東海道新幹線・山陽新幹線にチケットレスで乗ることができるエクスプレス予約(EX-IC)は、ビジネスマンを中心に新幹線ヘビーユーザーには広く知られている。すでに会員になって使っている人も多いだろうが、まだ使っていない人、メリットがあるのなら使ってみようかという人のために基本、メリット、デメリットをまとめてみた。
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01
きっぷ売り場に並ばなくても列車に乗れる
エクスプレス予約の最大のメリットは、駅のきっぷ売り場に並ばなくてもよいことだ。とくに、急に思い立って新幹線を利用することになったとき、それが自由席にせよ指定席にせよ、きっぷを買わなくてはならない。ところが新幹線のきっぷ売り場は、窓口でも自動券売機でも常時列ができている。いくら本数の多い東海道新幹線であっても、並んでいるうちに列車の1~2本逃してしまうことがある。ところが、エクスプレス予約であれば、パソコン、スマホ、タブレットを使った予約が可能なので、駅に着くまでの電車やバス、タクシーでの移動中に指定券を確保し、駅に着いたら直接改札口へ直行、専用のカードを改札機にかざすだけでホームへ向かうことができるのだ。
エクスプレスカード専用ICカード。これを改札機にかざして入場する。
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02
エクスプレス予約は安いのか?
基本的には、自由席より若干安い値段で指定席が利用できると考えてよい。例えば、東京あるいは品川から新大阪まで行く場合、
通常期の運賃+料金=14450円(指定席)、13620円(自由席)
繁忙期の運賃+料金=14650円(指定席)、13620円(自由席)(年末年始、GWなど)
EX予約サービス =13370円
通常期の指定席料金よりも1080円安いことになる。ところで、エクスプレス予約の年会費は1080円だから、東京~新大阪を片道利用するだけで回収でき、1往復するだけでトクになる計算だ。また、列車の変更は、紙のきっぷの場合、1回のみ無料で可能だが、エクスプレス予約の場合は何回でも手数料なしで変更可能だ。出張先の会議が長引いたり急な予定変更があったときも、ネットで予約を変更すれば、列車の発車に間に合うかどうかハラハラすることもなくなる。順調に予定を消化し、早めに帰路につけるようになったときも時間つぶしの方法を考えることなく、早めに発車する列車へ変更してすぐに乗車することも可能だ。e特急券の利用票(指定券は別途発券)
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03
早特商品でさらにおトクに
あらかじめ予定が決まっていれば、さらにおトクに乗車することも可能だ。
例えば、乗車21日前までの予約「EX早特21」であれば
「のぞみ」限定で、列車の制限はあるけれど(朝夕の混みあう時間帯の列車は不可)
東京・品川~新大阪=11000円となり、通常運賃+料金より3450円もトクになる。
そんなに早くは無理という場合でも、3日前までの予約であれば、東京・品川~岡山以遠の長距離に限るけれど「のぞみ」がおトクに利用できる。
東京・品川~岡山=14400円となり、通常運賃+料金より2940円もトクになる。
東京・品川~広島=15900円となり、通常運賃+料金より3180円もトクになる。EXご利用票 チケットレスの場合の座席案内
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04
のんびり・ゆったり乗車も可能
例えば、東京・品川~名古屋=11090円(通常期の運賃+料金)であり、
エクスプレス予約=10110円(上記より980円おトク)であるが
3日前までに予約するEXこだまグリーン早特ならば、わずか9000円での利用可能だ。
つまり、エクスプレス予約の「のぞみ」普通車指定席よりも1110円、通常運賃+料金で乗る「のぞみ」よりも2090円も安くグリーン車に乗れるのである。もちろん、「こだま」は各駅停車であり、数多くの駅で後続の「のぞみ」「ひかり」に追い抜かれ、「のぞみ」なら1時間40分たらずのところを2時間50分ほどかかるので急ぐ人には向かないけれど、時間に余裕がある人にはぴったりのサービスだ。空いていることも多く、周囲でパソコンのキーボードを叩く音が気になる人、満席に近い状況の窮屈さが鬱陶しく思う人にはぜひおススメしたい。 -
05
ポイントを貯めてグリーン車にグレードアップ乗車
乗車毎に加算されるポイントを貯めれば普通車料金でグリーン車にグレードアップできる(グリーンプログラムという)。東京~新大阪に片道乗車すれば90ポイント(pt)獲得できるので、1往復なら180pt、6往復すると1080pt貯まる。1000ptでグリーン車にグレードアップできるので(ポイントの有効期限はある)、おおむね2カ月に東京と大阪の間を1往復すると、1年に1回ご褒美でグリーン車に片道乗車できる計算だ。東京~小倉・博多なら片道150ptなので3往復で900pt、名古屋まで1往復すると100pt加算され、合計でグレードアップに必要な1000ptとなる。ちなみに、「ひかり」グリーン車へは800pt、「こだま」グリーン車へは600ptとハードルは「のぞみ」に比べると低い。
グリーン車の座席
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06
Tokyo Subway Ticketが購入できる
もともとは訪日外国人向けに発売していた東京メトロと都営地下鉄の両方におトクに乗れるTokyo Subway Ticketの24時間券、48時間券、72時間券をエクスプレス予約で、熱海以西の駅から東京駅または品川駅まで乗車すれば、希望のTokyo Subway Ticketが購入できる。EXご利用票(カードを改札機にかざすと出てくる座席の案内表もしくはeチケット利用の場合は「ご利用票兼領収書」を東京メトロの東京駅、日本橋駅、新宿駅、池袋駅の定期券売り場および京橋エドグランB1Fの中央区観光情報センターで提示して買うことになる。乗車日を含めて3日以内に上記の売り場で買い求めること。Tokyo Subway Ticketの使用は購入日から半年以内と期限には余裕があるので、購入日やその翌日に必ず使用しなければならないといった縛りはない。居住地は問われないので、都内在住者でも購入できる。
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07
デメリットは?
いいことづくめのようなエクスプレス予約にもデメリットはある。まず、チケットレス乗車の運賃+料金というのは、新幹線の駅から駅までに限定される。ふつうのきっぷで乗車する場合、運賃は東京都区内や山手線内の駅から大阪市内で計算される。
例えば、秋葉原駅から東京駅まで山手線で向かい、東海道新幹線に乗車して新大阪駅で下車し、JR在来線に乗り換えて大阪駅まで行ったとしよう。
JR乗車券は、東京山手線内⇒大阪市内となり、在来線乗車を含めトータルで8750円+指定券5700円=14450円となる。
ところがエクスプレス予約の場合、13370円というのは、東京駅から新大阪駅まで新幹線乗車分に限定される。したがって、秋葉原⇒東京駅(Suica133円、きっぷは140円)、新大阪駅⇒大阪駅(160円)は別払いになるので、合計すると、133+13370+160=13663円となる。まだまだ通常料金よりは安いけれど、有難味がやや薄れる。
西荻窪⇒東京⇒新大阪⇒天王寺の場合は
通常運賃+料金=8750+5700=14450円
エクスプレス予約の場合、在来線運賃は別払いなので、
388(390)+13370+220=13978円となり差は472円まで縮む。
居住地や、新幹線から在来線特急に乗り継ぐ場合、乗車券は別途購入し、新幹線の指定券はe特急券を専用の自動券売機で発券したほうがトクになることもある。 -
08
ジパング割引では「のぞみ」に乗れない
全国のJRが3割引きで乗れるというのが謳い文句のシニア向け「ジパング倶楽部」最大の欠点は、「のぞみ」に乗れないことだ。訪日外国人向けのジャパンレールパスも同様なので、シニアや訪日観光客が本数の少ない「ひかり」に殺到し、常時混雑している。しかし、「のぞみ」に乗れないと言っても、それは特急料金が割引にならないという意味で、運賃部分については3割引きが適用される。それゆえ、エクスプレス予約はeチケットで「のぞみ」指定席のみ購入し、乗車券はジパング割引を利用する方法が考えられる。
例えば、東京~名古屋の利用であれば
乗車券(30%OFF)4380円+のぞみ指定席e特急券4050円=8430円
通常運賃+料金=6260円+4830円=11090円
EX予約 =10110円
3割引きにはならないけれど、この方法なら24%OFF。現状では、まあ納得できる割引率であろう。 -
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スマートEXはおトクなのか?
エクスプレス予約(EX-IC)のように会員登録(クレジットカードをつくるため審査がある)しなくてもよいし(年会費無料)、すでに持っているクレジットカードとSuicaなどの交通系ICカードがあれば、それを利用できる。東海道新幹線のヘビーユーザーではないけれど、便利なチケットレスを使ってみたいという人向けだ。
ただし、エクスプレス予約に比べて割引率はよくない。
東京・品川~新大阪 14250円(EX-IC=13370円)
原則、通常料金より200円安いのが基本だ。JR在来線が別払いなのは、EX-ICと同じなので、200円しか安くないというのは、東京都区内でJR在来線に一駅乗っても133円かかり、新大阪~大阪間をJR在来線に乗ると、160円、合計で293円かかるから、むしろ割高になってしまう。スマートEXでエクスプレス予約と同料金なのは早特商品のみである。
となると、簡便ではあるけれど、エクスプレス予約の年会費1080円は、前に記したように東京~新大阪を片道乗車するだけで回収でき、1往復すればモトが取れてしまうので、決して負担になる額ではない。諸々の利便性を考えると、エクスプレス会員になったほうがメリットは大きいであろう。
東京~大阪間の移動で考えると、格安航空や高速バスという選択肢もあり、空港へのアクセスが便利なところに自宅や職場があれば、鉄道以外の選択肢も充分ありうる。もっとも、今回は字数も尽きたので、それについては触れないことにしよう。