“永く愛すべきモノ”と過ごす、ていねいな時間。南青山「COBI COFFEE」


2020.04.25

Harumari TOKYO

作家ものの器や職人がつくるクラフト、洗練された国内外のファッションアイテムなど、“次の世代に残したいと思えるモノ”をていねいにピックアップする、南青山・骨董通りのセレクトショップ「BLOOM & BRANCH(ブルームアンドブランチ)」。日本人の伝統技術や美学を今のスタイルに落とし込んだ、永く愛すべきものが揃うこの店の中でショップインショップとして、日本の純喫茶の精神を最先端のスペシャルティコーヒーを通して表現しているのが「COBI COFFEE(コビ コーヒー)」だ。アパレルや雑貨の販売スペースと隔たりなく設けられた喫茶スペースは、茶室を思わせる品格ある趣き。重厚なナラ無垢材のテーブルの周りを7つの席がぐるりと囲み、カウンターの奥では真鍮の薬棚が趣ある輝きを放つ。和の威厳としなやかさが調和した空間は、見事なまでに美しい。店名の由来は、真鍮が朽ち、色や様子が変化していく様すらも美しいと捉える日本人独自の色彩「古美色(こびしょく)」から。新しく華やかなものばかりが美ではなく、古き良きものに宿る美しさがあることを表している。その愛すべき日本の古き良きもののひとつとして、COBI COFFEEがリスペクトするのが、純喫茶文化だ。COBI COFFEEでは、純喫茶の象徴でもある“ネルドリップ”でスペシャルティコーヒーを淹れる。「ネル(布)フィルターを使った抽出技術はかつて、今のように高品質のコーヒー豆が手に入らなかった時代に、日本の喫茶店のマスターたちがいかに美味しくコーヒーを抽出するかを試行錯誤する中で高められてきたもの。発祥はヨーロッパといわれていますが、日本人が育んだ技術です」。そう語るのは、三軒茶屋のロースター「Obscura」で経験を積み 、COBI COFFEEのマネージャーを務める川尻大輔さん。そう、ネルドリップはまさに、日本で培われた“次の世代に残したいと思えるモノ”。その技術がより永く愛されるようにと最新のスペシャルティコーヒーと掛けあわせ、時代に寄り添ったスタイルで表現する。一般的にネルで淹れたコーヒーは、深みやコク、重厚感のある飲みごたえが楽しめる。ゆえに、素材そのもののフレッシュさを活かした浅煎りの豆が主流のスペシャルティコーヒーにおいて、ネルドリップが用いられることはそう多くない。「ネルドリップは、豆の挽き方、湯の温度や当て方、落とすスピードなどを変えることで、出したい味を人がコントロールできるのが醍醐味です。豆の特徴や状態を把握しながら、その豆のどんな味を引き出したいのかを人が考え、お客さまひとりひとりのために淹れることができると思っています」と、川尻さん。華やかな香りを残しつつ、スペシャルティコーヒー特有のフルーティーな甘酢っぱさがやや丸みを帯びた味わいとなめらかな口当たりは、ネルドリップならではだ。そんなコーヒーを客の目の前で淹れるのがCOBI COFFEEスタイルであり、この店のもうひとつの魅力といえるだろう。ケトルの先に神経を研ぎ澄ませ、軽やかなリズムを刻みながらポタポタと静かに湯を落としていく様子は、まさに職人技。香ばしい香りが立ち始め、次第にそれで満たされていくと、不思議なほどに心が落ち着いてくる。派手さや華やかさはないが、美しい所作を間近で眺め、自分のためだけに丁寧に淹れてくれる一杯を待つ時間は、とても贅沢だ。「僕自身、カジュアルで賑やかなコーヒースタンドもとても好きです。でもこうして、心を落ち着かせる時間や自分の時間をつくって差し上げることも、コーヒー屋の仕事だと思っています」。コーヒーの他にも、ここではさまざまな伝統あるものがCOBI COFFEEの世界観で表現される。オープン当初からの定番メニューは、現代にあわせた和菓子を提案する「HIGASHIYA」のカステラや羊羹とのペアリング。また2020年の始まりには、「Neue(ノイエ)」の菅原尚也氏監修のパフェを展開している。塩気のあるナッツ、マスカルポーネクリーム、芳醇なラムレーズンに自家製コーヒーゼリー……。喫茶店メニューの代表格・パフェが、COBI COFFEEと菅原氏によりデセールのように生まれ変わった。GWから夏にかけては毎年人気の「氷舎mamatoko」監修のかき氷が今年も登場予定だ。和の素材を取り入れた「コーヒーナッツときび糖あずきクリーム」をレギュラーに据え、月替りメニューも楽しめる。COBI COFFEEで提供されるもの、過ごす時間は、その裏に確かに人の存在を感じられる。空間や器の造り手、バリスタ、パティシエ、そして大きなテーブルを共に囲む人。居合わせた人が、何もいわずとも互いに交わす小さな心遣いもまた、日本人らしい。人の手によって丁寧につくられた“永く愛すべきもの”と向きあう時間は、暮らしや心を豊かにしてくれるだろう。真鍮や無垢材のテーブルがますます味わい深く色づいていく様子を眺めながら、そんな穏やかな時を過ごしに訪れたい。 取材・文 : RIN 編集部追記
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COBI COFFEE AOYAMA(コビ コーヒー アオヤマ)
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4.5

6件の口コミ
place
東京都港区南青山5-10-5 第一九曜ビル 101
phone
0364273976
opening-hour
[平日]9:00-20:00[土日祝]10:0…
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