地元生産者と生み出す、ひらまつ流の沖縄フレンチ


2019.06.25

一休コンシェルジュ

那覇空港から車で約70分。手付かずの自然と、どこまでも続く水平線を独り占めできるロケーションが魅力の「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」。
ひらまつ初の沖縄リゾートとして2018年7月にオープンし、今年の夏に2年目を迎えます。今回は料理長を務める木下喜信氏に、宜野座ならではの魅力と今後の挑戦についてお話を伺いました。自然と料理の世界を志した幼少時代―まずは、料理人になりたいと思ったきっかけがあれば教えてください。小さいときから台所に立つのが好きで、母親の手伝いをしているうちに自然と料理をするようになりました。中学生のときには料理人を志し、卒業後は住み込みで親戚のお寿司屋さんへ行くことも考えていましたが高校に進学。そんなとき『料理の鉄人』などの料理番組が流行って、料理人への憧れが強くなったんです。高校卒業後は地元福岡の調理師専門学校に進み、市内の小さなフランス料理屋さんに就職しました。―もしかしたら寿司職人になっていたかもしれないのですね。「ひらまつ」との出会いは?就職から1年、お店の閉店が決まり紹介してもらったのが「レストランひらまつ 博多」でした。話を聞きに行ったつもりが「次が決まってないなら、うち見て行く?」って言われて。忘れもしない金曜日の忙しい夜で、気付いたらそのまま働いていました。「ひらまつ」のことは全然知らなくて……。シャンデリアが飾られたすごいお店だなと、行ってからその偉大さに驚きました。入社1~2週間くらいで、あまりの大変さに逃げ出したくなったこともありましたね。―博多の後はパリで修業されたと聞きましたが、パリへはどのような経緯で行かれたのでしょうか。僕がひらまつに入社したのが2001年で、ほぼ同時期に「レストランひらまつ パリ」がオープン。わずか4か月で1つ星を獲得し、平松宏之という料理人のすごさを改めて実感しました。一緒に働きたいと猛アピールをして、2005年、25歳のときにパリへ行くことができました。パリでは、平松シェフからみっちり学ぶことができました。僕たちが平松シェフと一緒にやってきた最後の世代かもしれません。サン=ルイ島のお店と16区の新店立ち上げ、とても厳しかったですが人生の中でも本当に身の詰まった2年間でした。沖縄に来て痛感した、人の繋がりと自然との一体感―沖縄に来られる前は「ブラッスリー ポール・ボキューズ 銀座」で料理長を務められていましたが、沖縄と東京で料理をされる上で感じた違いなどはありますか?沖縄でまず苦労したのは、欲しい食材が手に入らないこと。東京では八百屋さんに電話を一本、欲しいものがなければ自分で築地へ買いに行っていましたが、沖縄ではそうもいかない。
特にオープンしたての7~8月は台風が多くて野菜も収穫できず、ほとんど沖縄以外の食材で料理を作っていました。お客様からも「せっかく沖縄に来たのに沖縄らしくない」という声をいただくこともあり、非常にもどかしかったです。今は自然に任せるというか、採れたら使って、採れなかったら使わないというように、自分の中でも線引きができるようになってきましたね。―今は、たくさんの沖縄食材がお料理に使用されていますよね。食材はどのように探されているのですか?ネットにも情報がなく市場に出回らない野菜も多いので、人伝が多いです。農家の人たちは本当にみなさん優しくて、紹介はもちろん「これ出来たから試して」とか「これ持って行って」みたいなこともよくあります。沖縄に来て、人との繋がりの大事さを強く感じましたね。あとはお付き合いのある農家さんにご協力いただき、欲しい野菜を実験的に作ってもらっています。ディナーで出した「トレビーゾ」というチコリも、試しに作ってくれたものです。「クレソン」を栽培しているのは、本部町の山奥にいる農家さん。沖縄でクレソンを作っているところがなかったらしく、ご自身で山を開墾して段々畑を作ったそうです。会いに行ったときも、人里離れたところにあり驚きました。紹介がなければ、たどり着けていないと思います。―メニューを変えるタイミングや、提供される上で心掛けていることはありますか?今は2か月に1回くらいのペースでメニューを変えていますが、季節感がなかなか難しくて。東京なら5月は春のメニューだと思いますが、沖縄は初夏なのでより爽やかな食材を使うようにしています。本土でいうトマト、ズッキーニ、ナスなどの夏野菜も、沖縄では5月で終わり。旬が早いので、感覚も前倒しになりましたね。そのぶん夏は長いので、真夏がきたら何を出そうかなと。去年の夏はオープン直後でしたが、今年は食材のこともわかってきたのでメニュー決めが楽しみです。連泊のお客様にも毎食違った楽しみを味わってほしい―沖縄は連泊されるお客様も多いと思うのですが、2日目以降のお料理を出す上でこだわりなどはありますか?連泊の場合は様々な料理を楽しんでほしいので、2日目の朝は信楽焼の釜で炊いたご飯と、沖縄野菜やもずくなどの小鉢、焼き魚などの和朝食を出しています。お漬物やほうじ茶は京都からの取り寄せです。
ひらまつがやっている「高台寺 十牛庵」という京都の料亭で、お出汁の取り方やタレの作り方などを勉強しました。あとはひらまつ各店の料理長が集まる合宿で情報交換をして、インスピレーションを高めています。2日目以降の食事は来てから考えるという方もいるので、メニュー以外の食材もストックしています。コースではなく、すき焼きを食べたいとか、うどんを食べたいとか。できないものもありますが、なるべく応えられるようにしたいと思っています。レストランで料理長をしていたときよりも柔軟な対応が必要ですね。―みなさんゆったりと、リゾートステイを楽しんでいらっしゃるのですね。のんびりと食事を楽しんでほしいので、ドレスコードは設けていません。食べるときに深く考えなくて済むようなお料理の提供を心掛けています。パンは軽いものに、バターもふわふわのホイップバターにして、噛むストレスを和らげたい。そうやってリラックスしながら食事できるのが、沖縄らしいかなと思います。朝食の時間もあえて伺っていないので、時間内であればいつ来ていただいても大丈夫です。自分の起きたペースで、ふらりと食事を楽しんでください。オープン2年目に向けて新たな挑戦―7月にはオープンから2年目を迎えますね。挑戦してみたいことなどがあれば教えてください。日々が挑戦なのですが……。今はスタッフのケアに力を入れたいと思っています。不思議なもので、切羽詰まった状況で料理を作るよりも、楽しみながらの方が美味しい料理を作りたいって思える。楽しくストレスフリーで料理をしてほしいので、スタッフが働きやすい環境作りを心掛けています。あとは「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」が星を獲得したので、『ひらまつ』というホテルの認知を広めていけたら嬉しいです。仙石原や熱海、これからオープンする京都と軽井沢もだいぶ刺激になると思います。沖縄はまだミシュランが入っていないのでなんとも言えませんが、もちろん目指していきたいですね。―最後に、館内でお気に入りの場所やおすすめのポイントなどはありますか?休憩中は、よく砂浜を歩いていますね。時間や日によって海の色が変わるので、とても癒されますよ。サンゴの欠片を見つけると、これって何千年前からここにあるんだろうなぁって。あと宜野座は東海岸なので、朝日が本当に綺麗。1か月に1回くらい、別世界みたいに辺り一面が真っ赤に染まるときがあるんです。遮るものがなにもないので、太陽の動きがはっきりとわかるくらい。ぜひ少し早起きをして、ぼーっと眺めてみてください。日々のストレスや都会の喧騒を忘れて、のんびり楽しんでもらいたいと話す木下シェフ。館内には時計やBGMがないので、お話を聞いているときも鳥や波音など自然の音のみが優しく響いていました。木下シェフの心のこもったお料理と豊かな自然に癒されに、「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座」を訪れてみてはいかがでしょうか。***********************************
木下善信 Yoshinobu Kinoshita1979年生まれ。福岡県出身。
福岡市内のフランス料理店での経験を経てひらまつへ入社、その後すぐに「レストランひらまつ博多」に勤務。2005年「レストランひらまつパリ店」にて約1年半研鑽を積み、帰国後は「レストランひらまつ広尾」へ。2010年「西麻布キャーヴ・ド・ひらまつ」料理長を経て、2012年「ブラッスリーポール・ボキューズ銀座」料理長に就任。2018年7月のホテルオープンと同時に現職へ就任。 THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宜野座 沖縄県/宜野座 詳細情報はこちら  

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THE HIRAMATSU HOTELS&RESORTS 宜野座
place
沖縄県国頭郡宜野座村松田1425
phone
0989685600
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