まるでテキスタイルの森。元「マリメッコ」デザイナー石本藤雄の個展が開催


2019.06.19

Harumari TOKYO

屋内で過ごす時間が増える、梅雨の時期。
これを機に、屋内で開催される展覧会をゆっくりと楽しんだり、家の中が華やかになるよう模様替えをしたり……そんな気分が高まっている人も多いのではないだろうか。
今の季節にぴったりの、色鮮やかなテキスタイルや陶器を展示するのが本展だ。「マリメッコ」で長く活躍した日本人デザイナーフィンランドを代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」。
洗練されたデザインのテキスタイルが世界中のファンから支持され、日本でも高い人気を誇っている。その「マリメッコ」で32年もの間テキスタイルデザイナーを務めたのが、今回大規模個展を開催する石本藤雄。77歳を迎えた現在も、同国の老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門の一員として活躍し、数多くの作品を生み出し続けているデザイナー・陶芸家だ。
本展では、石本の原点ともいえる作品と新作を展示する。石本藤雄カラフルなテキスタイルを森に見立てて本展の一番の見どころは、石本がマリメッコで手がけたファブリックを筒状にし、1つ1つを「木」に、全体を「森」に見立てた大胆な展示。まるでテキスタイルの森を散策するように、多種多様な作品をいろいろな角度から堪能しよう。マリメッコ時代に生み出したデザインは、32年間でなんと400点以上。展示されているのはその一部だが、石本独特の世界観のひとつである“鮮やかな万華鏡的な世界”が存分に感じられる。愛媛県美術館での展示の様子“侘び寂び”を感じる近年の陶作品も展示そしてもうひとつ、鮮やかさとは対照的な“侘び寂びを感じさせる静謐な世界”も石本を象徴する世界観。
近年の陶作品のインスタレーションは、日本の風土に改めて思いを寄せ、侘び寂びの情景を映したものが多く、精力的に制作している《冬瓜》もその代表的な作品だ。《冬瓜》©︎Chikako Harada/Fujiwo Ishimotoそれ以外にも、生命力あふれる実や花が描かれた絵皿、そして春先に優しい青色の花を咲かすオオイヌノフグリをモチーフとしたレリーフの大作なども圧巻だ。
デザインの原画やアイディアが生まれる過程が読み取れる貴重なスケッチも見ることができる。《オオイヌノフグリ》(2018)©︎Chikako Harada/Fujiwo Ishimotoマリメッコの復刻アイテム&グッズの販売も作品の世界観に思い切り浸ったあとは、ショッピングも楽しもう。
石本がマリメッコのデザイナーになったばかりの1975年に、アメリカのハウスウェアブランドのために書き起こした《Onni(オンニ/幸せ)》と《Kukkaketo(クッカケト/花畑)》が、この春に復刻。マリメッコからマグカップやバッグ、エプロンなどが発売されている。また、本展のオリジナルグッズとして、新しい陶作品「オオイヌノフグリ」の原画を使用したトートバッグやマグカップ、ミラー、缶バッジなども販売。
暮らしに彩りを添えてくれるアイテムを、家に連れて帰るのも本展の楽しみのひとつだ。関連イベントやコラボレーションにも注目石本本人に会えるチャンスもある。
シルクスクリーンの刷りを石本が実演するデモンストレーションが6月22日(土)と23日(日)の週末に開催される。また、展示会場に隣接する「スパイラルカフェ」では、会期中に前述の復刻ファブリックを使用。さらに、石本が拠点とするフィンランド・ヘルシンキにある「カフェ・アアルト」のメニューも提供してくれる。カフェでドリンクやフードを楽しみながら、ゆっくりと個展の余韻に浸れるのもうれしい限りだ。スパイラルカフェとのコラボレーション石本の創作の源は、幼少期を過ごした愛媛県砥部町の風景や、フィンランドの豊かな自然だという。
テキスタイルから陶器へ、異なる素材を扱いながらも、一貫して身近な“自然”に目を向け、素材と対話しながら作品を生み出している。屋外をなかなか満喫できない季節だからこそ、自然を感じる作品に触れたり、暮らしに取り入れることで、いつもよりちょっと豊かな日常を過ごすことができるかもしれない。
たっぷり時間のある週末に訪れて、その魅力を余すところなく味わおう。 

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spiral hall(スパイラル ホール)
place
東京都港区南青山5-6-23 3F
phone
0334985793
opening-hour
11:00-20:00
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