沖縄のリゾートホテルは「食品資源循環の取り組み」でSDGsを実現する


2023.04.02

マイナビニュース

西日本電信電話(以下NTT西日本)沖縄支店では、名護市のカヌチャリゾートにおいて食品資源循環の取り組みを進めている。
本来なら生ゴミとして廃棄してしまうレストランの残渣(ざんさ)を堆肥化するソリューションが、ホテルのSDGs推進にも役立っているという。関係者に話を聞いた。
○食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」
沖縄本島の北部、山原(やんばる)地帯に展開しているカヌチャリゾートでは、やんばるの海と自然を満喫できるラグジュアリーなホテルを中心に、リゾートならではのスパ&リラクゼーション、地元食材を堪能できる7つのレストラン、広大なゴルフコース、約80種類のアクティビティが楽しめるレジャー施設などを運営している。
そんなリゾートホテルでSDGsの取り組みに貢献しているのが、NTT西日本の提供する食品残渣発酵分解装置「フォースターズ」だ。
食品残渣を投入すると微生物が発酵分解し、24時間後には質量を10分の1まで減少させて一次発酵物(=堆肥原料)をつくる、というのが装置の最大の特徴。稼働中のフォースターズには嫌な臭いがほとんど発生せず、またコンパクトなため小スペースに設置できるなどのメリットがある。
同ホテルでは2022年4月1日よりトライアルを実施し、9月1日より本格稼働した。
NTT西日本 沖縄ビジネス営業部の池間隆也氏は「まだ県内に導入実績がなく、カヌチャベイリゾート様が沖縄における初事例。設置後の運用フローなど、ゼロから構築していきました」と導入に苦心したことを明かす。
折しもコロナ禍により、ホテル業界の稼働状況、先行きが不透明だった頃のこと。残渣量が定量的に把握できない為、コスト面、運用面のメリットが未知数だったとも言う。
○「環境」×「観光」の実現に向けて
そこでカヌチャリゾートの関係者に話を聞いた。対応してくれたのは、総務部シニアマネージャーの仲里太志氏、カヌチャグリーン係長の板崎茂治氏、洋食レストラン料理長の饒平名(よへな)知文氏。
これまでカヌチャベイリゾートでは、どのような課題を抱えていたのか。これについて総務部の仲里太志氏は「ホテル業としてどのように環境保全に取り組んでいくべきか、どう地域に貢献していけば良いか、まだ方向が定まっておりませんでした」と当時を振り返る。それに加えて、かねてよりレストランで発生する残渣の処理にも苦慮していたと言う。
そんな2021年の年末、NTT西日本グループのソリューションが一堂に会する展示会「NTT GROUP COLLECTION 2021 ONLINE」に参加し、「食品循環リサイクル」の取り組みを目にする。「私たちが求めていた製品だった」と仲里氏。
実はカヌチャリゾートは過去にも、残渣を細かく砕いて処理する(他企業の)ソリューションを導入したことがあった。しかしうまく砕けずに配管づまりが発生して中止に。それ以来、さまざまな検討を行ってきたが導入には至らなかったと明かす。
ではフォースターズの導入はスムーズに進んだのだろうか。
そんな問いかけに、仲里氏は「NTT西日本から丁寧なフォローアップがあり、初期提案からトライアル導入、そして本格導入までとてもスムーズに進みました。毎週、残渣投入量を確認したり、発酵状態を確認したりと、当社の要望に沿った形で課題解消に努めてもらいました。ちょっとしたトラブルが起こっても、すぐに駆けつけてもらえるので安心感がありました」と答える。
「いま堆肥も高騰化しているんです。そんな貴重な堆肥を生ゴミから生成できるのであれば、こんなに良いことはないですよね」と話すのはカヌチャグリーンの板崎茂治氏。
「生ゴミから堆肥をつくる取り組みは、昔からあります。でもはじめの一次発酵が非常に難しいんです。多くの場合、発酵せずに腐敗してしまう。イチバン難しいところをフォースターズがやってくれるので本当に助かります」と目を細める。
現在はフォースターズで一次発酵した堆肥を別の場所に移して二次発酵、さらには三次発酵と進めていき、既存の肥料と混ぜ合わせて紅茶畑などに散布している。
撒いたところは成長の具合も良く、効果を感じていると板崎氏。ゆくゆくは、生成した堆肥を地域に還元する「新たな地産地消」の枠組みづくりにつなげていきたいそうだ。
また料理長の饒平名知文氏は、従業員の残渣に対する意識も変わったと話し、「後に大切な堆肥になる、ということを考えた結果だと思います」と変化を認めつつ、次の段階として「お客様の料理の食べ残しなどにも対応していけたら」と期待している。
現在は、調理前の残渣・葉野菜・フルーツ(皮など)。具体的には、フレッシュジュースを絞ったあとの果物の皮などを投入している。今後は、レストランとしても調理済みの料理等、投入量や種類を増やしていきたいと言う。
これまでカヌチャリゾートでは、地元の食材を出来るだけ取り入れる「地産地消」の経営を目指してきた。今回のソリューション導入は、その取り組みを加速させるものとなりそうだ。
仲里氏は「今後、ホテルに宿泊するお客様にもカヌチャの取り組みを理解していただき、食品ロスの低減に協力してもらうことも考えています。やんばる地域、ひいては沖縄全土の環境保全につなげ、お客様とともにSDGsに取り組んでいければ良いですね」と語る。
○100年後の未来を見据えて
「私たちカヌチャリゾートは『環境』×『観光』へのチャレンジを標榜しています。世界中のお客様から選ばれる、沖縄を代表するリゾートホテルとして発展させていきたいと願っています。ひいては沖縄観光の100年後の未来を見据えて、沖縄観光の発展につながる環境活動にも取り組みたいです。今後、NTT西日本をはじめとするパートナー企業の協力も得ながら、お客様に心から寛いでもらえるリゾートホテルを目指していきます」と仲里氏は話を締めくくる。
○地域のリゾートホテルにも導入へ
NTT西日本の池間氏にも総括してもらった。
「今回の取り組みは沖縄県内初導入であり、またNTT西日本としてリゾートホテルへの初導入。しかし、グループ全体でSDGsに取り組むなど同ホテルの環境への意識の高さ、ホテル内での循環サイクルの確立は『一つのモデルケース』になりうること。それが地域社会への貢献につながり、地域とともに地産地消を推進する『サステナブル(持続可能な)リゾート』を目指すことに協力できるという思いが背中を押してくれた形です。
カヌチャ様をはじめ、県内には数多くのリゾートホテルがあります。今回の事例をもとに、今後、県内のリゾートホテルなどへの提案・導入にむけた活動を広げていきます。そしてカーボンニュートラルやDX推進など、社会情勢にあわせたお客様の業務課題についても、共に取り組んでいきたいと考えています」。
今回の取り組みで「環境」と「観光」は切り離せないものということが再認識できた、と池間氏。SDGs達成に向けた環境対策により積極的にICTを活用し、社会課題の解決や地域の活性化に貢献する取り組みをさらに具体化して、「電話会社」というイメージから脱却したい、と話していた。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら 

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カヌチャベイホテル&ヴィラズ
place
沖縄県名護市安部156-2
phone
0570018880
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ルーム 禁煙

¥13,637

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2024/05/23 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/05/10

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