【レポート】exonemo(エキソニモ)に揺さぶられる。個展「Slice of the universe」@MASAHIRO MAKI GALLERY


2020.03.27

OMOHARAREAL

MASAHIRO MAKI GALLERYで3月28日(土)まで開催中の、アートユニットexonemo(エキソニモ)による個展「Slice of the universe」を訪れた。会期は残りわずかとなっているものの、スケジュールが許すならばぜひ足を運んでみてほしい! 感性を刺激される、おすすめの展覧会だ。   exonemo(エキソニモ)は、千房けん輔氏と赤岩やえ氏によるニューヨークを拠点とするアートユニットである。1996年にインターネット上から活動を開始し、のちに現実空間へと領域を展開。以来20年にわたり、ユーモアのある切り口と新しい視点をもって、デジタルテクノロジーと現実世界との関係性にアプローチする作品を生み出し続けている。       会場エントランスの《Signature,2020》は、「exonemo」の立体シグネチャー(署名)だ。「m」部分は、ビットコインの株式チャートだという。取材時にはいい塩梅にM型天井を描いていた。 exonemo(エキソニモ)が結成された1996年は、Windows95発売の翌年である。インターネット接続機能を搭載したWindows95の登場により、それまで一部の専門家やマニアのものと思われていたPCやインターネットは、一般の人々に爆発的に普及するようになった。当時のネットフィーバーとも言える状況は、記憶に鮮やかな方も多いだろう(同じ頃、原宿ではエアマックス95の大フィーバー中であったことも……)。   まさに現代人の生活が大きな転換期を迎えた中、彼らはインターネット上から作品を発表し始めた。本展「Slice of the universe」では、これまでの代表作に新作を加えた23点が展示される。「Slice」とは、薄いひと切れ・断片といった意味を表す言葉だ。       スマホ画面同士のキス。燃やされたキーボード。     戦後前衛美術から若手現代アーティストを専門に扱うMASAHIRO MAKI GALLERYは、「表参道ヒルズ」の裏手にひっそりと佇んでいる。駅のA2出口から徒歩3分という、気軽に訪れられる立地がうれしい。       会場でまず目を引くのは、写真右手にある8点の《The Kiss》。あいちトリエンナーレ2019で発表された高さ約4mのモニュメント《Kiss,or Dual Monitors》が、バリエーション豊かな小型版となって増殖したものだ。   デジタルデータと3Dプリント彫刻の組み合わせから成ることから、“無限に量産可能である” というアイロニーを込めて、それぞれのタイトルは《ナンバー/∞》とされている。       窓辺に配置されて光を受ける《The Kiss 5/∞》。それぞれの画面に映るのは、そっと目を閉じた人物の顔だ。二本の腕には血管のようなコードが透け、蜘蛛の巣(web)のようなものが絡みついている。ただ携帯の画面を合わせているだけとも言えるのに、これをロマンチックだと感じてしまうのは、何なのだろう。       一瞬、絵画のようにも見える《HEAVY BODY PAINT》シリーズ(左)、《Body Paint 49”/Male/White》(右)は、いずれもモニターに物理的なペイントを施したもの。映し出されたモノや人物の輪郭をくり抜くように絵具が塗られている。展示室の隅でさりげなくスポットライトを浴びているのは、実際に使用された絵具と刷毛だ。       《Body Paint 49”/Male/White》は、ぜひ実際に目にしてほしい作品。呼吸してまつげを震わせる白塗りの人物が、ゾクゾクするほどのリアルさをもって迫ってくる。けれど彼は画面上の厚みを持たない映像であり、Sliceだ。現実世界に存在しているのは、塗られたモニターのほうなのである。       会場内にはソファの置かれたくつろぎのスペースが。壁の《A shot computer keyboard,sliced》は、キーボードをショットガンで破壊した(!)2019年の作品を踏まえて、本展のために再構築されたものだ。死せるキーボードの画像を解像度の粗いものから高いものまで何層も重ね、スクラッチしたように下のレイヤーをのぞかせている。       たとえ映像でも、暖炉って落ち着くな……なんて思っていたら、燃えているのは旧世代のものと思われるマウスとキーボードだった。撃たれたり燃やされたり、デバイスたちの受難は続く。その名も《Fireplace(暖炉)》である。       ミラーボールがデジタルデータを撒き散らす。 続く上階の展示室では、室内をさらに暗幕で区切った薄暗い空間へと進む。《High-speed WiFi》という作品は、鑑賞者の携帯を場内のWi-Fiに接続することで作動する仕組みだという。     接続した瞬間……手元の画面に文字が溢れ出し、空間全体に広がっていく。そして連動するように、天井から下がったミラーボールが激しく光を撒き散らす。日々、高速でやり取りされる情報を可視化して、文字通りデジタルデータを “浴びている” ことを実感させてくれる作品である。天体のタイムラプスムービーのようで美しい。       Wi-Fiは各国の言語で数種類用意されており、選択によって文字色が変化するよう。複数のものに接続があると、色が重なってさらに目くるめく光に包まれるので、お試しあれ。右手に見えるのは、本展と同じ名前を冠した新作《Slice of the Universe》だ。       宇宙の断面が、スクリーン上でカレンダーのように徐々にめくられていく。   exonemo(エキソニモ)は本展に寄せたコメントで、「Slice」という単語からは真っ先にピザを連想すると語った上で、情報の世界と物理的な世界が重なり合う自身の作品を「チーズが溶けて生地と一体化してきているピザ」に例えた。   大きな円から1スライスのピザを切り出すように、宇宙にメスを入れる。彼らの言葉を借りるなら、「宇宙を、つまりこの世界を理解する方法論として、Sliceを切り出すということは有効なのだ」。そしてその薄切れを受容する感覚器として、現代人の手の延長上には何らかの画面があるのではないだろうか?        ギャラリーから街へ 揺さぶられた感覚を持ったまま、街へ出た。ギャラリー最寄りである「表参道」駅A2出口の目の前には、街の目印的存在でもある「Apple 表参道」がある。しかしいつでも多くの人で賑わう同ストアは、時勢を受けて3月27日まで臨時休業中だ。誰もいない店内には、無数の物言わぬモニターが並んでいる。     exonemo(エキソニモ)のひとりである千房氏は、ふたつのモニターがキスをする作品《The Kiss》について、「世界中でコロナウイルスが拡大し、人と人が濃厚接触を避けなければならない状況に、期せずして呼応したよう」になってしまった、ともSNS上で語っている。   本展のあとに眺めるショーウィンドウは、身体のパーツが並んでいるようにも見え、これまでになく不気味に思えた。もしかしたら今の私たちの “いちばん感じやすい部分” というのは、各々が手にしたこの画面なのかもしれない。   ■概要Slice of the universe開催期間:2020年2月22日(土)〜3月28日(土)営業時間:11:30〜19:00定休日:日曜・月曜開催場所:MASAHIRO MAKI GALLERY住所:東京都渋谷区神宮前4-11-11入場料:無料       ちなみに…     ちなみに……このエリアでSliceといえば、“SLICE OF YOUR LIFE” の文字を掲げた「PIZZA SLICE2」が、ギャラリーから徒歩8分の距離にある。鑑賞後は、チーズスライスをかじりながら作品たちを振り返ってみるのも一興だ。    Text:Mika Kosugi  

MASAHIRO MAKI GALLERY(マサヒロ マキ ギャラリー)
place
東京都渋谷区神宮前4-11-11
phone
0364347705
opening-hour
11:30-19:00
no image

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