この池の近くでは早春にはカタクリの群生が、夏場にはヤマユリの群落が見られます。チェックしておきたいですね。
公園の南側には、スタイリッシュな整形式花壇も。四季折々のカラフルな園芸植物が見られる、公園内でもちょっと異色で美しいスポットです。噴水もあり、初夏以降の暑いシーズンにはちょっとした清涼感をもたらしてくれます。
また、近くには展望台もありますので、緑豊かな景観をお楽しみいただけます。
“自生ラン”ならではの凛とした美しさ
晩春の林床部でぜひチェックしておきたいのが、野山に自生するランの仲間。贈呈用に作出された胡蝶蘭などと比べると花は小さく華やかさに欠けるかもしれませんが、薄暗い林の中ではよく目立ち、独特の気品ある美しさを楽しめます。
写真はキンラン(金蘭)。首都圏では代表的な自生ランで、明るい黄色の花が特徴です。フラッシュの光を当てると名前の通り金色に輝き、一際美しさを増すことでしょう。
黄色く輝くのがキンランならば、清楚な白い花を咲かせるのはギンラン(銀蘭)。キンランとほぼ同じ時期、同じ環境で花を咲かせ、同じスポットで見かけることも少なくありません。株はややキンランより小さく、花色も相俟ってやや目立ちにくいので、キンランのある林内を歩く際には地面によく目を凝らしましょう。
キンラン・ギンランとはやや形が異なりますが、このエビネも自生ランの一種。林床にまとまって咲く傾向があり、時には10株以上の群落を作ることもあります。
ここ四季の森公園ではシーズン中ならよく見られる自生ランですが、近年の山では開発や栽培目的の乱獲などにより数を減らしつつあり、その多くが絶滅危惧種とされています。当たり前の話ですが、絶対に摘んだりせず、見て楽しむのみに留めるようにしましょう。
清らかな水環境が育む、水辺の昆虫たち
初夏、林と隣接した小川に目を向けると、時折キラリと輝く小さい棒のようなものが飛んでいるのを見かけます。正体はこのカワトンボ。名前の通り、晩春から夏にかけて小川の近くに姿をあらわす美しいトンボです。色はシルバーからメタリックグリーンまでと幅広いですが、どの個体も金属光沢を放ち、木漏れ日を浴びて輝く姿はとても神秘的。ぜひ、初夏の四季の森公園で会っておきたい1匹です。
こちらはヤマサナエ。いわゆる「ヤンマ」の仲間によく似ていますが、サナエトンボ科という別の種に属する大型のトンボです。基本的に水環境の整った清流域を好み、都市公園などではあまり目にする機会がありません。言い換えるならば、良好な環境の指標動物ともいえる存在。このトンボが見られるということは、他にも色々と珍しい生きものがみられるかも?
こちらはトンボではなく、ヤマトカワゲラという小さな昆虫。華奢な体型でヒラヒラとゆっくり飛び、少し頼りない印象を与えるかもしれません。
一方で幼虫の時は水の中で暮らし、トンボのヤゴと同じく小動物を捕らえて食べる獰猛な肉食系。この幼虫は清らかな水のある環境でしか生きられず、ゆえに成虫も、本来であれば山地の渓流などでしか目にする機会がありません。そんな虫に出合えるということからも、四季の森公園の自然度の高さがよくわかりますね。
他にも色々! 四季の森公園の小動物たち
写真は、ホーホケキョ!でおなじみのウグイス。
春~初夏にかけて公園内のあちこちで鳴き声を聞きますが、その姿を捉えるのは至難の業。見ての通り非常に目立ちにくい色ですし、ちょこまか動き回る上に、臆病なのかすぐに藪に隠れてしまいます。
この他にも、夏場であればキビタキなどの小鳥が見られる可能性もあります。また北口広場前の大きな池にはカワセミが姿をあらわすことも! 鳴き声を耳にしたらよーく目を凝らしてみましょう。
これはコジュケイというキジの仲間。
大きさは、ニワトリよりやや小さいくらいでしょうか? 写真ではかなり至近距離ですが、本来はとても警戒心が強く、人の気配を感じるとすぐに逃げ出してしまいます。元々は日本にいなかった「外来種」ですが、色が美しく、ウグイスなどの小鳥と比べると明らかに大きくてインパクトがあるため、好んで撮影するバードウォッチャーの方もいるようです。もし見かけたら、脅かさないよう足音を立てず、その場で観察・撮影してみましょう。
自然豊かで花も豊富な四季の森公園では、チョウの姿も数多く見られます。写真は、葉の上で日向ぼっこしているキタテハ。翅を閉じると枯葉のようですが、開くとご覧の通りなかなかの美しさです。
チョウは花の蜜を求めて飛来するため、森の中よりも、むしろ花壇の近くで見かけることが多いです。花にとまってくれることもあるので、写真を撮りたいのなら花壇で張り込みするのがおススメかも?
まだまだある、四季の森公園のおもしろさ!
最近、かつての里山(さとやま)暮らしをテーマにしたイベントや体験教室などが盛んに行われています。ここ四季の森公園でも、間伐材や植物の種などを使った工作体験や、自然観察会など、四季を体感できる自然公園ならではの催しが実施されています。Webサイトなどでよくチェックしておきましょう!
公園内には円形のステージがあり、地元の学生ブラスバンドグループによる合奏などが行われることも。自然度の高さのみならず、幅広い人が集い様々な形で満喫できる総合公園としての側面も併せ持っています。
不思議な形をしたこの花は、クマガイソウという自生ランの仲間。四季の森公園では園内のある一角にまとめて植栽されており、春のひと時にのみ咲いている姿を見ることができます。特徴的な形状の花はランの中でもかなり大きく、存在感バツグン。しかしながら野生のものは大きく数を減らしてしまい、キンランやエビネなどよりも深刻な絶滅危惧種として珍重されています。
ここのクマガイソウは人の手で維持管理されているものですが、植物園などでもなかなか見る機会の少ない植物なので、開花情報をチェックして見に行ってみましょう。具体的な見られる場所は、園内のビジターセンターで知ることができます。 

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県立四季の森公園ビジターセンター/管理事務所
place
神奈川県横浜市緑区寺山町291
phone
0459317910
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