完全防備で砂バトル!奈良県・廣瀬大社の奇祭「砂かけ祭」


2018.01.29

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春の足音が近づくにつれて、その年の豊かな実りを祈る祭礼が全国各地でとりおこなわれます。「御田植祭」や「おんだ祭」と呼ばれる祭礼です。しかし、同じ御田植祭でも、奈良県河合町の廣瀬大社の御田植祭は一風変わっており、関係者のみならず参拝者もお互いに砂をかけあってその年の豊作を祈るのです。今回は奈良県屈指の奇祭とされる廣瀬大社の「砂かけ祭」をご紹介しましょう。
廣瀬大社の奇祭「砂かけ祭」
「砂かけ祭」の俗称で知られる廣瀬大社の御田植祭は、毎年2月11日の建国記念日にとりおこなわれます。廣瀬大社は奈良県北葛城郡河合町に鎮座する神社で、主祭神は若宇加能売命(わかうかのめのみこと)。当地に社が設けられたのは、崇神天皇の時代であると伝えられています。『日本書紀』には、天武天皇の時代に大忌神がまつられたと記されており、古代以来の歴史を有する由緒のある神社であることがうかがえます。
砂かけ祭は、その年の豊作を祈る御田植祭の一種。各地の御田植祭と同様、農耕儀礼の所作がその中心となります。農耕に欠かせない動物といえば、田畑を耕す際に活躍する牛。写真の牛の被り物からは、砂かけ祭がどういった主旨の祭礼なのかが良くわかりますね。
月光仮面!?砂かけ祭の主役の田男
砂かけ祭りがとりおこなわれるのは、拝殿前の広場。午後2時になると、大勢の参拝者をかき分けるようにして、祭りの主役である田男(農作業な従事するもの)が広場に現れます。
田男のいでたちはご覧のとおり。田男の姿をはじめて目にする方は、その異様ないでたちに度肝を抜かれるのではないでしょうか。年配の方なら、往年の特撮テレビのヒーロー・月光仮面を連想するかも知れませんね。
もちろん、そのいでたちは砂の掛け合いを想定したものであり、ふりかかる大量の砂が目や口、衣服に入らないための防御措置にほかなりません。
それは参拝者の方々も同様です。おのおのレインコートを着たり、マスクやゴーグルを装着したりと、砂が入らないようにあれこれ工夫をしています。特にカメラに砂がかかると故障の原因になってしまいます。砂かけ祭りをご覧になる方は、カメラともども、万全の防備態勢でのぞみましょう。
農耕儀礼の所作から砂かけへ!雨に見立てた砂の掛け合い
田んぼに見立てた砂地の区画に入ると、田男はまず農耕の所作をおこないます。写真は農具を手にして田畑を耕す所作をおこなっている様子。田男は区画を一周しながら、砂地をせっせと耕していきます。このあたりの所作は、各地でとりおこなわれる一般の御田植祭と何ら変わりはありません。
しかし、その後からが異なります。田畑を耕す所作が終わると、付き添いの関係者の合図により、田男はそれまで手にしていた農具で地面を猛然と掘り返し、砂を参拝者に向かって掛けはじめます。砂の掛け合いのはじまりです。田男が砂を掛ける相手は、自身のまわりの人たちだけに限りません。遠巻きに見物している参拝者にも砂を投げ掛けます。男女の差もありません。子どもや老人にも容赦ありません。
一方の参拝者も負けてはいません。参拝者も田男に向かって大量の砂を投げ掛けます。まさしく砂バトルそのもの!砂の掛け合いを近くでご覧になりたい方は、自身にも砂が掛かることを覚悟しておいてください。
しかし、なぜ、砂の掛け合いなのでしょうか。実は農耕儀礼の一種である砂かけ祭りでは、砂は雨に見立てられているのです。つまり、砂の掛け合いが激しければ激しいほど、その年は日照りにならないと信じられています。砂の掛け合いは、図らずもその年の豊作を願うことにつながっているのです。
牛も参戦!さらに激しさを増す砂の掛け合い
砂の掛け合いは田男による農耕の所作のたびにおこなわれます。1回の掛け合い時間は5分程度。それがそれぞれの農耕の所作のたびにおこなわれます。所作が進むにつれて、田男の数が増え、やがて農耕に欠かせない牛も登場します。
もちろん、砂の掛け合いでは、牛も参戦!回を重ねるにつれて、砂の掛け合いも激しさを増します。
早乙女による松苗植えと御供まき
砂の掛け合いが終わると、早乙女が登場し、先ほどまで砂の掛け合いがおこなわれていたところに松苗を並べていきます。この所作は稲を田に植える様子を表しています。松苗がすべて置かれると、参拝者は関係者の合図で松苗を競い合って取り合います。この松苗を神棚に飾っておくと、縁起がよいとされます。
以上、一連の所作がすべて終わると、最後は神社の関係者による御供まきがおこなわれます。
御供のなかには、ご覧のようなお餅も含まれます。お餅は持ち帰って雑煮などに利用しましょう。お餅の表面に書かれた「田」の字からも、その年の豊作に対する関係者の願いが読み取れますね。
廣瀬大社の砂かけ祭り、いかがでしたか?砂の掛け合いを通じて、参拝者も祭りに参加出来るのは嬉しい限りですね。ただし、かなり高い確率で砂まみれになってしまうため、当日はレインコートを着込んだり、ゴーグルを装着したりと、完全防備で廣瀬大社に足を運んでください。 

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